17、クラス1
今日は初の少年学校の登校日だ。
昨日が試験だったため昨日の今日で非常に気合が入っている。
学校が始まったのなら日課の裏山での朝練はできない。
いや、しても良いんだけど……登校初日は何が起こるかわからないため、早く家を出る事にした。
もう言う必要もないとは思うが朝食は美味かった。
「忘れ物は無い?」
「うん大丈夫!いってきま〜す!」
「は〜い!いってらっしゃ〜い!」
おばさんの温かい掛け声に背中を押されて俺は少年学校へと飛び出していった。
学校初日だ。
俺は少年学校に着くと一目散に入って行く。
人気が何も無い……。
まだ誰もきていないようだ。
それはそうか……。こんなに早い時間から学校に来るやつなんていないよな……。
っていうか学校が広すぎてどこがどこなのかが全くわからない……。
この少年学校には一学年に1000人ほど在籍している。
それが10年分。
と言うことは約、1万人もの生徒が通っている。
それは広く作るわという感じ。
入り口の前に教室の位置なんかが書いてある。
俺らの学年は28クラスまで存在する。
俺は1―1クラス。
でもなかなか見つけられない……。
と見たところでようやく地図の一番端に1―1と書かれている教室を発見した。
俺はよく道のりを見直す。
何度も……。何度も……。
道のりを把握したところで俺は教室に向けて足を進めた。
何回もシミュレーションをしたはずなのになかなか辿りつかない。
どうやら迷ってしまったようだ……。
ってここは……。昨日の魔法の試験会場だ……。
俺は昨日の魔法試験を行った会場へと来ていた。
看板では魔道場と書いてある。
武道場ならぬ魔道場か……。
それより、どこでどう間違えたのか……。
そんなことを考えていると魔道場から衝撃音がたびたび聞こえてくる。
――ドン――
――ドン――
――ドン――
こんなに早い時間から誰かがいるようだ。
俺も人のこと言えないけど……。
俺は気になると魔道場を少し覗いてみる事にした。
扉の隙間から魔道場を覗く……。
――――――
俺は驚いた……。
そこにあったのは的に向かってひたすらに魔法を打ち込むラーク姫の姿があった。
今日は登校1日目だぞ……。
もうそんな小慣れたことをしてるのかよ……。
と思いたいところではあるのだが……。
ラーク姫は女子とは思えないほど汗を流しながらひたすら魔法を打ち込んでいた。
女子とは思えないと言うのは量のことであって汗自体は俺の男臭そうなのとは違い爽やかな感じだ。
「水魔法“水銃”。水魔法“水銃”。水魔法“水槍”」
ラーク姫は的目掛けて鋭く魔法を飛ばして行く。
正直に言うと、俺よりも確実に魔力、魔技は数倍上だ。
魔法一つ一つの威力と質が全然違う。
そのあまりにも綺麗で美しい魔法に俺は数分ほど見惚れてしまっていた。
あれほど良質な水魔法を放つのは本当にカルバーツ並みだ。
まあ、カルバーツはそれに加えて桁違いの破壊力があるのだが……。
あ……。
そうだそうだ……。クラスを見つけなければ……。
俺はふと思い出すと魔道場を後にする。
やっとの思いで1―1に着くことに成功した。
本当に長い道のりだった。
黒板には座席表が書かれていた。
俺は…………。
窓側の一番後ろだ!
歓喜の瞬間だった。
この席になることはいつになっても喜びを感じてしまう。誰がなんと言おうと一番当たりの席だ。
多分、俺だけ下の名前がないから名簿的に一番最後になったのだろう……。
まあそんなことはどうでも良い。
俺は席についてから隣を確認する……。
隣の席は……。
レオ・フェルナンデス。
2位だった奴だ。
まさか隣の席になるなんて……。
でもまあ、案外良いやつかもしれないしあんまり警戒しないで行くのが良いのかもしれないな……。
色々と歩き回っていたらあっという間にみんなが来るような時刻になっていた。
さあってと第一印象は大事だ……。心してかかれ!
俺は覚悟を決めると席に堂々と座りみんなが来るのを待ち侘びた。
話し声が聞こえる……。
男の数人の声だ。
その声はこちらへと段々と近づいてくる。
――ガラガラガラガラ――
ドアが開くと男三人組が教室の中へと入ってきた。
「ここだよな1―1はなあ!」
小太りで栗型の頭の少年はでかい態度で教室の中へと入ってきた。
「ああ!ここであってるぜ。この学校……デカすぎてわからなくなるぜ!」
長細くメガネの少年はメガネの割にでかい態度をとっている。
「俺の席はどこだ?」
最後に入ってきたのは低身長だが、目はキリッとした金髪の少年だ。
もうすでに仲が良さそうだ。
学校に入ったら友達を作るものだと思っていたのだが、すでにこいつらは知り合いのようだ。
こういう奴らには何となく話しかけづらい……。
その三人組は教室の目の前に貼ってある座席表をまじまじと眺める。
頼むからこいつらとは近くない席であれ……!
そう強く願う!
「俺、一番前だ〜!」
小太り栗が朝っぱらからでかい声で教室内で声を上げる。
「マジ〜……俺はちょうど真ん中だな……」
長メガネとも席は離れそうだ!
