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白の|運命《さだめ》〜選ばれし白属性魔法として生まれた俺は……〜  作者: 生きてる水


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10、壊滅

 

「よ〜し!今日はそろそろ帰るぞ!」

「え〜火魔法をもっと使いたかった〜!」

「ダメだ!帰るぞ!」

「は〜い!」


 まあこのやりとりも恒例になってきたな……。

 夕焼けに染まる空の頃に俺らは家へと帰る。


 のだが……なんか今日はおかしいような……。

 先ほどから街中が騒がしい。


 何か起きたのか……?

 

 ――――ボーン――ボーン――――

 

 金の音が鳴り響くとホールグリットの城門が開き始めた。

 この時間に?珍しいような……。

 シーエーさんの顔も動揺していた。何やら異変に気付いたようだ。

 

「ゲッツァ!俺に乗れ!」

「へ?」

「いいから乗れ!」


 いきなりそう言われると……とも思ったが、それなりに深刻そうだったためしゃがみ込んだシーエーさんに飛び乗った。


 おんぶなんて久しぶりだ。でも、そんな呑気な状況でも無いらしい。

 シーエーさんは俺を背負うと、ものすっごいスピードで城門の方へとかけて行った。

 本当に焦っている。結構深刻そうだ。

 

 ――――――

 

 城門の方へと行くと、大量の前線兵たちが帰ってきていた。

 どの兵もボロボロで花魔法が使えるものたちは必死に花魔法で治癒を行っていた。


 ホールグリットに入らない分は外で藁や何かを敷き、傷ついた前線兵たちが包帯など、緊急措置を行っている様子が見受けられる。


 中には腕がないもの、足がないものもいる……。

 なんて残酷な世界なのだ……。

 

 この量の前線兵が帰ってきているとなると最前線で何が起こっていたのかなんとなく予想がつく……。


「カルバーツ!いるか?」


 シーエーは大きな声で叫んだ。

 もしや、カルバーツに何か……。


 そんなことが俺の頭の中に駆け巡る。

 そんなことないよな……。だってカルバーツは最強なんだ……。

 

「ああ!ここだ!ここにいるぞ!」


 太い声が聞こえてきた。

 すると人混みの中で埋もれながら手をこっちへと振っている人物がいる。

 

「カルバーツ!」「カルバーツ!」

 俺ら二人は声を揃えた。


 とりあえずは無事らしい。

 カルバーツもこちらへと駆け寄ってきた。

 

 見た感じカルバーツは大きな怪我を負っていなそうだ。

 多分、大丈夫だ。一安心。


「カルバーツ!状況は……?」


 その質問にカルバーツ含め、周りにいた前線兵たちが下を向いた。

 なんとなく察しがつく……。

 

「すまん……。突破されちまった……」


 やはりそうか……。今回、負けてしまってここまで前線を押し戻されたのだ……。


「ああそうか……。ってことは……」


 ってことは……。って……ん?ここまで押し戻されたということは……。

 俺はシーエーの背中で頭を悩ませた。

 

「その通りだ……。ここ、ホールグリットも魔族たちに飲み込まれてしまう……」

 

 え?

 

「そういうことか……。だからここに前線兵が戻ってきたということか……」

「ああ……。多分明日か明後日ぐらいにはここが戦場と化すだろう……」

「……ああ、わかった」


 ということはだよ……。

 ここホールグリットは明日で陥落するということになる。

 え?じゃあどうするの?


 カルバーツに早めに会えたのは不幸中の幸いだけど、不幸が大きすぎる。

 だって……。5年間育ったこの街が飲み込まれてしまうのだ!言い訳がない……が、周りにいる前線兵を見渡すと、全員が傷つき人間たちの未来のために必死に戦っていたことが分かる……文句の言いようがない。

 

「シーエー!お前はゲッツァを連れて逃げろ!」


 え?

