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仕組まれた出会い

 ヴォエエエエエエエッ!!!


 入学式が終わると同時に、僕は学校生活終了のスタートを切った。


 校長先生のありがたい話のおかげでなんとか今まで耐えることが出来ていた僕だったが、もう限界である。


 先生に事情を話し、列を為して教室へと戻る生徒達の波を掻き分けて体育館のトイレへと駆け込んだ。幸い、誰にも被害が及ぶことは無かった。ここだけの話、言いたいことを伝えておこうと思う。




 お母さんごめんなさい。朝ご飯食べなきゃ良かった。





 数分後、担任となる先生らしき人から事情を聞いた保健室の先生が、慌てて僕に駆け寄ってきて声をかけた。

「あなた、体調悪いのに学校に来たの!?家で休んでいなさい!!!」


 いえ、先生。いつもこうなので気にしないでください...。


 先生に連れられ保健室に行くも、事情を説明できない為うまくごまかすのに苦労をした。


 え、何だって。入学式前の説明会でクラスメイトとなる人に会わなかった、だと。


 僕を甘く見すぎだッ!!!それぐらいの人ならば頭痛で、なんとかな、る…。おや、おかしいな。思い出しただけで指先の震えが…。


 「と、とにかく大丈夫です。僕は教室に戻ります。先生も心配かけてすいませんでした。これからもお世話になるかもしれませんがその時はよろしくお願いします」


 そう言って、僕は足早に保健室を後にした。早く教室へ向かわなければ…。


 

 突然、窓の格子に伸びた影がヌルリと僕を包み込んで誘惑してきた。ああ出来るならば何時までもこの影の中でぬくぬくとしていたい。その折、少し風に当たろうと窓を開けた。風に当たって落ち着いたせいか、少しずつ思考がまとまってきた。主に不安についてだが。頭の奥が恐怖で冷えてゆく。

 自殺が出来ないのもこの呪いのせいなのか?学校に行こうと思ったことも、親のために、他人のために生きようと思った事も全部コイツのせい何じゃないのか...。呪いというか災いをもたらす物、穢れだと陰陽道を学んでから薄々思う。最近、どうにも()()()()()()()()()。自分の思考が他人に委ねられているようでやっぱりコレはただの呪いじゃ無──────


 ぞぶり、と音がした。視線を後ろに移すと、見覚えのある女性が僕の腹を貫いた。


 ああ、嫌だな。何でいつも僕は思い通りに事が進まないのだろうか。いい加減俺を苦しめるのならさっさと早く終わらせてくれ!!!


 「私たちの為に死んでください」冷徹無比な声が五臓六腑に染み渡る。血がだららと流れ、廊下の上に悪趣味な川と水玉模様が浮かび上がった。


 「何でいつもいつも教会(あなたたち)()の邪魔をするんだ!!!俺は別にお前らの宗教に入ったつもりは無いぞ!!!」


 「そんなの私たちの領域内(テリトリー)でそんな事をさせるはずが無いじゃ無いですか?」そう言いながら彼女は手刀を俺の腹から抜き取った。



 ひゅーひゅーと声が声にならない。それよりも困惑で頭がいっぱいだった。


 は?コイツは何を言っているんだ。意味が分からない!!何時どこの誰がお前らの物になったんだよっっ、ここはバチカンでもあるまいし!!!おまけに本来宗教の有るべき姿は人に強制させる物では無く、己の範疇で心の支えの支柱にするというような物ではないのか。ましてやここは日本だ。文化や環境に左右されるにしても他国に比べれば影響というのは比較的少ない。確かに過去キリスト教に帰依した陰陽師がいたことは聞いたことがあるが、今回はあまり関係してこないように感じている。


 もう一度、女の方に視線を戻し、過去の出来事を思い出す。『あなたは包囲されています』そう俺に言い放った。その場では適当に流したが、やはりきな臭かった。


 包囲されているというのはという意味なのか予想をしてみる。日本中にある教会の中から、近隣の教会を選択し術者を送る。そのように考えるのが妥当だろう。あの対決から逃げた後、誰も追いかけてこなかったのが推測をより決定づけている。領域テリトリーと言った。推測がその時、確信へと進化した。 