一安心……。
と思っていると……。
――――――
金髪チビが俺の隣の席にカバンを置いた。
最悪だ……。
とも思ったのだが、俺の席の隣は……そうレオだ。
こいつがレオ・フェルナンデスだ。
なんかもっと自分が描いていた長身紳士のイメージとかけ離れていたため少しギャップを感じる。
すると、レオの席に他の二人が寄ってくる。
「レオ様はここの席なんですか〜!」
「ああ!」
小太り栗の言葉に一言で返す。
隣の席で大声で会話をされるとなんか……。うーん……。難しいな……。
そんなことを考えていると、レオが急にこちらをまじまじと見てきた。
ここは挨拶でもした方が良いものなのか……。いや、気づかないふりをしておこう……。
「お前がゲッツァか?」
急に言葉をかけてきた。
「はい……」
急だったので反射的に返事をした。
もしかして、そちらから話しかけてくれるのは仲良くなりたいのか……。
まあ確かに、俺は成績も良い方だし切磋琢磨していく仲間的な部分では良いかもな……。
「っぷ!」
そんなことを考えていると急にレオが吹き出したのだった。
「わっっはははああ!」×3
それと同時に、三人は俺を嘲笑うかのように笑い始めた。
俺はあまり状況がよく飲み込めていない。
でも非常に不愉快だ。
しばらく笑っているとレオが口を開いた。
「お前が上級貴族でも王族でもないくせにクラス1に来たうつけ者か!」
うつけ者……。あとで意味を調べよう。でも、決して褒め言葉ではないのはわかる……。
「場違いじゃねえかよお前だけ!」
「恥ずかしいぜ〜!ひゃっは〜!!」
長メガネ、小太り栗も続けて俺のことを馬鹿にしてきた。
こいつら……。まじでムカつく……。
ほとんどズッ○ケ3人組みたいな格好しやがって!
「こんな奴の横にいたら貧乏がうつっちまうぜ!コング!テオス!行くぞ!」
「はい!レオ様」「はい!レオ様」
そう言うとレオは2人を連れて教室の外へと出て行った。
あいつら……。俺がいっときでも仲良くしようと考えたことが馬鹿だった。
本当に最悪な奴らだ。
これでレオには絶対に負けられない理由ができた。
今の成績は負けている……。
次の試験で抜いてやる。
しばらくすると、ゾロゾロと教室の中へと生徒が入ってきた。
人が増えるたびに教室内が騒がしくなっていった。
the学校という感じだ。
そして、最後の最後に駆け足ながらにラーク姫が教室へと駆け込んできた。
ギリギリまで魔法の修行をしていたのか……。
ラーク姫は暖かい声援でクラスの中へと向かい入れられた。
男女問わずクラスの全員が挨拶を送っている。
それに対してラーク姫は明るく全員に挨拶を返している。
これを見ているとラーク姫には挨拶をいうのがルールなのかと思ってきた。
まあ一応していて損は無いからな……。
俺は立ち上がり、ラーク姫の方へと体を向けると精一杯の誠意を込めて頭を下げた。
「おはようございます!」
――シーン――
先ほどまで騒がしかった教室が一瞬で静まり返った。
地獄のような空気が流れた。
あれ?挨拶しちゃいけなかったのか……。
すると、ラーク姫はこちらを向くと笑顔で、
「おはよう!」
と返してくれた。
救われた……。本当に……。
でも、ラーク姫が挨拶を返した後は教室内はザワザワとしていた。
みんなから痛い視線を感じる。
一方、ラーク姫は何も普段と変わらずにいる。
特に俺を意識していなさそうだ。
――ガラガラガラ――
「おはようございま〜す!」
前の扉が開くとスーツのようなものに身を通した大人が入ってきた。
先生だろう。
先生は教卓の前で立ち止まると、「起立!」と号令を出した。
「気をつけ、礼!」
「おはようございます!」
「着席」
全く一緒で安心した。
それから出席の確認。
「コング・ピーター!」
「はい!」
そうすると小太り栗は元気よく返事をした。
何順なのか全くわからないがまあ良いだろう……。
――――――
「じゃあ最後……ゲッツァ!」
「はい!」
俺はみんなと同じように返事をした。
すると、何やら教室内がザワザワ、クスクスしているように感じた。
やはり……。
ここで俺は確信に変わった。
シーエーさんが言っていたように水の国では貴族の階級により人間関係が構築されており、身分が低いものたちは馬鹿にされている。
まあそんなこともどうって事はない。
俺は強くなるためにきたのだ。こいつらとの関係性なんてどうでも良い。
そう割り切ると何となく気持ちが楽になるように感じた。
それから授業が開始された。
授業といっても魔法の授業ばっかりだ。
魔物の紹介やら魔族の紹介やこれまでの歴史など……。
そして、基礎魔法の実技やコントロール。
体力作りなど……。
魔法に関することを全て幅広く行なっている。
これはカルバーツやシーエーさんがえらくおすすめする訳だ。
それに学校の先生方は俺が貴族の家系じゃないからって差別はしない。誰にでも平等に接している。
ここも、少年学校の良いところなのかもしれない。
おかげで、前世では授業中によく落書きをしたり居眠りをしていた俺でも興味深く真剣に授業を受けることができた。




