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剣と魔法の同棲生活RPG※ゲーム制作進行中  作者: 坂水 雨木
第0章 森とメイドと銀の妖精
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第9話 家探索

「家……?」


 自宅のような、実家のような……。

 木造の家だ。


 転移先は普通の家、宿のような場所だった。清潔で掃除の行き届いた小奇麗な実家感がある。


 見渡し、部屋の角にパソコンを見つける。


「いやパソコンって……」


 カタカタとタイピングし、前世のPCスキルが地味に使えると変な気分を味わう。すぐ近くには洗面台。無論自動だ。


 剣と魔法のファンタジーを返してくれ。


「……はぁ」


 魔物の気配もないし、とぼとぼと探索を再開する。

 絨毯に踏み入れる時、躊躇してしまうのは元ジャパニーズ。かと言ってダンジョンで靴を脱ごうとは思わない。


「良い匂い……」


 白いテーブルクロスが敷かれた長机の上。並べられた鍋すべてに同じシチューが入っている。


 ビーフな香りが漂うシチュー。ホワイトに見せかけてビーフらしい。


「いただきます……」


 取り皿はないので、エネルギーシールドを展開して載せる。スプーンはすぐ側に置かれていた。


「うまいうまい……ごちそうさまです」


 軽く一杯程度。代金としてお金を置いておいた。ありがとう、体力が回復した。


 ダンジョン産のものを気軽に口にするなと偉い人が言っていたらしいが、僕は野生児なので気にしない。何が入っていようが、消化されれば同じである。


 腹も満たされ気力も回復し、家探しを再開する。


 冷蔵庫、謎の風呂、謎の更衣室、鏡、テレビ、ベッド。机に椅子に水差しに暖炉。


「暖炉?」


 足を止める。

 火を付けられそうな暖炉があった。謎解きでは定番とも言える暖炉だ。何かギミックがあってもおかしくない。


 とりあえず火を付けてみて……。


【Bonfire was it】


 脳裏に過った単語は気のせいだ。文字列でも表れてないし。錯覚である。


「ん?」


 暖炉から髪の燃え滓が飛び出てきた。


『謎の紙片を手に入れた!』


「ほほう」


 興味深い。アイテムの説明には


『暖炉……移動……パウダー……』


 と謎の説明書きがされていた。

 要するに。


「暖炉で移動するにはパウダーする必要があるわけか」


 納得である。パウダーが必要らしい。きっとこの部屋のどこかにある。


 意気揚々と踵を返し。


「……あるじゃないかい」


 水差しの中にパウダーが詰まっていて出鼻をくじかれた気分になる。

 頬を搔き、まあまあとパウダーをもらった。


『"暖炉粉"を手に入れた』


 さあ、暖炉で使ってみよう。


「……」


 暖炉の前に立ち、使い方について考える。


「粉と言えば投げて使うものだけど……」


 一部を手に取り、暖炉へシュート。


 …………


 ……


「……沈黙、と」


 何もなかった。トリガーが足りないのかもしれない。部屋を探してみよう。


 もう一度、部屋を見回る。


 冷蔵庫の中にはシチュー。冷凍庫の中にもシチュー。


「シチューしかないのかよ、この家」


 や、美味しいけどね。

 誰にともなくフォローを入れ、散策を続ける。特に何もなさそう……。


「……アピールが露骨すぎる」


 姿見がやたらとキラキラ光って鬱陶しかった。あまりこういうのは好きではないが、何も手がかりがない状況。背に腹は代えられない。


「――鏡よ鏡、世界で一番ご主人様に好かれるメイドは私奴?」

「質問じゃなくて自己評価じゃん……」


 僕が何か言う前に声が聞こえてきた。とても聞き覚えのあるボイスだ。


「さあご主人様。あなた様が探しているのは、この銀の呪文? それとも金の呪文?? それとも私奴のパンツ?」


 クソ、なんだその誘導尋問みたいなのは……ッ!!


【選択肢】

 1、銀の呪文

 2、金の呪文

 3、パンツ


 くっ……!!


【3、パンツ】

 

「ふぅ、やはり、にございますか」


 鏡に映るメイド。ミラクルメイドのミサキだ。

 何やらアンニュイな顔で、「わかってますよ」と頷いていた。文句を言いたい。けど言えない。僕の選択の結果だ……。


「……言い訳はしない。潔く変態の烙印を押されよう」


 真の漢は正直に生きる。


「そんなド変態♡なご主人様には私奴のパンツコレクション。略してパンコレをプレゼント」


 ぱっ、っと目の前に現れるホログラム。つい最近見たばかりの、黒レースパンティを思い出す。しかしそれとは大きく違った。主に色が。


『"水色リボンのパンティ"を手に入れた!!!!』


 ファンファーレである。


「……可愛いパンツ穿いてるなぁ」


 悔いはない。

 下着、いいよね。わかるよ。僕も女だったらめっちゃいろんな下着選んでファッションショーしてたと思うから。

 

「うふふ、私奴、下着には一家言ございます」


 メイドは嫋やかに笑った。


「いつ何時ご主人様より求められ、押し倒されても問題なきようすべての下着を可愛いもので揃えております」


 訂正、変態メイドは笑った。

 

「ご主人様の性癖に私奴の下着がある限り、私奴も努力を怠りません」


 ちょっと何言ってるのかわからない。


「……まあ、うん。よくわからないけど了解。このパンツの使い道は?」

「それはもちろん自いこ」

「そういう意味じゃなくてね!!!ほら意味不明だけどミサキのパンツ使うと不死身になるじゃん!」


 危ない。あやうくエロゲ世界に踏み入れるところだった。剣と魔法のファンタジーを守っていこう。

 

「そちらでしたか。特に変わりはございません。好きに使用し好きに不死身となってくださいませ」

「……ていうかそもそも不死身ってなんなんだ。なんでパンツで不死身になるんだ。おかしいよ、もう……」


 溜め息。


「ではご主人様。パンコレマスターを目指すあなた様に一つヒントを。呪文は"鏡の国"にございます」

「急だね……。けどわかったよ、ありがとう」

「お役に立てたようで何よりにございます。私奴のパンツ、存分に楽しんでお使いくださいませ」


 何やら妄言を残してメイドは鏡から消えていなくなった。看板のときもそうだったけれど、今回もまた登場退場の仕方が意味不明だ。


 何はともあれ、神出鬼没な看板メイド……今回は鏡メイドか。

 鏡メイドのことはいったん忘れるとして……。


「"鏡の国"かぁ……」


 呪文と言えば暖炉だけど……どうやって使うんだろう。

 暖炉に行ってみればわかるのかな。行ってみるか。行ってみよう。


 即断即決。思い立ったが吉日。

 大した距離でもないので、さっさと歩いて暖炉の前へ。


「粉と呪文が揃った……」


 やることは決まっている。


【選択肢】

 1、じゅもる

 2、じゅもらない


 その選択肢は要らない。


【1、じゅもる】


 粉を投げて。


「鏡の国!」


 煙突ワープだ!!

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