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反省

 飛び降りた瞬間、僕の頭の中で警報がけたたましく鳴り響いた。

痛い──── 言葉にすれば単純だが、それはどれほどのものなのだろうか。


女性と相対すると、どうしてもこのようになってしまう。これは過去の出来事を忘れないためなのか、あるいは彼をこれ以上苦しませないための最大限の呪い側の譲歩なのか────

思春期の男子が人前で呪いに耐えきれず一丁前に吐くという選択肢をとれる方が難しいと思う。否、これほどまでの頭痛で()()()()()()()()()()()というべきか。呪いが譲歩などするはずが無い。ただ、彼の付き合いと根性だけで為しているという訳で無理矢理にもほどがある。しかし、これまでの生活で吐きまくっている少年に女性がやってくるだろうか。人付き合いを好むかどうかはさておき、最低限の女性との関係性でそうなっていては、この世を生きることも難しいだろう。


だが、今はそれどころでは無い。

落ちるまでにはもう時間が無い。

高さ100mは優に超えている駅ビルなのだ。それでも時間は残酷で一瞬で着地態勢に入るしか生き残る未来は無い。呪符を取り出し、呪力を纏わせ、願う。

衝撃を防げ────

すると、呪符が光り輝き全身を覆う。

例え呪力を込めたとしても、完全に防ぎきれるかどうかは分からない。

特に膝への負担がバカにならない。もし膝をけがしてしまえば終わりだ。

いいや、心配は後回しだ。とりあえず降りよう。

丹田と尻にありったけの力を込め、足の指を開き、拳を握る。

そして尻に少し重心を移す。

もう足下は見ない。




ドンッッッ!!!




深夜でもこれほどの振動を経験してしまえば、周辺を歩いている酔っ払いも酔いが覚めるレベルだ。


や、やった!!!成功した。

それにしても、どこかで見たようなポーズになっていたので慌てて姿勢を整える。幸い周りに人が居なかったのか、好奇な視線をさらしてくるモノやスマホカメラに怯えなくても良かったようだ。


動きを止めてはいけない────

このまま、夜の町へ思いっきり駆けていく。

思考を止めてはいけない────

それは先程から意識していることだ。今の状態では、情報も少なすぎる上に装備も心許ない。


それでも少し休みを体が欲していた。


湊はそれに堪えきれず、一度立ち止まって先程の駅ビルを一瞥した。

どうして自分はこの場所を選んだのだろうか?

飛び降りをする上での候補は山、海(崖)、ビルがあった。

ビルを選んだのはたまたまだ。それでは、たまたまで死ぬのは良いのかという意見があるかもしれないがその意見はごもっともである。

もし自殺スポットとして一度有名にさえなってしまえば、この町にどのような影響を及ばすかも分からない。龍脈を狂わせて、都市崩壊だって怒る可能性だって無いとは言い切れない。

死という衝動や、自殺が出来無かった憤りから、自分の意見ばかり突き通して周りをよく見ようとしていなかった。正常な判断が全くといって良いほど出来ていなかった。誰一人迷惑をかけたくないとほざいておきながらこの体たらく。大馬鹿者にもほどがある。

これは素直に反省しなければならない。



自殺も立派な生き方だと思う。しかし、それは彼の今までの経験の中で構築された価値観だ。それを自分の全てとするには、今の彼にとってはいささか早すぎる。それは、もう少し後になってからでも良いのかもしれない。


さあ、また動き始めるときだ。どうなるのかはまだ分からない。

教会が目を付けたのかさえ分からない。


もう町は静まりかえっていた。何者かが追ってくる気配も無い。


「明日のことは、明日考えよう」


そう言い聞かせるように何度も呟き、湊は家路についたのだった。


その様子を見たとある残業帰りのサラリーマンによると、とても年相応とは思えないようなひどく憔悴した様子だったとさ。







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