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撃発

---どうする?


なんか当たり前のように中空に立って食事している鹿に対して、どうアクションを起こしたらいいか迷った。


距離的にはM1100にスラッグというセッティングで十分ヤれる。今の位置どりなら鹿の間に遮る物はなく、とりあえず撃てば獲れる可能性は高い。ただ、斜め上への撃ち上げな上に、鹿の体の向こう側は木の葉が生い茂っていてバックストップが見えない。


 その向こうに人家があったり人間がいる事は考えにくいとは言え、銃を扱うハンターとして獲物の後ろが確認できないのは気持ち悪い。とりあえず、鹿に気取られ無いように手近な木の裏に隠れることにした。


 じわじわと動いて隠れた上で、もう一度鹿とその周囲を観察する。やはり鹿は何もない空中に立っている。いくらなんでも理不尽なくらい意味不明だ。周りをよく観察してもほかに鹿はいないように見える。この世界での生態はどうかわからないが、あのくらいの雄鹿の成獣となると単独行動の場合が多い。


 肉質的には雌の方が美味しいが、今のシチュエーションなら警戒心が強い上に群れで行動する雌鹿じゃなくて良かった。比較的アプローチしやすい相手と言う訳だ。


「どうすっかな・・・」


 このまま撃ちたい気持ちと、安全確認を十分に行った上でないとまずいというハンター倫理が脳内で鬩ぎ合う。


「・・・仕方ない、近づいてみるか」


 身を低くし、最大限の注意を払って木の裏から木の裏へ移動して鹿の後ろに位置どりする。気取られないように移動した関係で、現状そこから鹿まで約70mほどの距離となった。ここからはほぼしゃがんだ状態で鹿に近づいていく。音を立てたら苦労が水の泡だ。落枝や落葉をそっと手でどかし、音の原因になるものを排除しながら足を進める。


 鹿まであと50m・・・40m・・・


 ---と、ここでピクッっと鹿が耳を動かし頭を上げた。


 マズイな・・・

しきりに耳を動かして周りを探りだした鹿に対し、気配を殺して止まるしか無い。もう一度餌を食べ始めてくれればいいが、そうでなければ鹿の次の行動は逃げの一手だろう。空飛ばれちゃどうしようもないし。

 

 こうなると選択肢は走られる前に撃つか、静かに待つかだ。幸い、この角度から見ると鹿の向こう側は木が生えているだけの緩やかな傾斜になっていた。これならいつでも発砲可能だ。


 そうこうしている内に、周りを気にしていた鹿がとうとうアクションを起こした---


 足元を確認するように頭を下げて、数メートルの高さからひょいっと地面に飛び降りたのだ。


 これはもう撃つしかない。今逃したら次の獲物に会える保証もないし。


 膝射の姿勢で銃を構え12GAのスラッグを射掛ける。判断から射撃までの動作は、鹿が地面にむけて飛び降り、着地するまでの瞬間とほぼ同時だった。


 森の静寂の中にM1100の聴き慣れた咆哮が響き渡り、着地した獲物が全力で走り出す。銃を構えたままドットサイトの赤い点で鹿を追い、走る鹿の首の前あたりに見越しを取って更に2発射掛ける。


“中った”


 鹿は止まらず走り逃げて行ったが、確かに仕留めた感触があった。あまり遠くに行かずに倒れてくれればいいんだけど。


 撃ったからにはとにかくダッシュで鹿がいた場所へ行き周囲を確認する。


「お、あったあった。弾食ってるな」


 鹿がいた辺りの地面にそれなりの量の血と体毛が飛び散っていた。この出血量ならほぼ確実に致命傷だろう。すぐに装填できるように弾を一発手に握り締め、痕跡を見失わないよう早足で探索する。

 

 幸いこの森の中は今のところ緩やかで歩きやすい地形をしている。これなら撃たれて力尽きた獲物が崖下に落ちたりして回収不可能な場所へ行ってしまう可能性は低そうだ。


 ボタボタと垂れている血の跡を追い、10分ほど経過した頃---


ガサガサ・・・ガサガサ・・・と、何か大きな物が森の中で立てる音が聞こえてきた。

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