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泣き声

 「ど、どうして分かったの?」自分が鳩が豆鉄砲を食らった顔をしていることも、それを見て湊が笑いを堪えていることも今の睦にはどうでもも良いという感じだった。


 「企業秘密でーす」あくまでしらを切るように湊が返事をする。


 「こっちは真面目に聞いてるの!!」


 睦が声を荒げた。まあ、それは当然だろう。こんなふざけた回答フィクションでしか見たこと無い。それなのになんでかって?おっと、それは言わない約束だぜ、ベイビー。


 「ちょっと、何ぼーっとしているのよ。質問に答えなさい!!!」


 「うん、分かったよ。明日にしよう」


 「いや、それ逆ゥ~!!!普通そこは今日でしょ!!今でしょ!!」


 「うーん、本当はそうしたいのが山々なんだけれど時間が掛かりそうだし。というわけで、お風呂に入ってきまーす。あ、エロ本は無いから安心して良いよ。むっつりな睦さんには残念だったかもしれないけれど、()()()()。」


 「あのねぇ、私をからかうのもいい加減にしなさい!!!」


 とうとうこの人を怒らせてしまった。限度を覚えないようじゃ無理か。限度はね、意識しないと。


 「はーい。大人しくしていますよっと」


 ドアを開けて、湊は部屋を出て行った。


 な、なんで私がむっつりって事になっているの…。まあ、いいわ。私が彼の秘密を暴いてやるんだから!!!おや、あそこにあるものは…。


 突如として睦の脳に勝利の方程式が湧き出て来た。思わず笑い声が溢れ出る。


 うふふ、うふふふふ、あっはっはっはっはぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 なーんて思っている誰かさんが僕の部屋をあさっている間に、僕は浴室のドアを開けた。


 野郎の風呂シーン、イイネ!!!ヒロインには無い魅力、そこにシビれる、あこがれるゥ!!!


 十数分後、女子顔負けのピチピチの肌になって脱衣所から出てきた。夕飯を作らねば…。睦は何か食べたいものがるのか聞いてみよう。こういうものは、予想するのが楽しいと個人的には思う。誰かと初めての食事をする際、相手の笑顔を見れてご飯も進み、話も進むというまさに一石三鳥というわけだ。


 最近何かと付けて一石三鳥にこだわっている気がする。偶然だよな…。

 

 まあ、そんな気楽なことを考えながら階段を上り、僕の部屋にたどり着いた。


 「あの~睦さん?何か食べたいものはございませんでしょうか、あ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!なるほど、それがあったかぁ。流石だね、ムッツリむちむちの上の睦殿」


 うん、我ながら良いネーミングセンスだとは思わんかね、ワトソン君?


 「だれがムッツリじゃい!!!ていうかあなたは私にこんなものを見られて恥ずかしくないの!?」


 睦がそう言って僕に突き出したのは、日記だった。僕が死ぬ前までに毎日書いていたものだ。勿論、今日も書くつもりだった。


 「勿論恥ずかしいけど、これからもっと恥ずかしいことをするからどうって事無いでしょ」


 「は、恥ずかしいこと?」


 「そう、裸の付き合い」


 「はぁ、ばっかじゃ無いの!?」思わず声を荒げる。


 パシッ 音がした。


 それはビンタの音では無かった。というか、湊がビンタを睦から食らうことは未来永劫無いだろう。なぜなら、おっと、誰か来たようだ。話を元に戻そう。


 あ


 睦が赤面している瞬間を見逃さずに湊は自分の日記を手から奪い取った。


 「読んだ?」間髪入れずに質問を彼女に繰り出した。


 「見たわよ。あなたの愚かな考えをまざまざと」


 「そうか、それは良かった。僕は今も考えは変わらない。ただし、君がその目に宿している”生きる”という強い気持ち。それがどうも心に引っ付いて取れなくなっただけだから。」


 「そう、分かったわ。そういえば、さっき何かを言おうとしてなかったかしら?邪魔したのなら謝るは」


 「そうそう、晩ご飯の話だよ。まだ日は落ちてないけど、()()()()何が起こるか分からないからね。注文は?」


 「アクアパッツァが、食べたいわ」


 彼女は一呼吸置いてそのように告げた。これすらも知っているのかという風に。


 「よく分かりました。ムッツリむちむちの上の睦殿。そのようにお取り計らいいたします」


 だから、私は────と言いかけた時にまた、時が止まった。


 「ねぇ、湊。その子誰?」その声が湊にとってはとても恐ろしかった。いままでは。


 「ああ、彼女は僕のただの知り合い(運命の人)だね。学校でなんか意気投合しちゃって。ほんと、偶然ってすごいね。母さん、心配掛けてごめんね。ただ、何があっても最後にはきちんと父さんと母さんの元に戻ってくる。これは、()()に守るよ。約束する」


 続いて、こう言った。


 「それじゃあ、行こうか、睦さん。今日は歓迎会だ。母さんは家の留守番をお願い。これからも心配はさせるかもしれないけど、それ以上の親孝行をするつもりだよ。まあ、この料理は今までのお返しの始まりと思ってくれてかまわないよ。いつか全てを話すその時まで、どうか待ってて欲しい。それじゃあ、行ってきます、母さん」


 ぽかんとした顔で湊の母は、話を聞いていた。そして、口を開いた。 


 「う、うん。行ってらっしゃい。あ、あの、あなたは待ってちょうだい。少し話したいことがあるの」


 「じゃあ、僕は先に玄関で待っているよ」そう言って湊はいつにない神妙な面持ちで階段を降りていった。


 「睦さんもどうか湊をよろしくお願いします。あんな顔をした湊を見たのは久しぶりだから」そう言って、床にうずくまった。


 睦は後ろ髪を引かれる思いだったが、湊に着いていくことにした。


 湊は母の泣き声を聞こえないふりをして家を出た。


 絶対に父さんと母さんに笑顔を取り戻させる。今までのことは全て自分のせいだ。それはもう痛いほど分かっている。でも、今は一人じゃ無い。睦との出会いが僅かだが僕の歯車を動かしてくれたのだ。


 うーん、僕の完敗だな。ただし、今はこの思いはまだ心の中にしまっておこう。


 アクアパッツァ、か?どうなることやら…。






  


 

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