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白の|運命《さだめ》〜選ばれし白属性魔法として生まれた俺は……〜  作者: 生きてる水


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1、転生

 暗い景色から一変。目の前が明るくなった。

 

 あれ……?死んだんじゃなかったっけ……。

 そんな事を考えていると赤ちゃんの産声が聞こえてくる。


「おぎゃ〜おぎゃ〜」


 元気のいい事だ。

 もしかして病院か……?俺、死んでなかったのでは……。


 でも、普通に考えて大怪我人と赤ちゃんを一緒にする病院がどこにある?

 それに、辺りは薄暗く天井は汚い。

 どこかの古小屋みたいな感じだ。


「ピサロ様。生まれました元気な女の子です!」

 と女性の声が聞こえてくる。

 

 女の子か……。まあ無事に生まれてくれて良かった……。

 

 すると、その女性は生まれたばかりの赤ん坊を俺のベッドの横に置いてきた。

 いや……生まれたばかりの赤子を中学2年生の隣に置くとは、どうゆう病院だよ。

 とにかく、そんな小さい子はよく分からないけどカプセルみたいなところに入れるんじゃ無いのかよ!

 俺は体勢を起こそうとする。

 

 起き上がらない……。

 まあ、大怪我をしたので当たり前か……。

 でも、なんとなく動きにくい感じ。何か違和感がある。

 

「ピサロ様……。まだ起き上がらないいでください……」

「そんなこと言う暇あるなら肩を貸しなさいよ……。時間がないわ……」


 えらい弱ってそうな声だ。そりゃあ出産の後にすぐに動いたら危険だろ。

 

 すると目の前に、女性の顔が出てくる。えらく綺麗な女性だ。髪の色は自然な黒で、ロングでサラサラ。目がパッチリとして年齢も若い。多分25やそこらだと思う。


 激しく息切れをしている。まさかこの女性がこの子を出産した感じかな……。

 てか、なんで俺はこの女の子と一緒にベッドで寝かされているのだろう……。

 すると、ピサロ?と呼ばれる女性が俺の頭を優しく撫でてきた。

 

 俺は中2だぞ!そういうのは一番嫌がる年齢なの!しかもどこの馬の骨かも分からない人に……。

 俺は手を突き出し、その手を払おうとした。

 

 ――――え?……手が短い…………。

 どういうことだ。俺は……。

 俺も赤子……?

 

 まあ夢でもそう事はあるよね。とりあえず赤ちゃんになった夢ということで受け入れるか。


「あなたの名前はゲッツァ……。誇り高き白属性のゲッツァよ!」

 

 俺は志呂しろというちゃんとした名前があるのだが……。まあそういう夢の設定かな。本当におかしな夢を見るものだ。

 ピサロと呼ばれる女性は俺から手を離すと隣にいる赤子の頭を撫で始めた。


「あなたの名前はミュウラ……!あなたも白属性よ……。」


 その瞬間、ピサロは倒れ込んだ。

 

「ピサロ様!」


 際ほどから聞こえる女性の声が小屋中に響き渡る。

 俺の名前はゲッツァ……。隣の子はミュウラ……。もしかして双子ってことかな……?

 だって同じ人が名付けをしたのだからそういうことだろう。

 

「カルバーツ達を呼んできて!できるだけ早く……!」

「でも……。ピサロ様の体調は……」

「いいから早く!」


 えらくピサロは声を荒げている。相当切羽詰まっているのだろう。一体何が起きているのか……。


 

 しばらくすると男が二人部屋の中へと入ってきた。


 一人は水色の髪色でボツボツのヒゲが少し目立つ感じ。でも、目元はくっきりしていてかっこいい。品のある服を着ているのだが、何をされたらそうなるのかと思うくらいボロボロだ。服の袖から飛び出た筋肉はゴツくかっこいい。もしかして部長よりもムキムキかもしれない。

 

 そして、もう一人は白髪で若い青年のようだ。とても凛々しい。透き通った顔立ちには何かとたくみを連想させられる。でも、体の線は細く、まだまだだ。これは俺が憧れるタイプじゃない。

 

 この二人のどちらかが俺の親ということか……。――設定上でね。

 隣の赤子。確か、ミュウラと言ったな。ミュウラは先ほどから泣き叫び、俺の脇腹を蹴ってくる。痛い……。

 

「無事……生まれましたか……」


 チョビヒゲのかっこいいにいちゃんが口を開ける。


「うん!元気な双子だよ!」


 やっぱり俺とミュウラって子は双子だったのね。


「出産された後なのにそんなに体に負荷がかかる体制で大丈夫なのですか姉様?」

 凛々しい少年の方が気を使う。

 

 というか姉様?って事はこちらは俺のお父さんではないということか……。まあ年齢的に見てそうだろう。

 ということはこのチョビヒゲの方がお父さんということか。設定上。

 

「ピサロ……。とにかく横になってくれ!」


 チョビヒゲの方も気を使いだした。しかも、呼び捨てだ。これは確定だろ。


「ハアハア……。わかったわカルバーツ……。お言葉に甘えるわね!」


 自分の目線からでは見えないがベッドが擦れる音が聞こえる。多分、手を借りながらベッドの上へと寝っ転がったのだろう。

 とりあえず長い夢だ。今はいつなのか。大会は始まったのか……もしかしたら終わったのか。それを知りたいところだ。こんなところでこんな夢を見ていても何もならない。どうやったら覚めるのだろう。


