村へ
「やあ、ハル!迎えにきたよ」
ドアを開けると立っていたのはターミン・・・と、その後ろに隠れるようにサンバーも来ていた。
「おはよう。今日はよろしく」
「ああ、別に緊張しなくて大丈夫だよ。獲って食おうって会じゃないからね!」
そう言って爽やかに笑うターミンだが、冗談でもちょっと怖い。
「じゃあちょっと他の2人呼んでくるから待ってて」
「ああ、その前にコレを」
そう言ってターミンが差し出してきたのは例の言葉がわかるようになる便利アイテムだった。ちゃんと2つ用意してある。
「ありがとう。・・・バベルの塔って知ってる?」
「いや、聞いたことないな。どこにある塔なのかな?」
「いや、知らないならいいけど。この道具本当にヤバいくらい便利だなって」
「・・・?ああ、色んな種族がいるからね。言葉が通じないとうっかり争いになるし、交易にも支障が出るんだよ。むしろ君達のいた所にはないのかい?」
「近いものは有ったけどこんなに便利じゃなかったね」
再度ちょっと待っててくれるように伝えて室内に戻り、二人に声をかけに行く。まだ社長と顔合わせもしてないので二人を室内に入れるのはまだ早いだろう。
それぞれのスペースでそわそわしてた2人に声をかけて1階に連れて降りる。先輩が抵抗するかと思ったが状況に飲まれているのか、素直に着いてきた。
「迎えにきてくれたのはターミンとサンバーって2人ですよ。サンバーはまだよくわかんないけどターミンはいいやつ。そんでこれ、2日間着けても何ともなかったから大丈夫。っていうかこれないとコミニュケーション取れないんでつけてくださいね」
ドアを開けて対面させる前にざっと雑に説明を済ませて例の通訳グッズを着けさせる。
「じゃあ、行きましょう」
「こんにちは。族長の遣いで参りました、サーヴァス村のターミンです。これから皆さんを我らの村へ案内します」
「同じく、サンバー。よろしく」
「立花順三です。よろしくお願いします」
「伊坂美奈です。お願いします」
それぞれ簡単な挨拶を済ませ、ターミンを先頭に村へと向かう。
道中は基本的に俺とターミンが話し、たまに社長と先輩に振ってなんとなく気まずさを無くすように気をつけてはいるが、緊張のせいか、2人は会話のキャッチボールが下手くそになっているようで、すぐ話が終わってしまう。
「ハル。そういえば彼らは君とどう言う親族になるんだい?」
会話が途切れて少し経った時、ターミンがコソッと話しかけてきた。確かに今まで関係性を話していなかった。
「あー、しゃちょ・・・立花さんと伊坂さんは叔父と姪の関係だよ。俺は完全に部外者。立花さんが店主の店で働いてる」
「なるほど。それは師弟という意味かな?それとも主従?」
「師弟・・・かな。基本的に俺の故郷には奴隷制度はないしね」
「・・・それは信じがたいけど、もし本当なら素晴らしい国から来たんだね。この国では人間も魔族も奴隷を使うし、奴隷にするために同種も亜人種も関係なく無理矢理攫ったりする連中が普通にいるよ」
「ま、まあ実質的に奴隷みたいな扱いされてる人達もいるけどね・・・」
「我々ダークエルフは仲間同士の平等を重んじるから、奴隷を使う事も、誰かを無理矢理束縛して隷属させる事もしないんだ。だから、なんというか、そこのところは安心して欲しいかな。あ、そろそろ到着だよ。ほら」
少し重たくなってしまった会話を終わらせるように、ターミンが声のトーンを上げ、前方を指さした。
久しぶりの投稿になってしまいました。
完結するまで続けて行きますので、よろしくお願いします。
また、お読み頂きありがとうございます。
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