19、心惹
俺は今日もいつもの時間に目を覚ました。
眠い目をこすりながら水魔法を使い、顔を洗う。
水魔法はこういう時に便利だ。
喉も乾いたら水も飲めるし……。
おばさんはまだ眠っている。
しかし、ご飯とお弁当はしっかりとテーブルの上へと置かれている。
俺より早起きして、作ってくれていたのだろう……。
作り終わったら再び、就寝……。
本当に感謝しかない。
今日は裏山へ行かずこの時間から学校へ行くことにする。
裏山で修行もしたいのだが……何となくラーク姫が何時から学校に来ているのかが気になるっていうのもある。
この時間に出れば多分、ラーク姫より早く学校に着くことができるだろう……。
っていうか……この時間って学校って空いているの……?
まあ、待つことになっても良いかな……今日だけだし……。
俺は荷物を担ぐと少年学校へと向かった。
少年学校の前に着いた。
誰もいない……。
よし!今日こそ一番だ……!
少年学校の玄関の前でそんなことを考えている。
「ねえねえ……」
――――――
ふと後ろから声が聞こえて行きた。
柔らかい口調の女の子の声だ……。
こんな朝早くから学校に来ている時点で何となく予想がつく……。
その声は――
「ラーク姫……!」
俺は後ろを振り返ると朝日の光を浴びた水色の髪の毛を靡かせながら立っているラーク姫の姿があった。
なんで気がつかなかったんだろう……。
ラーク姫はこちらを見ながらキョトンとしている。
……。
あれ?「ねえねえ」って話しかけて来たのはあっちの方だよな……。
なんかずっと黙っているんだけど……。
「おはよう!」
しばらくしていたら挨拶が返ってきた。
「おはようございます……」
挨拶を返す。
…………。
続かないな……。
それなら俺から話そう……。
「ラーク姫は毎日、朝早いんですか?」
そう言うと、ラーク姫の表情は少し緩くなったように感じた。
「うん……。毎日、このくらいの時間に来ているよ……。ゲッツァ君も毎日早くから学校に来ているよね……。昨日も一昨日も……」
え……!
昨日も一昨日もと言うことは……。俺が朝に魔道場を覗いていたことがバレているじゃん!
めちゃくちゃ覗き魔だと思われているかもしれない……。
それより……ゲッツァ君って……認知されていたんだ。
それは嬉しいのだが……今は誤解を解かなければ……。
「うん!早起きは得意で……。毎日、朝早くに自然と学校に来ちゃうんだよね!」
なんの誤解ときにもなっていない……。
こんなんじゃただの変態だと思われているままじゃないか……。
かと言ってここから変に弁解したところで変な空気になりそう……。
よし、この場はすぐに退散しよう……。
「じゃあ!」
俺は軽く右手をあげて、ちょっと裏返ったような声で一言いうと玄関の方へと急いで駆け寄っていく。
よし……何とかこの場を乗り切った……。
「ねえ!ちょっと……」
俺が数足進んだところでラーク姫に呼び止められた……。
あ……。
退散失敗だ。
これから何を言われるのやら……。何となく想像がつく……。
「はい……」
俺は恐る恐るラーク姫の方を向いた。
ラーク姫は怒っているような表情は……していないな……。
「ずっと気になっていたんだけど……」
俺は唾をごくりとのんだ。
心臓の鼓動は高まって行く――
「ゲッツァ君も魔道場使いたいんでしょ?」
「へ?」
俺は驚いた。シンプルに……。うん……。
「だって一昨日も昨日も朝と放課後にわたしの様子を見ていたでしょ?あれってゲッツァ君も魔道場が使いたくて羨ましくて見ていたんでしょ?わたしが姫だからって気を使っているんだろうなって……」
あ〜そう解釈してもらったか……。
まあよかったよかった……。
決して、覗き魔の変態として認知されていなくて良かった。
まあ正直にいうと、ラーク姫の強さとかが気になって覗いていたのだから……。まあこれでいっか……。
「いや……まあそんな感じだったかなあ……でも、気を遣っているわけじゃないよ!魔法はこの学校じゃなくたって使えるからさ……」
