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カタルシス  作者: つきたておもち
第4章

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 現在、彼らと縁をつないでいるのは、タクヤの意志、でもあった。彼らからの、無理矢理、では無い。タクヤの本心だ。

 タクヤも、彼らに手を伸ばした。

 だから、この場に立っているのは、タクヤが望んで、のことだ。

 タクヤはゆっくりと大きく深呼吸をする。

 誰に言われたわけでもない。

 月島から指南されたわけでもない。

 ただ、何となく、このようにする方が良いと、そう思ったから、感じたから起こした行動だった。

 ひとつ、ふたつ。と、ゆっくりと深呼吸したあと、タクヤの中に取り込まれたという水晶玉へ意識を向け、タクヤは集中する。

「この場の、永良さんが、こうあって欲しいとするイメージを、景色を思い浮かべると良いですよ。」

 月島からのアドバイスに、タクヤは小さくうなずく。

 タクヤは月島からのアドバイス通りに、タクヤが今見ているこの景色を、緑映える気持ちの良いこの雰囲気を頭に思い描き、自分の中に存在していると感じる水晶玉へ意識を集中させてみた。

 が。

 手ごたえが、ない。

 というより、そもそもが、集中が続かない。

 気持ちの良いこの、緑映える景色。それを心に描くと、なぜか懐かしい、と感じてしまう。タクヤの知らない景色のはずなのに、なぜ懐かしい気持ちを抱くのか。そう言えば月島が、それは、その感情をタクヤが抱くのは水晶玉が懐かしがっているから、と言っていたな。などと、つらつらと要らないことを思い出したり、考えたりしてしまう。

 そもそも、集中するとは、どういうことだろう、とまで考えてしまい、

「うまく、できません。」

 タクヤは早々に、水晶玉へ集中することを諦めてしまった。

 早々に諦めてしまったタクヤへ、橘が月島の隣で呆れたように、大きなため息をついた。

 しかし、タクヤの隣に立つ月島は、

「大丈夫ですよ。」

 と、橘のような呆れたようではなく、いつもの穏やかな雰囲気だ。

 月島が思っていた、求めていたであろうことが、そのようにできずに、水晶玉へ意識を集中することを早々に諦めて止めてしまったタクヤに対して、呆れも不快の感情も月島は抱いていないことに、タクヤはほっとする。

「誰しも、最初からうまくできるはずが無いですから。コトネさんも今ではできていますが、最初は永良さんと似たような感じでしたし。」

 月島のその言を受けたタクヤが目を向けた先の橘は、そのタクヤからの視線を逸らすかのように、ふいっ、とあらぬ方向を向いた。

 橘のその態度に、

「可愛い、ですね。」

 タクヤが小さく呟き、思わず落とした言葉。

 そのタクヤに、

「永良さん。」

 月島はタクヤへ向いてタクヤの名を呼ぶと、アルカイックスマイルを浮かべ、自身の人差し指を自身のその唇に縦に重なるように置いた。

 つまりそれは、口にしてはいけない案件だ、ということだ。

 彼からのそのタクヤへの注意喚起に、タクヤは慌ててその口を閉じる。橘は、と見ると、幸いなことにタクヤのその呟きは聞こえていなかったようで、あらぬ方向を向いたままだった。

 彼女のその様子にそっと、安堵の吐息をついたタクヤへ、

「そろそろ、私の診察室へ戻りましょう。」

 月島はタクヤへ、そして橘へそう声をかける。

「でも、僕、まだよくわかっていないですし。月島さんや橘さんが期待してくれているようなことが、全くできていないです。」

 タクヤがその中に取り込んでしまった、きらきらと輝く水晶玉。

 ソレがタクヤの心の安寧に一役買っているのだと、タクヤは今は感覚的に理解できている。その、水晶玉の輝く力をコントロールしなければ、月島が言ったようにタクヤはこの先も、あの昏闇に取り込まれてしまう可能性があるのだということも。

 そして、そのコントロールする力を得ることが、月島たちに求められているのだということも。

 月島たちはタクヤがその力を得て、彼らの働きの手伝いをタクヤに求めているようだが、月島はソレを強要しない、とは言っている。タクヤがこの水晶玉の力のコントロールを得ることは、タクヤ自身が闇に呑み込まれないため、またタクヤ自身でこの緑映える心地の良い景色を維持することができるようにといった、タクヤ自身のため、ということが最優先だと言っていた。

 その月島の言葉は、タクヤにとってはプレッシャーにならず、むしろ、自分のためだといったやる気へと傾くものだった。自分自身のために、何とかしたい、と思う。自身が時々、昏い闇に呑み込まれてしまいそうになるその状況を打破したい、と願っている。それなのに、タクヤはタクヤが自身を守ることができるような力や、彼らが期待するような、またそのコントロールができる力を取得できていない。取得どころの話ではない。ソレを得るきっかけすら、つかめていない状態だ。

 けれども、

「駄目です。5分は、とっくに超過しましたから。時間です。」

 申し訳なさそうな感のタクヤへ、月島はきっぱりとそう告げると、タクヤの目蓋に彼の手を置き、強制的に閉じさせた。


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