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彼女の秘密と始まりの合図

 拳が、彼女の腹に遠慮無く叩き込まれた。


 かはっ


 苦しそうな声が、戦いの勝敗を決定づけた。


 「私の負け、ね。」


 そう言って、彼女は崩れ落ちた。校庭に舞い上がった砂埃はもう、先程までの面影は無かった。


 



 

 「ここはどこなの?」私,宮本葵は見知らぬベッドの上で目が覚めた。起き上がって周りを見ると、横にお茶のペットボトルが置かれていた。


 「僕の家だよ。あ、貞操の心配は大丈夫。なんでかって?僕、童貞だから。おまけに女性を見ると頭痛がする呪い持ちだから」


 先程戦った少年の姿がそこにはある。ふーん、彼、童貞なんだ。って違う!!!


 「急にそんな事言わないでよ!!!」思わず一息つこうとして飲んだお茶を盛大に吹き出してしまった。ベッドに染みていくが彼は気にするそぶりも見せなかった。


 「お、良かった良かった。普段の君はこんな感じなんだね」そう言って、笑った。


 私が、分からないと言った表情をすると何故か ふふん、と少年は得意げに鼻を鳴らした。これが、先程まで戦っていた相手なのか?信じられない。


 そんな風に思っていると、彼が口を開いた。


 「装備は念のため預かっといたよ。変なことされても困るしね。あ、服が土で汚れていると思うけど、それは気にしなくて良いよ。ベッドの上にもう一枚シーツを掛けておいたんだ。女性の服を脱がせるのは恐れ多いからね。手当をするにしても君の意識が戻ってからの方が良いと思ったんだ。現に君、怪我が治っているだろうし。」


 見破られていた。それは仕方が無い。今日の戦い振りを見れば誰だって分かるだろう。私は現に彼に負けたのだ。ここで反抗したとしても私に得することは一つもない。ここはおとなしく従うとしましょうか。


 「早速本題に入らせてもらうわ。あなた、あたしと付き合いたいってほんとなの?」恐る恐る彼に質問をした。


 後、ほんの少しだけ期待の混じった目で彼を見つめた。


 「半分正解、半分外れかな」彼はそう言った。彼は私の顔を見ながらそのまま話を続ける。


 「実を言うと今すぐにっていう訳じゃ無い。まず、僕は君とお話がしたかったんだ、これが一つ目。()()()()()()()()()()()という意味でね。二つ目は、君が戦いの中で見せるその眼に興味を持ったからだ。君のその目には()()()()という強い意思が表れていた。本当ならば、君の事を完膚無きまでに倒してそのまま自殺をしようと思っていた。でも、あんな眼をされてしまえばね…。」


 「じゃあ、あのナレーションは一体何だったのよ!?プロポーズ代わりの一発をお見舞いとかなんちゃらって…。」


 「あ、聞こえてた?うん、やっぱり君は凄いや。僕よりもよっぽど素敵な人に出会えると思うよ」


 はぐらかした!!!


 でもね────と彼は何か含みのあるような言葉を続けようとしたが言いどよんだ。


 いったん思考を落ち着かせようと、この一瞬に私は頭の中で彼に対する感想を述べた。


 屈託の無い笑顔でそんな事言われても…。やっぱりこの人はどこかしらが壊れているのかも────


 「うん、そうだよ」


 ひえっ! 汗がだらだらと頬を伝ってくる。


 心を読まれた!!!


 「大丈夫だよ、僕は別に他人に危害を加えようって訳じゃ無いから」ゆっくりと落ち着かせるように彼は言った。

 「僕はただ自分自身を最も輝かせられる舞台に向けて突っ走っているだけの人、それだけだよ。あーあ、こんな美少女さんに出会えたなんて普通は嬉しいんだろうけど、僕は女の人を見ていると呪いのせいで頭痛がするんだ。それもとびっきりのやつ。でも、それ以上に僕は嬉しかったんだ。この世界で、心の底から生きたいって思っている人を見ることが出来たんだから。本来なら、感動してこのまま死にに行くというところだけど止めた。僕は君の人生を見届けたいと思ったんだ。僕は自分に掛けられた呪いに絶望した。自殺未遂を繰り返した。それを君が止めてしまったんだ。三度目の正直もお手上げだよ、本当に。だから、僕はこの呪いが解けるまでの間、君を好きになるようにする。今まで閉じこもっていた僕の殻を破ったのは君だ。これはほんのちょっとの恩返し、そして僕のエゴだ。何があっても君を守るし、支える。そして最後に君は、僕をたぶらかした責任を結婚という名の呪いで取ってもらうんだからね!!!」


 それ普通女の子が言う台詞なのでは…?はあ、本当に呆れた。やっぱりにこの名も知らぬ少年に勝てる未来が見えない。もしかしたら、彼にも()()()()を話すときが来るのだろうか。お父さん、安心してください。この人なら、私の事を分かってくれるはず…。少なくとも、彼は私の目を見てきちんとそう言ったのだから。


 突然、しんみりとした思いが渦巻いた私の心に雰囲気をぶち壊す言葉が入り込み、私を恐怖へと誘った。


 「へぇ~。お父さんって面白い人だったんだね。後、君は僕と同い年なんだってね。なるほど、なるほど。君がすんなりこの学校には入れたのも意味があるね。だとしたら何故()()()()()()()()()()()()()()()()。ああ、保健室の先生が今日は一人お休みって言っていたっけ。ふーん、そうなんだ。イケナイ子だね」ニヤリと彼が笑った。頭痛なんか屁じゃ無いと言わんばかりの顔で!!!


 「神よ、お父さん、助けてくださいっっ!!!どうかこの地獄から抜け出す方法を私にお教えくださいーっっっ!!!」悲痛な叫び声がする。そんな事もお構いなしに湊は明るい声で言い放った。


 「無理だよ、これは僕の君に対してのささやかな仕返しだもの。()()()()()()()()()()()()()()。僕を生かした罪、重いからな~~!!!」


 珍しく明るい声が、湊の部屋中に木霊した。


 P.S


 「そういえば名前聞いてなかったね。僕の名前は八代湊。君の名前は?」


 「知っているくせに。いいわ、教えてあげる。私の名は宮本()よ。葵は偽名よ」


 なるほどね、と彼はつぶやいた。私の秘密を打ち明けたのだ。解けるものなら解いてみな────


 「君は、悪魔の子だね」


 その時、彼女の時は止まった(動き始めた)


 


 


 

これからの湊と葵(睦)の関係性を見守っていただけると幸いです。


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