俺がそう言うとラーク姫は俺の方へと近づいてきた。
「いや、いいよ!気を遣わなくたって……。でも、せっかく良い施設があるなら使ったほうがいいと思うよ!少年学校はみんなのものだし、使いたい人が自由に使わないと……」
ん〜……。まあ使いたいか使いたくないかで言うと使いたいな〜。裏山よりも設備が整っているし……。
それに、今日は学校に早く来すぎたし……。教室で待っていても暇だろうな……。
俺は決めた。
「わかったよ……!じゃあ使わしてもらうね!」
「わたしに所有物じゃないんだからわたしに許可を取らなくて良いのよ!」
ラーク姫は軽く笑っていた。
俺のイメージではなんかもっとクールな感じで、もっと姫姫しているイメージだったけど話してみると意外と表情が柔らかい……。
それに多分……コミュニケーションが苦手なような……。人見知りかな……。
「じゃあそうなったら早速、魔道場に行こう!」
「はい!」
「良かった〜。毎朝、1人だったから正直に寂しかったからな〜」
あ、そうなんだ……。寂しいとかあったんだ。
「寂しかったんですか?」
「うん!そりゃあね1人は寂しいよ!」
俺は魔道場に向かう廊下でそんな話をして間を繋ぐ。
「それより……良かったんですか?俺、上級貴族や王族でもないのにこんなに話してしまって……」
ラーク姫はその発言に少しムッとした表情を作った。
「わたしには関係ないよ!みんなは少し気にしすぎだと思うよ……。実力があるからクラス1なんだし……。それに、わたしのいないところで変に気を遣われているほうが嫌だしさ……」
その言葉は少し寂しそうではあった。
多分、姫だからと言うだけでこれまでずっと姫さま扱いを受けていたのだろう……。
姫には姫さまなりの悩みもあるものだな……。
「わかりました……。これからはまったく気を遣わないようにしますね!」
「まったくは言い過ぎよ!気を遣って欲しい時もあるんだからね!」
そんな会話をして、俺たち2人から笑顔が溢れたところでちょうど魔道場に着いた。
魔道場に着いてからはそれぞれ、場所を対角線上に取ると一切話すことなくそれぞれの魔法に集中して行った。
やはり、魔道場の方が施設としても裏山よりもやりやすさがある。
的があったり、木と藁で出来た人形なども使って近距離での魔法なんかも使いやすい。
そして、裏山よりも圧倒的にスペースが広い。
広々と扱うことにより長距離からの魔法の精度なんかも上げることができる。
これは毎朝来たくなる……。
でも、他の属性の魔法を疎かにするわけにはいかない……。
放課後は大人しく帰り、裏山で修行をするとしますか……。
俺はラーク姫より少し早めに切り上げて教室へと向かった。
気を遣わないで欲しいとは言われたものの一緒に教室に戻るのは少しだけ気が引ける。
周りの目もあるからな……。
教室にはレオの席にいつものメンバーが集まっている。
「今日は遅いじゃねえか!どうした学校に来るのが怖くなっちまったか?」
小太り栗はいつも雑魚キャラのような言葉をかけてくる。
適当に無視をする。
でも、こう考えるとこいつら2人と違ってレオの実力は本物だ。
しっかりと授業も受けている印象だし、魔法の授業でも精度の高い魔法をしっかりと扱っている。
そんなそこらの人間ではないことが分かる。
でかい口を叩くだけの実力はありそうだ……。
しばらくするとラーク姫も戻ってきた。
やはり、黄色い声援が送られる。
そりゃあ人気なわけだよな……。
魔法の実力も素晴らしい。頭脳明晰。おまけに顔が可愛い。話して見た感じでも優しさもある。正直、完璧だ。
そんな偉大な人と少し話せたのだ。良いことだ……。
でも、引っかかる点はレオだけラーク姫のことを姫呼びをせずに呼び捨てで呼んでいる。
まだ、学校は三日目だが教室内でもよく話しているイメージもある。
まあ、関係ないっちゃ関係ないか……。
俺の頭には朝に会ったラーク姫の笑顔の映像が流れた。
…………。
うん……。関係ない。関係ない……。