 

「なんだと……俺も前線に残って戦うぞ……なんて言えないな!」


 シーエーさんは気持ちをグッと噛み殺して答えた。

 すごく悔しそうな表情だ。こんなシーエーさんは見たことがない。


「ありがとう!よく俺を知っているな!」

「当たり前だ……何年いっしょにいると思っているんだよ……」


 こんな時、俺の話に口を割る隙はない。黙って話を受け入れる以外は……。

 

「で、これからゲッツァはどうするんだ?一個先の街でまた同じような感じで良いのか?」


 まあ、それが無難だろうな……。

 この街を離れるのは寂しいけれど……。

 しかし、カルバーツはそれに対して何も答えなかった。

 

「どうするんだ?カルバーツ……」


 カルバーツは顔を顰めていた。

 何やらカルバーツなりの葛藤がありそうだ。

 カルバーツは重たい口を開けた。


「これからゲッツァには人間界へと行ってもらおうと思う……」


 その言葉に俺以外、周りにいるみんなが衝撃を受けた。

 

「カルバーツ様……それって……」


 カルバーツの横にいた二等兵のようなやつが聞き返す。

 それには俺も口をあんぐりだ。

 

「さすがにこれ以上、魔界に置いとくのは危険だ……」

「でも、それですと……これからはカルバーツ様と会うというのは厳しいと思いますよ!」

「そうだぞカルバーツ!ゲッツァをロイズに託されてから俺が育て上げるって言ってたのに……。急にどうしたんだよ!」


 すかさずシーエーさんも反論する。

 

「何を言ってんだよカルバーツ!俺からしたらカルバーツは家族みたいなもんなんだぞ!急に離れろなんて……俺、嫌だよ……!」


 シーエーさんの背中の上から俺も反論を飛ばす。

 急な提案だ。飲み込めるわけがない。第一に今日まで大丈夫だったのだ!心配はないはずだ……。

 

「すまねえなみんな……!でも、これは俺の判断だ。今日の戦いで確信したんだ……。これ以上魔界にいると、何が起こるか分からないってな……」


 カルバーツは深刻な顔で続ける。


「今日、一気に前線が押し込まれた……。それは魔物たちの士気のあがり方が昨日までと違ったんだ……。もしかしてだけど……復活したのかもな、十魔王が……」

 

「十魔王……」「十魔王……」

 

 周りにいる兵とシーエーさんは口を揃えた。


「十魔王って……。あの十魔王か……?」

「ああ!その十魔王だ」

「でも十魔王は昔……ロイズとお前とダンテ……あとは、バヒとかエドがそれぞれ倒したんじゃないのかよ!」

「ああ!倒したさ……。でも、肝心の大魔王は倒すことができなかった……。大魔王が生きているのなら復活していてもおかしくない存在だ……。なんたってあれから5年も経っているんだからな!」

 

 昔は厨二病だと思っていた魔王や魔法やらの単語も今やそうは思わなくなっていた。

 俺はシーエーさんの背中で小さく震える。


「だからこそ!ゲッツァを人間界へと行ってもらおうと思うんだ……。いくら俺でも、十魔王を倒すことができても守ることも含まれるとうまくできなそうだしな……。俺はロイズじゃねえし……」


 その言葉に俺含めて周りのみんなは否定的だったと思う。

 俺もこの時、「そんなの関係ねえ!自分の身は自分で守るからカルバーツのそばに居させてくれ!」って言おうとした。


 でも、そんな中で一人だけ、カルバーツの意見に賛成の者がいた。

 それは誰よりもカルバーツを知っているシーエーさんだった。

 

 シーエーさんは俺を背中に乗せたまま、家の方へと駆け出した。


「すぐに準備をする!特上の馬を用意しといてくれ!」

「おう!ありがとなシーエー!」


 俺が割って入る隙もなかった。

 

 この二人の信頼度は凄まじい。


「なんで……なんでなんだよシーエーさん」


 激しく揺られる背中で漏れた感情だった。

 