 

 送られてきた人物は宗派が分からないので特定することは難しそうだが、自殺に対しては並々ならぬ思いを抱いている事は確かだ。宗教が宗教だし。


 おまけにただ一人の高校生の為にこんな大それた事をするはずが無い。もっと何か別の理由があるような…。俺の肩書きは今の所高校生で、法師陰陽師だ。正規な陰陽師で無いにしても、聖職者が取り締まる役に配属されるのは可笑しい。つまり、日本政府の工作である可能性は薄まったわけだ。


 「俺の何が狙いなんだ!!!答えろ!!!」無理矢理声を張り上げる。

 負けるにしてもなにか情報を掴まなければ…。次があるかどうかは分からないが、それくらいのことはしておかなければ…。まだ、死ねない…。


 彼女が口を開いた。

 「嫌いなのよ、自殺に希望を見いだすなんて」




 ああ、そうか。コイツらはどこまでも俺の事を一面性でしか見ていないんだ。どんな理由があってこんな事をしているのか、そんな事は関係ないのか。俺は別に他人に自殺を唆したりなどしてはいない。思想は他の人は違っていたとしても、自殺をする以外は基本的に常識的に暮らしてきたはずだ。生きるのが苦しかったら死に希望を見いだすほかに何があるって言うんだ!!!それを再認識した途端、痛みが体から消え失せた。


 イライラする。何で()がそんな理由でお前らに殺されなくちゃならないんだ!!!同じ事の繰り返しになっても良い、その分何度でも違う選択肢をとり続けてやる。


 死ぬ直前だからなのか、陰気が体を蝕んでいくのが今まで以上にはっきりと分かった。俺の受けた呪詛は俺を決して幸せにはしてくれない。それでも、戦う力は与えてもらった。それだけで十分なんだ。あの子が俺に何かを隠していようが知ったこっちゃねぇ!!!いまはここから生きて帰る!!!


 「けがを治せ、救急如律令!!!」


 今、俺の体を駆け巡るのは怒りだ。怒りは破滅を導くのは経験済みだ。だが今は、逆にそれを利用する。貫かれた腹に治癒符を張り、そこをめがけて呪力を注ぎこむ。


 今の俺は絶対に死なないと言う自信がなぜか湧き上がって来る。怒れ、もっと怒れ。もし、俺の望む生き方は出来なくても、誰かに一つの人生のあり方を教えてあげられたらそれで良いのだ。


 「良いのですか。私は今あなたを殺せる位置に居るのですよ?」


 それはそうだ。ここで治癒符を張ったところでまた攻撃をされれば終わりだ。っていうか、教会の面々の一つ一つの攻撃の威力がバカにならないのですが・・・?なんてな!!!


 とりあえず攻撃をバックステップで躱し、一瞬の間に床にこぼれた血を数枚の呪符にしみこませ、空間に留めた。オイオイ、何バカなことをやってんの、速く逃げろと思うかもしれませんがまあ見てなって・・・。キャッチボールでもボールから目を背けたら取れない。それと同じ理屈。まずは相手を驚かせる。傷を負うことは、今の俺には意味が無いと言うことを相手に示す。相手の間合いで回復することには意味があったんだな、コレが。


 「なぜ、血を?」


 「ばーか、教えてやんねーよ」


 軽口を叩けるぐらいには回復できたみたいだ。もう一度相手を眼前に見据え、呪符を2枚ほど構える。


 「この燃えたぎる思いのこもる血、すなわち火。火気は土気を生ず。火生土!!!」


 血を火と置き換え、土を生ずる。呪符に血を付けて火行符を即席で作り上げたのだ。


 土で壁を作り、数秒の間を作る。先程、一息つく為に開けていた窓へと迷わず飛び込み、そこから外へと出た。なるべく学校と生徒に被害を出さずに戦うために俺は校庭へと走り出した。



 




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