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剣と魔法の同棲生活RPG※ゲーム制作進行中  作者: 坂水 雨木
第1章 銀の少女と砂乙女
36/43

第36話 教団支部の最奥には

 短くも、教団員との戦いは熾烈を極めた。殴り蹴りを繰り返し、アヤメちゃんがほぼすべてを打倒する。僕は一撃必殺で忍殺をキメてきた。


 人間相手でどうなるのかと思ったが、致命傷=気絶のようで、今のところ罪悪感なく連発できている。お姫様のほうも同様だ。


 どうもHPの概念がソレをさせているようで、完全魔力体(魔物とか)以外はHPゼロでも死ぬわけじゃないらしい。


「ふー」


 休憩だ。

 男装教団砂漠アジトの探索も終盤。連続した戦いに少々疲労気味である。


「みゃぅぁ~」


 可愛い鳴き声を聞いてちょっと元気になる。


「ふふ、アヤメちゃん疲れた?」

「はい~……悪い人いっぱい倒してつかれちゃいました」


 結構なハイペースで教団の兵士を倒し、おそらく最奥と思われる場所近くまでやってきた。


 男装教団の連中、どう考えてもこちらの姿が見えているのに、彼女ら独自のラインまで進まないと会話一つしようとしないのだ。


 どこか既視感のあるやり取りにも思えるが、ソレよりも融通が利かない。手でバリア張られて話しかけられないし。


「モンボで魔物モンスター投げてこないだけマシか……」


 お疲れなアヤメちゃんに腕を貸す。気分はエスコートする紳士――。


「――!?!?」

「ふみゅむ~」


 いったい何が起こったんだ……。僕は腕を貸した。そしたらぐでんと体重を預けられてしまった。


 つまりそう、僕は今アヤメちゃんに背もたれ代わりにされている……!!


「……スゥ」


 色々柔らかいし、めっちゃ良い匂いするし、可愛いし、髪の毛くすぐったいし、可愛いし。


「……あの、アヤメちゃん。可愛――じゃなくて、あんまり見ず知らずの男にくっついちゃだめだよ」


 ……はぁ。


「……はぁ」


 やめてエイラ。溜め息吐かないで。わかってるから。甲斐性なし意気地なし勇気なしと三拍子揃ってるのはわかってるから……。


「ん~、ふふー、ぽかぽかです。ユウリはお友達なのでいいんです。大事なお友達とはくっついても問題ありません」


 問題しかねえ!!主に僕の下半身事情が!!


「……お友達だもんねー」

「はいっ!」


 返事が元気でよろしい。

 僕の下半身も元気になりそうだ。ハッハッハ! 


「……がんばろ」


 耐えろ僕。いいじゃないかラブコメしてて。超幸せです。でも辛いです。


 ――大体十分後。


 欲との戦いを制し、アジト最奥に踏み込む。


「ぱそこんです!」


 元気よく指をさすアヤメちゃんだが。


「……ぱそこんです?」


 続けて、こてりと首を傾げた。

 僕らの前に鎮座するパソコンのような何か。この部屋自体もそうだけど、この世界の技術レベルがよくわからなくなる。


 神様と出会う前は立派な「剣と魔法のファンタジー」だと思ってたんだよね、僕……。


「パソコンではありますが、広域情報収集とデータ通信に特化しているようです。アヤメ様の好きなネットサーフィンはできません」

「ええー!!? それじゃあぱそこんの意味がありません……」

「アヤメちゃんネットサーフィン好きだったんだ……」


 カワイイお姫様にしては趣味が俗的だ。

 ……たまに忘れそうになるけど、アヤメちゃんってずっと家に引きこもってたんだよね。そりゃ電子航海が好きにもなるか。


「んっ……ユウリ?」


 つい、頭を撫でてしまう。本当ならハグの一つでもしてあげたい気分だったけど、今少し僕の胆力が不足していた。


「なんでもない。画面越しじゃない素敵なもの、一緒に見ようね」


 疑問から納得に表情が移り変わる。


「はいっ。いっぱいぼうけんですっ!」


 眩しい。護りたい、この笑顔。


 ――キ、ィィン!!


「やっぱ奇襲!!!」


 シュタリ、と背後に降り立つ影。

 神様により超強化された僕の五感が察知したのだ。警戒を研ぎ澄ませておいてよかった。


「ふん、ここまで来ただけのことはあるようだな。男」


 前方に立つのは頭巾姿の女性。

 西洋文化を取り入れた和装、といった風体をしている。

 強そうな人だ……。


「奇襲はダンジョンの基本だからね」

「探索者か。ワタシは貴様らと違い暇ではない。即帰ると言うのならば見逃してやってもいいが?」

「わたしたちは悪の組織を倒しにきたんですっ!」


 ばばーん!と一歩踏み出したアヤメちゃんが胸を張る。

 僕ら、そんな目的で来たんだっけ……?


「くだらん。ままごとなら他所でやれ」

「!!」

「なんてひどいことを!!」

「なんという悪逆非道冷酷無比な邪悪でしょうか」

「そこまで!?」


 それはちょっと言い過ぎな気が……。


「むぅぅ~!!」


 あぁ、姫様が頬を膨らませてしまった。可愛い。とってもキュート。フォローは任せてくれ。


「うちのお姫様を馬鹿にするのはやめてもらえます? ままごとじゃないよ。僕らはきちんと依頼を受けてここまで来たんだ」

「ほう……」


 相手の目が鋭くなる。大方背後関係、依頼主云々を探っているのだろう。だけど残念、依頼主は神様です!想像もつかないだろうね!!


「ふん、どうでもいいか。長話をしている暇はない。今すぐ消えるつもりはないのだな?」

「無論」

「とうぜんです!!! ぜったいぜったいぜ~ったい! あなたを倒してすっきりして帰りますっ!!」

「愚かな男とガキだ。無駄死にすることを後悔するがいい……!!」


 殺気を強める教団兵に、スッと身を低くしナイフを構えた。アヤメちゃんも戦闘態勢だ。この勝負、負けられない……!!


【VS男装教団幹部/Battle BGM:Velvet Execution】

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