13、水の国
俺はシーエーさんの言われるがままに移動していく。
「お〜!懐かしい顔じゃねえか!」
城下町の大通りを歩いていると、屋台を出していたガタイが良い、ハゲ髭のおっちゃんに話しかけられる。
「あ!オーク焼き屋のおっちゃんじゃないですか〜!」
シーエーさんは懐かしそうだ。
それにしてもオーク焼き屋とは……。
「久しいな!昔は毎日のように買いにきていたのによ〜!最前線に行ってからなかなか顔を見せないもんでなあ!」
「ごめんよ!おっちゃん……。でも、また最前線に戻るまでは時間があるからたくさん買いにくるよ!」
「お〜そうかそうか〜!ところでお前が連れているそこの白髪のガキはなんだ?」
おっちゃんは俺に目線を向けた。
ここで自己紹介をしようっと……思った時にシーエーさんが口を開いた。
「こいつは最前線から帰る途中で拾った親の身寄りがないって言ってたもんだから、俺が預かることにしたんだ。一応、水属性らしいから、これから少年学校に通わせようと思っているんだ!俺の母親も独り身になっちまって寂しいだろうからそこへ住まわせてな……」
今、俺のこと水属性って言ったよな……。
「おうそうか!お前はお人好しだな!」
おっちゃんは俺へと視線を向けた。
「おい坊主!立派な戦士になるんだぞ!これサービスだ!」
そう言うとおっちゃんは目の前で焼いていた肉を串に刺すと、大量のソースをぶっかけて俺に差し出してきた。
「ありがとうおっちゃん!」
俺はおっちゃんが渡してくれた肉を受け取った。
「おう!頑張れよ!」
おっちゃんは得意げな笑顔で俺らを見送ってくれた。
これがオーク焼きか……。
オーク肉はよく食べているが、こんなに新鮮で美味しそうな肉は初めてだ。
一口、かぶりつく……。
――――――
美味すぎる!
なんだこの味付けは!!
口の中で噛めば噛むほどます弾力。
今まで、食べていたオーク肉とは一味違う。
これからこの地に住むならこの店は常連になろう。
それからシーエーさんの紹介で武器屋や防具屋なども見る。
どれもこれも男心がくすぐられる商品ばっかりだ。
俺は厨二病では無いがこういうものを見るとやはりかっこいいと思う。
男だからな……。
その後に、話しかけてくれた貝焼き屋のおばさん。
シーエーさんが俺のことを紹介すると貝をくれた。
アッツアツの貝焼き!美味!
そして、最後にシーエーさんのとっておきのお店の紹介だ!
そう!ケーキ屋だ!
この世界にもケーキという存在があることに驚きだ。
シーエーさんの話曰く、この世界では誕生日になると食べる家庭が多いらしいと……。
文化とかはまったく一緒じゃねえかよ!
「すみません……。このショートケーキ一つ!」
「はい!」
シーエーさんは俺にショートケーキを奢ってくれた。
これをどうしても食べさせたかったらしい……。
近くのベンチに座ると、俺はケーキにかぶり付いた。
――――――
ケーキだ!
確かに味とかは少し違うがこれは正真正銘のケーキだ。
「どうだ!うまいだろケーキ!初めて食っただろこんなにうまいものは!」
自信満々にシーエーさんは言ってくる。
まあ前世で食ってたなんて言えないから……。
「めっちゃうまい!」
と答えとく。
「そういえばシーエーさん!なんで俺のこと水属性って嘘をついたの?」
俺は先ほど引っかかったことを聞く。
オーク屋のおっちゃんだけじゃなく、武器屋や防具屋のおじちゃんにも俺のことを水属性と紹介していた。
何かバレてはいけない理由でもあるのか……。
「いいかゲッツァ……!白属性っていうのはこの世界に数人しかいない貴重な存在だと教えただろ!この水の国には水属性の人々しか集まっていないんだ!そこで変に白属性と騒がれてみろ!有る事無い事を言われる羽目になるぞ!」
「有る事無い事っていうのは……?」
「まあ簡単にいうと嫉妬の対象になるってことかな……。俺がこんなこと言うのもあれだけど、水の国の貴族たちってのは頭が硬い奴が多いんだ!自分がうまくいかないとすぐ都合の良いふうに書き換えたり……お前の父のロイズさんや、カルバーツだってこの水の国の貴族たちによって追い詰められたりしたからな……だからなるべく目の付けられないようにしなければならないんだ!」
そう言う事ね。理解理解。
でも、それならなんでカルバーツは水の国へ行けと言ったのだろう……。
今の情報だと、この国は何やら危ない感じがするのだが……。
いい機会だし、聞いてみるか。
「そうなのか〜。でもなんで、カルバーツはそんな仕打ちを受けながらも俺を水の国へと行くように指示したんだ?良くないんだろ!あんまり……」
シーエーさんはベンチから立ち上がると、俺の方をクルンと振り向いた。
