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エッセイごった煮

子どもが救急車で運ばれたときの話 ~スマホの功罪について考えたこと。

作者: 鶴舞麟太郎

 12月某日。その日、私は出張で研修を行っておりました。


 16時半過ぎ、研修を終えて、バックから完全マナーモードにしてあったスマホを取り出すと、着信が32件。

 普段は1週間に1回掛かってくるかどうかの電話が、ほんの数時間の間に32件です。これは尋常なことではありません。


 焦って発信元を確認しようと思った矢先、本日33件目の着信がありました。

 妻からです。妻は半泣きでした。内容を聞くと、『子どもが学校で倒れ、救急車で運ばれた』とのこと。


「きっと大丈夫だから」

「すぐ向かうから」


 しゃくり上げる妻に掛ける言葉はこれしかありませんでした。


 急いで研修先を跳びだし、駅に向かって走りつつ、職場には「子どもが倒れたので直帰する」と伝えます。すると、どうやら職場にも、妻から電話が入っていたようで、走りながらでも用件が伝わったのは助かりました。


 駅に着くと、ちょうど特急が入線してきたところでしたので、走って飛び乗りました。

 

 動き出すとすぐに妻から電話が入りました。デッキに出、震える手で電話を取ると……


「さっき会えたよ! 元気だった! 最初は意識が無かったらしいけど、救急車の中で意識が戻ったみたい。これから検査を行うけど、お医者さんは多分大事はなさそうだって!」


 思わず、ふーっと長い息が口から出ました。張りつめていた気が、一気に緩んでいきました。


 それにしても、よっぽど慌てていたのでしょう。ここで初めて運ばれた病院名を知ったのです。

 イメージどおりだったので問題はありませんでしたが、別路線にある病院や、特急通過駅の病院に運ばれていたら、一体どうなっていたことか……。人間焦ると駄目ですね。


 そして、駅からタクシー10分。着いた救急病院で、点滴を受けながらスマホゲームに興じる子どもの姿を見て、完全に安心することができたのでした。

※ちなみに、子どもは、翌日退院しました。




 で、本題はここからです。完全に動転していた妻はともかく、子どもが通う学校の職員や、職場の人間は、なぜ、私のスマホ(・・・)何度も(・・・)電話を入れたのでしょうか。



 あたりまえですが、電話をしてきたことが問題なのではありません。


 電話をくださったことは、ありがたく思っていますが、何度かけても繋がらないスマホに、学校も、職場も(※そして妻も)電話を掛け続けたことについて問いたいのです。



 例えば、学校の職員なら、教員間で授業中にスマホに電話を掛けても、取れないことはわかっているはずです。仕事中に私用電話に出られないのは、私も同じだって、何で、わからないんでしょうか。

 まあ、試しに1回掛けてみるっていうのはわかります。が、何で、まず職場に掛けてみないのでしょうか。

 職場に掛けて「出張」と言われたから、スマホに掛けた。これもまあわかります。ただ、このような一大事です。つながらなかったら困るから、あらかじめ出張先を確認しませんか?(※ただ、個人情報保護のため教えてもらえなかった可能性はあります。別の危険性があるとは言え、世知辛い世の中になったものです)



 私の職場もです。私は出張申請を出してありますから、私がどこで何をしているか知っているはずです。つまり、その時間に私用電話に出られるわけがないことは、職場の人間は、把握している。少なくとも、ちょっと調べればわかることなんです。なのに、研修を行っている施設から呼び出されることは、一切ありませんでした。スマホには何回も電話が入っているのに、です。

「時間の余裕がなかったのでは?」と、お考えの方もいらっしゃるかもしれません。残念ながら、それはあり得ません。

 なぜなら、職場から最初の電話があったのは、研修終了の約45分前です。流石に45分もあって、研修先につながらなかったとは考えられません。



 こんなことをつらつらと書き連ねてきましたが、私は、今回のことで、学校を責める気は毛頭ありません。逆に感謝しています。

 なぜなら、素早く救急車を呼んでくださいましたし、連絡についても、複数回線でおこなっていただいたおかげで、私に情報が入る約1時間前、事態発生の約15分後には、妻とは連絡がついていたからです。


 まあ、大したことがなかったから、こんなことを言っていられるのかもしれません。もし、これが生死に関わるような大事だったとしたら、こんな心持ちでいられるかどうか……。






 今回のことで、みなさんにも覚えておいてほしいことがあります。

 それは「何でも『携帯やスマホに連絡すれば良い』わけではない」ということです。


 確かに、携帯・スマホは、持ってさえいれば、どこにいても誰にでも連絡ができる便利なツールです。

 しかし、私たちのように、仕事中は通話等ができない人もいます。私物スマホはロッカーに入れることが義務づけられている会社だってあると聞きます。当然、そんな状態ならSNSやメールだって確認することはできません。


 いつでもいい話題なら、履歴が残りますから、携帯・スマホへの連絡は便利です。しかし、本当に緊急の話題に関しては、携帯・スマホだからといって万能ではありません。敷居が高く感じたとしても、勤務先や出先に直接連絡をとった方が良いケースだってあるのです。


 私の体験した事例からもわかるとおり、重要な案件が発生したとき、携帯・スマホのみに頼ることは、大変危険です。

 今後、とんでもない失敗をしないためにも、ぜひ念頭に置いておいてほしい。そう切に願います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 我が子の通っていた保育園は、連絡先は必ず固定電話でした。東日本大震災の時に保護者の携帯やスマホに連絡しても繋がらず役に立たなかったからだそうです。 このお話を拝見して、意味あることだったん…
[良い点] 確かに!携帯を携帯しないタイプの人はそもそも携帯電話会社や学校に教えなければ連絡早そうですよね! 同僚さんだって携帯電話知らなければ焦って上司に相談するだろうし。
[気になる点] 何度もすみません。 職場の誰(役職・立場)が奥様や学校からの一報を受けて、職場の誰(役職・立場)が繋がらない鶴舞さんの携帯電話に誰が何回連絡を入れて下さっていたのか本文やレスからはわ…
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