 怖い夢を見た時、途中から夢だと自覚して目が覚める時がある。でも、今回は夢だと自覚しているはずなのに覚めない。

 どうしたら良いのだろう……。

 

「カルバーツ、ダンテ……。最後にお願いがあるの……!」

 ピサロの声だ。


「最後って……?」


 チョビヒゲの方の声だ。多分、こっちがカルバーツと言う奴だろう。


「ゲッツァとミュウラを連れてこの場から逃げなさい!」

「そんなことしたらピサロ!お前は……」

「わたしはもうここでお別れということです!」

 

 なんだその悲しい展開は……。夢にしても悲しすぎる。お母さんとお別れなんて……。夢でも母親とお別れなんて辛いよ。


「おい!何を言っているんだ!お前にはこの子達を育て上げる義務があるんだぞ!そんなことしたら死んでいったロイズの気持ちはどうなるんだよ!」


 また新しい人物名が出てきた。ロイズ……。何者だ。

 

「カルバーツ……。ごめんなさい……」


 声を荒げたカルバーツに謝りながら涙を流したピサロの声が耳に届く。


「ロイズは……。我が夫は……。こんなこと望んでいないかもしれません……。でも、あの人がいない人生なんてわたし……考えられないの……」


 涙声が古びた小屋中に響き渡る。

 

「ピサロ……」

「姉さん……」


 ただ、ピサロがいや、母が弱さを見せたのはその瞬間だけであった。

 すぐに声を持ち直す。

 

「今は魔界の最前線です。この地まで妊婦でありながら戦いに参加していたわたしの責任でもあります。そして、この後、もう数分したら魔物の大群がこの地にも足を運んでくるでしょう」


 魔界やら、魔物やら。なんだその厨二病の世界観みたいなやつは。俺が一番バカにしている世界観だ。

 

「ロイズが死んだ今、白属性はダンテとこの子達……、ゲッツァとミュウラの3人でしょう!魔王に対抗するにはこの子達が重要なカギとなるでしょう……」


 ついに魔王まで出て来てしまった。本当に厨二の世界だ。それに先ほどから言っている白属性とはなんなのだろう……。


 ピサロは続ける。

「カルバーツ……。ダンテ……。時間がありません。この子を抱えてこの場から離れてください!」


 覚悟の籠った真っ直ぐな言葉だ。

 今は赤ん坊の俺でも覚悟は伝わってきている。これが母というものなのか……。設定上でね。


 カルバーツとダンテの涙を啜る音が聞こえる。

 これは二人からすると相当、くるものがあるのだろう。


 

 ――ドン――

 

 激しい音が響き渡ると何かの大群が押し寄せてくる足音が聞こえる。

 学校での避難訓練でもこんな大勢の音は聞いたことが無い。


「早く!行きなさい!未来を……。人間達の未来を……その子達に頼みますよ……」


 その言葉を聞くと涙ながらにカルバーツは俺のことを強めに抱え上げた。

 持ち上げられてわかるが本当に俺は赤ん坊だ。


 隣ではダンテがミュウラのことを優しく包み込むように持ち上げた。


 あっちの方が子供を大切にしている感じで良さそう。ガチャ失敗だ。

 二人は俺たちを抱え込むと急いで小屋を後にした。

 

 カルバーツの腕の中から空が見えた。地球とは思えないほど荒んでいて真っ暗だ。そして、何より空気が悪い。これだけで夜ではない何かなのだということが伝わってくる。


「ごめん……。ロイズ……。ごめん……。ピサロ……」


 カルバーツは涙ながらに呪文のようにそれだけを言いながら走り続ける。

 もちろん、後ろから来るダンテも同じだ。


 それにしても、二人の足はとてつもなく速い。こんなスピード電車の一番前の席から行く先を見ている時と同じ感じだ。ただ、線路がなく、道じゃ無いようなところを飛んだり潜ったりと夢じゃなければ体験できないようなアトラクションのようだ。


 

 ――バーン――

 

 音が聞こえたのは先ほどいた小屋の方からだった。

 二人は足を止めた。

 

 先ほどいた小屋は爆発音と共に跡形もなく吹き飛んでしまった。あそこにいた母は今頃……。

 そんなこと考えたくない。それに夢だ。そうだ夢だ夢だ。自分に言い聞かせる。

 

 そんな時、カルバーツが俺の両脇を抱えると、高く掲げて先ほどの小屋の方に俺を向けた。


「いいかゲッツァ……。お前の……お前の……両親は……とても立派な最後だったぞ!覚えてないかもしれないけど……絶対に忘れるなよ!」


 その言葉に俺は来るものがあった。たとえ、夢だったとしてもカルバーツが涙を食い殺しながら投げかけたこの言葉はとても重みがあった。


 その瞬間、俺の目には涙が溢れ出した。

 声を荒げて泣いた……。赤ん坊のように……。まるで自分自身の人生かのように……。

 二人はそんな俺を見ると安心そうにまた足を進めていった。

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