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剣と魔法の同棲生活RPG※ゲーム制作進行中  作者: 坂水 雨木
第1章 銀の少女と砂乙女
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第38話 帰宅とリフォーム

 男装教団幹部のロカと戦い、なんとか勝利しファンファーレを聞いた。


「……ひとまず終わり、かな」

「なぞなぞはメイキュウ入りです……」


 可愛い物言いに苦笑する。

 結局ロカは取り逃がしてしまったので、教団への手掛かりはなくなってしまった。


「帰りましょう。この地方に男装教団が跋扈しているという事実を確認できただけ収穫です」

「それもそうだね」

「です!」


 エイラの発言に頷く。

 何はともあれ、一度家に帰ろう。


 ピラミッド探検隊! これにて解散っ!!

 次は別の地方を冒険しよう!!!


 ――と思ったけども。


「ボスの居た場所にはアイテムがあるって定番だよね」


『"男装印の健康ドリンク(粉)"を20個手に入れた!』


 ……。


「……」


 はぁ。


 ロカ、健康に気を遣ってたのかな。私物を盗むみたいで少し罪悪感。ごめんよ。


「ユウリ、どんなどろっぷあいてむですか??」

「これ」


 見せると、姫様は一瞬戸惑って目を逸らし、いつもの笑顔を浮かべた。


「全部ユウリにプレゼントです!」


 可愛い。元気いっぱい笑顔満点。


「……うん」


 しょうがない。ロカ、ありがたくもらって家で飲みます。いつか仲良くなる日が来たら青汁のお裾分けしよ……。


「――おや。帰宅の魔導書が使用可能となりましたよ」

「急だね。……やっぱロカを倒したからかな」

「敵のボウエイキノウを破壊したのですね!」

「いえ、お二人が周囲の環境を破壊したからです」

「「……」」


 二人でしょんぼりする。


 確かに今回のバトルは周囲への被害が大きかった。こちらも全力だったが、何より向こうの銃撃がひどかった。床も壁も僕の服もボロボロだ。


「……」


 アヤメちゃんを見て、ピカピカなお洋服に溜め息を吐く。羨ましいぜ……。


「アヤメ様の衣服は可愛らしいですからね」


 僕の視線を察してエイラが言う。


「え~、急にどうしたんですか? ふふん、エイラお手製お洋服です!」


 なんだよ可愛らしいって。それじゃ理由になってないぞ。超可愛いけど。

 目線だけで「でしょう(ドヤ)」と言ってきた。エイラに目線とかないけど。


「まあ、うん。普通に魔導書使えるならそれで帰ろう」

「はーいっ!ぼうけんは帰るまでがぼうけんです!」


 遠足みたいで楽しそうなお姫様である。


 さ。今度こそ家に帰ろう。



 ◇



【SetBGM:Title home】


 自宅BGMはもう聞き慣れた。

 思えば、寝るときや鬱陶しいと思ったときは自動で音が消えたり小さくなったりする。心反映システムである。


 三人で家に帰ったはいいものの、僕は自分の目を疑った。


「リフォームされてる……」


 隣のアヤメちゃんは藍色の瞳をキラキラさせている。


「わたしのおうちが進化しました!!」


 楽しそうで何より。

 ひゅーんと駆け出す美少女を見送り、僕も部屋を見回る。


「……壁がない」


 リビングである。

 最初からドアはなかったが、加えて柱、壁もなくなってしまった。


 悲しい。僕のベッドが食事処から丸見えだ。


 そしてキッチンが増設されていた。しかもかなり大きい。


 地味に部屋が拡張され、レイアウトも変更され、本棚や机が増えている。あとやっぱり僕のベッドが丸見え……。


「アヤメ様とエイラしか見る者のいない部屋で、隠れる必要がありますか?」

「ありません……」


 ちくしょう。僕だって一人で色々あるんだ。エッチなこととかエッチなこととかエッチなこととか……だめだ、煩悩しか浮かばない。これはエイラが正しいかも。


 溜め息をこぼし、屋内散策を続ける。


 玄関からすぐ、ちょっと物の配置が変わり、大きいのは風呂場(SF瞬間シャワー)の位置だろうか。


 よく考えれば家に帰って即お風呂に入りたくなることもあるし、リビングを介さず行けるのはありがたいかもしれない。


「ユウリ~!!」

「はいはい」


 ぴょいっと顔を出したお姫様に呼ばれてしまった。隠し部屋か。


 魔法陣に乗って隠し部屋へ。

 早々入ってしまった美少女に遅れ、到着。


「おお……」


 あまり変化はないようにも見えるが……ちょっと物が増えているか。


「ひみつきちですっ!!」


 アヤメちゃんは大喜びのご様子。

 部屋に増えたのはベッドとモニターとテーブルと、黒板風のボードと他いくつか。それなりに広い部屋だから物が増えてもまだまだ広々している。


 相変わらずラジオは壁際中央に鎮座したままだ。


「モニターとボードは準備中です。レシピ本について解説しましょう」

「うん」


 アヤメちゃんは大型モニター前に陣取り何か操作していた。どうもあのモニター、ネットに繋がっているらしい。


「キッチンの増設については理解しましたね?」

「それは、うん」

「アヤメ様のために手料理を振る舞うのです。それがユウリ、あなたの使命」

「うん?……うん。頑張る」

「世界には数多くのレシピ本が存在します。砂漠の宝箱で見つけた物もまた、その一つ」

「アレは……」


 パンコレを誤魔化すためにエイラからもらったもの……いや。何も言うまい。


「なんでもない。レシピね」

「はい。レシピを入手し作れる料理を増やす。アヤメ様が食べる。アヤメ様は喜ぶ。世界は平和になる。以上」

「……オーケー」


 話は終わりと打ち切られた。

 これからは日々の調理も僕の仕事に含まれるようだ。


 暇を見つけてレシピ本を眺めておこう。あと、レシピ探しもね。


『エイラお手製"レシピ本"を読み解いた!』


『"温玉チャーハンカレーライス"を作れるようになった!』


『"野菜パスタを"を作れるようになった!』


『"チキンカレーセット"を作れるようになった!』


『"イタリアンチキン定食"を作れるようになった!』


『"和風鶏肉おかゆ定食"を作れるようになった!』


「……」


 何も言うまい。

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