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♡たゆんたゆんハイファンタジー小説♡

人狼族のふたりの子ども~お菓子はハイポーション~初めての……。

作者: すみ いちろ


 ドゴォォォォォォォォン……!!



「ひぇ……!!」



 赤い稲光。


 落雷が、すぐ近くの鬼族(オーガ)の村に落ちた。


 

 僕ら人狼族には言い伝えがある。


 

 赤い稲妻は炎の神ファイガ様で、魔大剣フーコ様を手に大地の魔物を突き刺すのだと。



「ひえぇ!!ショーゴ!?」



「大丈夫だよ。アカネ」


 

 僕らは子供だけど近くの村を守っていた。


 僕ら人狼族が、人間の村を守るのが、昔からの(おきて)だ。

 

 けど、村の人たちは突然現れた黒いフードの男に一瞬で(さらわ)われてしまった。


 僕とアカネは、黒フードの男を追っていたんだけど、途中で不死(ゾンビ)人狼(ウルフォーモ)に襲われて、この山小屋まで逃げて来た。


 傷の深いアカネを背負って……。



「ほら。怪我の治る魔法のお菓子だよ?」



「うん!ありがと!ショーゴ」


 

 僕に抱きついて離れないアカネ。


 アカネは、回復薬(ポーション)と呼ばれる人狼族秘伝のお菓子…いや、非常食を口一杯に頬張り、僕を見つめて無心に食べている。


 

「アカネ。もう治って来たよ?ほら!ショーゴのおかげだね」



「良かった……。けど、また奴らが襲ってくるかもしれない」



「うん……。でも、あの不死身の狼ってご先祖様でしょ?」



「そうだけど……」



 ここら一帯を彷徨(さまよ)うのは僕ら人狼族の成れの果て。


 ご先祖様の(シカバネ)


 けど、流石に強い。


 逃げるのが、やっとだった。




「ロアナールの更に東。王都は、婚礼の儀式に大人たちが借り出されてる。村人たちは僕らだけで探さないと……」



「うん。でも、アカネ…もう大人だもん」



「え……?」



 アカネは、もうすぐ10歳。


 けれど、人狼族は人間より強いから、早く大人になる。


 見た目は子供でも身体は大人だ。


 

「アカネは、まだ子供だろ?成人の儀式を済ませてないじゃないか」


 

「ん~ん…。もう子供じゃないよ。ちゅう…して?ショーゴ」



「ちゅ…う?な…っっ!?」



 人狼族の風習で……。


 僕も、もうすぐ10歳になるんだけど、成人の儀式は、まだ済ませてない。


 理由は……。恥ずかしいから。出来るはずない……。


 僕は、アカネより早く生まれただけで、アカネの兄貴みたいにして来た。


 僕とアカネ、血は繋がってないけれど……。


 まさか、アカネから成人の儀式を申し込まれるなんて、僕も思わなかった……。



 こんな山小屋で、雷だって鳴ってるのに……。ふたりきりで……。



「あ、アカネ……」



「なぁに?ショーゴ?」



「ちゅう…って……」



「分かんないよ……」




 ドゴォォォォォォォォン……!!




「きゃっ!?」



「うっ!?」



 突然の雷に、僕もアカネも、びっくりした。


 僕とアカネ、お互い、ぎゅっとくっついていた。


 僕は、アカネより年上だから、アカネを守らなきゃ……。


 

 僕とアカネの顔が、くっつく……。



「ショーゴ…。ちゅう…して……」



 目を閉じて震えているアカネ……。


 僕も、震えている。



「ちゅう…するね。アカネ……」



「うん……」



 山小屋で、ふたり。僕とアカネは、ちゅう…をした。



 ぴたっと、くっついて……。


 何かが、ムズムズした……。



 アカネの何かも、ムズムズしてる……。


 

 僕とアカネは、狼でも大人でもない、何かになろうとしていた……。






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― 新着の感想 ―
[一言] (*´Д`*)あれ?これですよね?と思い、読み進めたら、最後でありましたね!! 長編完結して抜け殻モードに落ちてから、久々にちょっと荒ぶった感想書いてる感じがします! こんな感じを詩でい…
[良い点] とあるところで「なにか書く」的なことを目にしていたので、もしかしたら今日連載の何かがあがるのかなと思ったら…まさかの短編でしたね~✨ お~ほぉ、マナさんたちの世界の片隅のお話、みたいな感…
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