1. 怪盗フィアット
今日は日曜日。世間はお休みムードで包まれている。そんな中、私(桐山信夫)はとあるビルを警備している。なぜかって?それは…
「よいか、皆の者。予告時間まで5分を切った。気を引き締めろよ。」
警備責任者であり私の上司である鬼川徹警部が現場の空気を引き締めた。そう、今日は世間を騒がしている怪盗フィアットの犯行予告日なのだ。今回、私と鬼川警部が担当となり、現場へやってきた。私にはこれまで数多くの盗賊を逮捕してきた経験がある。その経験を活かし、ビルの警備を完璧に行っている。盗人が入り込む余地などないであろう。
「さあ、来れるものなら来てみろ!」
そう自信満々に叫んだ瞬間、フッと照明が消えた。皆に緊張がはしる。
「落ち着け。各自持ち場を離れるな。」
警部の声が響く。と、同時に
「こんばんは。予告した品はいただきました。ではごきげんよう。」
と、妙な囁きが聞こえた。ハッと驚いて振り向いた瞬間、照明が復旧したものの、そこに声の主はいなかった。
「警部、妙な声が聞こえました。予告の品は無事ですか。」
そう言いながら目を向けた先のショーケースには……何もなかった。
「やられたぁ!今すぐ非常線を張れ!すぐにだ!」
警部が叫んだ。私は茫然としていた。万全な警備を行っていたはずだ。しかしどこからともなく現れ、いや、現れたことにも気づけなかった。一体怪盗フィアットとは何者なのか。目の前で行われた犯行に一同は立ち尽くすしかなかった。
どうも、怪盗が好きな作者です。時々更新していこうと思っているので興味をもっていただけたらぜひ続きもご覧ください。