「悪いなゲッツァ!でも、これがカルバーツの覚悟だ……受け取ってくれ!」

「でも……でも、離れるのは嫌だよ……」


 俺の目から出た水滴がシーエーさんの背中へと落ちる。


「初めて泣いてるかもなゲッツァ!お前は子供なのに泣かなすぎて怖かったんだぞ……よかったお前にも子供っぽいところがあって……」


 確かに俺はこの世界で初めて感情を表に出したのかもしれない。

 でも、それだけ……それだけこの別れは辛い。


 カルバーツにはたまにしか会えなかったけど、この世界の親みたいな存在だ。カルバーツが居たから魔法も頑張ってこれたし、カルバーツが愛を注いでくれたからこそ強く生きようと思えた。そんなカルバーツとお別れなんて……。

 

「大丈夫だ!ゲッツァ……。お前が大人になって立派な戦士になればまた、最前線でカルバーツと会うことができる。それまでに、カルバーツを呆れさせないくらいに強くならないとな……!」

「シーエーさん……」


 一度、崩壊した涙腺というダムは勢いが止まることがなかった。

 それから家に帰ると、俺は玄関の前で泣き続けた。

 これが今生の別れになるかもしれない……。


 そんなことが頭に巡ると、俺は動くことができなかった。

 その間に、俺の荷物やシーエーさんの自分の荷物をまとめて来てくれた。


 それから俺を優しくおぶると、先ほどのカルバーツのいたところまで戻って行く。

 シーエーさんの背中は優しく暖かかった。



 先ほどの場所へと戻ると、極上の馬が一頭と、それを囲って最前線の兵達が俺らのことを待っていた。

 俺らの門出をお祝いされるように俺らはそこへ向かう。


 外野からは「ゲッツァ元気でな〜」とか「白属性魔法万歳!」とか「大人になったら必ず戻ってこいよ!それまで死なないからな!」とか色々な言葉が降り注いできた。


 このホールグリットでは俺は唯一の子供であった。

 そもそも、魔界に子供を連れ込むものはいない。

 そのため、この街の人たちは俺にとことん優しくしてくれた。

 みんな愛があっていい人たちだった。


 そこから離れるとなると、俺の涙はさらに止まらなくなった。

 そんな中で、俺の頭を優しく包み込む右手があった。

 とても、暖かくてゴツい右手だ……。どこか憧れを感じる……。

 

「泣くなよゲッツァ男だろ!」


 カルバーツの声だ。

 

「俺には娘がいるらしいんだけどな……とある罪を犯してちまって魔王を倒すまで魔界から出られないんだ……。だから娘を見たことも話したこともないんだ……」


 語り口調のカルバーツは続ける。


「そんな中で、お前に出会えたんだ!ロイズの息子だけど俺はお前を我が子のように思っていたんだぜ!」


 それは感じていた。

 だって本当に優しくしてくれたのだもの……。

 頭に乗っかる右手は誰よりも深い愛情そのものだ。

 

「でも、お前じゃ俺を満たすことはなかった……」

 

 ……………………は?

 

「俺はやっぱり実の娘に会いたいし、幸せに暮らしたい……。だから魔王を倒すため頑張るんだ……。でも、俺だけの力じゃどうにもならない……」


 俺じゃ満たすことができないで一気に涙が止まった。

 

「だから…………早く強くなってこっちに戻ってこいよ!お前の力がないと魔王は倒せないんだ!」


 俺は笑えてきた。

 これぞカルバーツという感じがして……。

 愛情や優しさなどはもらってきたが、絶対にそれを言葉に出さない。それがカルバーツだ。

 

「わかったよ!だったら俺が強くなって魔界へ戻るまで……死ぬんじゃねえぞ!」


 涙を拭き切って、自力で作った笑顔で伏せていた顔をカルバーツの方へと向けた。


「おう!俺は死なねえよ!だって俺は最強だからな!」


 “最強”……。それこそがカルバーツを証明するような言葉だ。

 多分、カルバーツは死ぬことはないだろう……。

 

