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カタルシス  作者: つきたておもち
第2章

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「さぁ、行きましょう。永良さん。」

 月島は橘の強い言葉を浴びせられるのに慣れているのか、気にする風がない。いつもの調子のまま、橘の後ろを付く。

 タクヤも、はい、と返事をして、その月島の後を追った。

 そう言えば、と。月島の説明だと、橘は彼女の真のところの姿を今、この場で曝していることになる。月島いわく、ここではホントウの姿となるらしい。

 なら、月島は?と、タクヤは自分の前を歩く月島のその後ろ姿を見るが、彼は彼の診察室でタクヤが出逢う月島と、変化が無いように見える。

 つまり、月島は表裏の差があまり無い、ということなのだろうか。

 なら、自分はどのような姿形、雰囲気を醸し出しているのか。自分で自分を客観視できないため、わからない。

 が、タクヤをこの場で月島も橘も「永良タクヤ」と直ぐに認識したため、月島と同様にあまり変わらないのかもしれない。つまり、自分は表裏の差があまり無い、ということなのだろうか。

 タクヤがそのようなことをツラツラと考えながら、先頭から順に、橘、月島、タクヤの並びで歩くことほんの一時。

「ここです。」

 と、橘が案内した場所は、タクヤたちが今まで歩いてきた草葉より少し高く伸びている場所だった。

 橘はその草葉の間をゆっくりと慎重に、少しだけ歩みを進めると、とあるところで立ち止まり屈んだ。そして、その場所の、何かを包むかのように丸まっている草葉を丁寧に解いていく。

 と。

 橘のその行動を彼女の後ろから黙して眺めていた月島が、

「あぁ。コレ、ですね。」

 その草葉の中から姿を現したモノに、感嘆の声をあげた。

 はい、と答えながら橘が草葉の中から取り出し、その両手のひらに収めていたモノは。

「水晶、ですか?」

 タクヤが訊ねたソレは、きらきらとした輝きを持つ球状の水晶のようだった。

 ソレは、橘の片手のひらでも包み込むことができるくらいの大きさ。

 タクヤは月島の後ろから覗き込み、

「綺麗、ですね。」

 そう月島に話かける。

 透明度が高いようで、にごりが全く無く、透きとおっている。なのに、きらきらと輝いて見えるのは、何故か。

 ダイヤモンドのようにカットがされているのなら、輝いて見えるのに不思議さは無いが、この水晶のようなモノはつるりとした、球状だ。なのに、タクヤには輝いて見えた。

「これは永良さんの力の結晶ですよ。」

 月島が橘から、橘の手のひらに収まっている水晶玉を受け取り、陽に透かすように持ちながらそう言う。

「え?」

 聞き返したタクヤへ月島は振り返り、手にしている水晶玉を、どうぞ、とタクヤへ手渡すと、

「永良さんの浄化力の結晶なんです。」

 とても綺麗ですね、と微笑む。

 手渡された水晶玉のような輝くソレは、思っていた重量感はなく、タクヤが本当に手の中に収めているのかどうかわからないくらいの存在感だ。

「このような、とても透明度の高い結晶を見たのは、初めてです。」

 と感嘆する月島に、

「センセでも、初めてなんですね。」

 と、橘が屈んでいた姿勢から立ち上がり答える。

 タクヤの力の結晶、と言われても、やはりタクヤには何のことだかさっぱり理解できない。

 そもそも、この場がタクヤの心の深層だ、といった月島の発言に対しても、タクヤは変わらず疑心でいっぱいだ。

 タクヤのその疑心が解けないでいることに気づいたのか、

「センセ。」

 立ち上がり月島の隣に立つ橘が、

「永良さんは、変わらずセンセのことを、全く信用していません。なのに、『浄化』の手伝いを頼むのですか?」

 冷たい厳しい視線をタクヤに送る。そして、

「それに。」

 と、橘は上空を見上げると、

「安定感が、欠けていっています。」

 不安げな表情も浮かべた。

 しかし月島は、橘の不安げな様子を気にせず、

「大丈夫です。ソレなら、私が支えています。この場への同行は私がこの結晶を確認したかったのもありますが、この場の安定を保つことだと思っていますから。」

 いつもの爽やかな笑顔を橘に向ける。

 安定感が欠けてきている、というのは話の流れから、タクヤが月島や橘の発言や、いま、タクヤが目にしているすべてのことを疑っているから、なのだろう。そう言われても、にわかには信じられないのだから、仕方がない。だから、なんなのだ、と思う。タクヤが責められたり、また改心したりしなければならない、といった咎を向けられる筋合いは、まるっきり、ない。

 そのような思いから、タクヤは彼らのそのやり取りに入ることをせず、あの、と、

「手渡された、コレ、どうすればいいですか?」

 と、手のひらの中にある水晶玉の取り扱いについて、どうすればいいのかを月島に訊ねた。


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