「それは魔法教育がめちゃくちゃ最先端なんだ!これからお前も通うことになる少年学校という場所があるんだけどな……」
この前の会話からも少年学校という単語は良く出てきていたので覚えている。
「少年学校は6歳になったら入学できる最前線へ行くための戦士を育て上げる学校なんだ!他の国にも少年学校はあるのだが、この水の国の少年学校は他の国とは違う魅力がある!」
「それは……?」
「それはだな!圧倒的な施設力と圧倒的な魔法教育があるんだ!」
なんか先ほども聞いたような感じだ。
シーエーさんは続ける。
「例えばでいうと、火の国の少年学校はほとんど教えないらしいんだ!強くなりたい人は強くなるし、やる気がない人は何も変わらない。土の国の少年学校は剣術や槍術、格闘術がメインで魔法教育にはそれほど力を入れていなかったりする。その点から見ても水の国の少年学校は教師がしっかりと付いていて、魔法の上達が他の国とも比べて異常にいいんだ!」
「ほうほう……」
俺は相槌を打つ。
「これからお前には魔法の上達が一番だと考えたお前にカルバーツはこの少年学校が最善だと思ったんだ!」
なんとなく理解した。
つまり、魔法を上達するためにこの場所が一番良い修行場所ということか……。
「まあ……。俺やカルバーツなんかも通っていたからなんとなくわかっているというのもあるんだけどな……」
シーエーさんは熱く語ったあとなので疲れたのか再びベンチに腰を下ろした。
「わかったよ!俺が白属性だっていうことは秘密にするよ!」
「ちゃんと理解してくれてありがたいぜ!」
シーエーさんは軽く笑うと再び立ち上がった。
「よーし!じゃあそろそろ家まで案内するか〜!」
「お〜!」
なんならこれが一番楽しみだ。
どこからともなく豪華な家が続いている城下町に住むなんて夢のようだ。
こんな良いところだとは想像もしていなかったため、余計胸が躍る。
俺は立ち上がると、シーエーさんについて行った。
「これが今日からお前が住むことになる家だ!」
………………。
俺たちは城下町を出て行くと、少し外れたところに住宅街が並んでいた。
城下町と違って華やかさが全く無い。
いや、悪くは無いんだが……。さっきまでの景色が良すぎてギャップと言いますか……。
城下町とは近い距離にはあるのだが……ここまで変わるかなっていう……。
「なんだどうしたゲッツァ……!」
「なんでも無いです!」
「ああ!そうか……。城下町には住めないぞ!あそこは上級貴族や中級貴族が住むところだからな……。俺は下級貴族の生まれだからな!」
……。まあ仕方ない。生まれをどうこう言うのは違うしな……。
そんなことを考えていると、家の扉がバタンと開く。
「シーエーおかえり!」
優しそうな女の人だ。年齢は50近いだろう……。
「お母さん!」
二人ともとても嬉しそうだ。
それもそうだ。普段は最前線で戦いをしているシーエーさんはいつも危険な場所に身を置いている。そんな心配を抱えながら会える日を待っている母親はさぞかし寂しい思いだろう……。
そんな中、シーエーさんのお母さんは視線を少し下げると、俺にピントを合わせた。
「あ〜この子がそうなのね!」
「うん!あらかじめ手紙で報告は入れて置いたんだけど、いい子だぞ!」
シーエーさんは俺の頭をそっと撫でた。
「あ、あの……これからお世話になります!ゲッツァです。よろしくお願いします!」
俺は深々と頭を下げる。
するとシーエーさんのお母さんはしゃがみ込むと頭を下げている俺の顔を覗き込むようにしてきた。
「よろしくねゲッツァ君!わたしのことはおばさんとでも呼んでくださいね!」
やはり、シーエーさんのお母さんだ。とても暖かい眼差しだ。
「とりあえず、みんな。中に入るか……!」
シーエーさんは呼びかけると、扉の中へと入っていく。
俺やおばさんも後を追うように家の中へと入っていった。
家は二階建てで、一階に茶の間や台所、お風呂なんかがあり、2階には寝室とシーエーさんの部屋があった。
決して大きくはないが、非常に住みやすそうだ。
部屋の中を一通り見てから茶の間に戻ると、おばさんが飲み物を用意してくれていた。
俺たちは腰を席にかける。
それに一日中歩き回ったので時刻は夕方過ぎだ。
夕陽の光が窓から差し込む。
「ご飯はもうすぐだからちょっと待っててね!」
おばさんは台所の方で慌ただしく動き回っている。
連絡は一応していたらしいけど、今日急に帰ってくるとは思っていなかったのだろう。
そんな様子を見ていてシーエーさんは席を立ち上がるとおばさんの方へと駆け寄っていった。
「俺も手伝うよ!」
「ありがとうね!」
なんと微笑ましい親子なんだ……。
俺も見習わなければいけないな……。