 俺もそう考えたら胸を張ってこの街を出れそうだ。

 俺はシーエーさんの背中をよじ登り、シーエーさんの両肩に両足を乗っけて立つと、高らかに右拳を突き上げた。


「俺の名前はゲッツァ!白属性魔法のゲッツァだ!俺が戻ってくるまでに死んじまったら承知しないからな!わかったかみんな!」


 その言葉が町中に響くと数秒間の静寂の後、住民達の感情の爆発音が響き渡った。

 絶対にこの地に、いや、最前線へ戻ってくる……。そして、必ず大魔王をこの手で倒してやる。

 俺の胸にはこの決意が固く刻まれた。

 

「おうそうだな……。じゃあ行くぞゲッツァ!」

「おう!」


 シーエーさんが馬に跨るとシーエーさんが手を差し伸べてくれた。

 そのまま俺もシーエーさんの股あたりに跨ると、馬の後ろの方で荷物を巻きつけた。

 出発の準備は完璧だ。

 

 馬もウジウジしている。早く行きたくて仕方がないのだろう!


「カルバーツ!とりあえず水の国でいいんだよな?」

「ああ!そうしてくれ。多分、少年学校に入れば、俺らがいなくても今まで通り魔法を鍛えることができる!」

「わかった……!俺もゲッツァを送り届けたらなるべく早めに戻ってくるよ!」

「おう!悪いな……。実家のおばさんにもよろしく言っといてくれよ!」

「おう!じゃあ出発するぞ!」

 

 シーエーさんは馬の手綱を思いっきり引っ張ると、馬は体勢を持ち上げて遠吠えを上げた。

 急だが、お別れの時だ……。

 先ほどまでここで修行をしていたのが嘘のようだ。


 夕暮れだった空も今や、火が落ちて真っ黒に染まって来ている。

 馬は城門を潜ると、速やかに目的地を目掛けて駆けていった。

 

 後ろを振り返ると、カルバーツやら街のみんなが手を振ってくれていた。

 これからみんなは最前線を押し上げられないために総戦力で魔物達に立ち向かうのであろう。

 みんな気が気じゃないだろうに……。そんな中で俺にここまで情を注いでくれる。


 本当にいい人たちだ。

 速馬で靡く俺の白髪は自分の使命を記すように視界に入る。

 

 白属性……。

 

 あれから5年間も経ったのだな……。

 長いようでとても早い5年間だった。

 ミュウラは元気なのかな……。双子の妹のミュウラは……。

 人間界に入ればどこかで会うこともあるだろう……。

 

「シーエーさん!」

「なんだ?」

「俺のお父さんってどんな人だったんだ?」


 ミュウラのことを考えていたら自然と俺の父のことが気になるようになった。

 母ははっきりと覚えているが、父の顔は見たことがない。

 

「ロイズさんは……簡単にいうと、人間界の誇りだった……。カルバーツより強くて、カルバーツよりも優しくて、お前と同じ白属性だ!」


 自信満々で答える。

 カルバーツが比較の対象になっているのは触れないでおこう。

 

 俺の父はとても偉大だったのだな……。でも、カルバーツも十分すぎるぐらい優しい。それよりも強くて優しいなんて……。俺もそれを期待されているのかなあ……。

 そう思うとなんか自分がちっぽけな人間に見えてくる。


「俺は父さんやカルバーツみたいになれるかな?」


 その言葉を聞くとシーエーさんは少し嬉しそうに笑った。


「まあロイズさんは目標が高すぎるから、一応、カルバーツぐらいを目標に頑張れよ!」

「いや、俺はカルバーツも超えて父さんも超えてやるよ!」

「いい意気込みだ!じゃあまず、水魔法を使えるようになるところから始めないとな!」

「うるさい!」

 

 この日、俺には明確な目標ができた。

 まずは強くなる!

 カルバーツを超えるくらい。まあ見たことはないけど、想像上の父さんも超えてやる。


 そして、大魔王を倒す。

 この現状を引き起こしているのは大魔王が全ての元凶だ。

 必ず、倒してやる。

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