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第1章 2話 旅の始まり

「これからの目的地」これを決めるのはほとんどがテスラである。自身のあどけなさが残る容姿を利用した情報収集であったり、テレンシィと並び各地でひそかに称賛を浴び続けたその頭脳を持って、"正しい"目標を定め続けるテスラに全員が信頼を寄せている。


「何か分かった、ってことでいいんだな?」

「はい、このお店を探している途中、酒場に入った時に小耳にはさんだ話なんですが…」


”おい、聞いたか”

”なんだよ急に、儲け話でも持ってきたのか?”

”違うって、大変なんだよ”

”大変っていっても俺だって生活が苦しくって大変なんだぞ”

”今はお前のことはいいだろ”


「その部分はいるのかしら…」

「……。」

「いらないのか…」


”なんか最近、東にあるでっかい森のモンスターが狂暴化してるって噂になってるんだ”

”はあ?あそこは前からやばいモンスターばっかりだって言われてたろ”

”でも最近はさらにそいつらが強くなってるらしいんだよ”

”どういうことだ?”

”以前まで調査に行ってた腕利きの奴らがここんとこ何度も逃げ帰ってるらしいんだ”

”何?それは本当か?”

”ああ、それで隣のローグ帝国から騎士団が来たらしい”

”おいおい、それはいくらなんでも嘘だろ”

”まあ信じなくてもいいんだがな。それで奥に進んだら”

”進んだら?”

”結界があって進めなかったらしいんだ”

”はあ?騎士団には魔導士団もあるんだろ?なんで結界があると通れないんだよ”

”魔導士団もいたが、結界を破れなかったらしいんだ”

”何言ってるんだよ、キングス帝国の魔導士団ってのは世界でも有数の超精鋭部隊だって有名だろ?”

”ああ、もちろん知ってるさ。団長のエリックカーターは世界でも4本の指に入る魔導士だってな”

”だろ?そんな奴らが破れないって、三巨神でもいたってか?馬鹿馬鹿しい話だぜ”

”まあ、そっちに関してはうわさ話に過ぎないからな。でも興味深いだろ?”

”そうかもしれないけどよ、俺達には無縁の話だよ”

”ま、そうなんだけどな”


「なるほどねぇ、帝国軍ですら手に負えないような強力なモンスターがいるかもしれないってか」

「それで、その話の真偽はどうだったのかしら」

「腕利きの調査団がここの所、何度も逃げ帰っているっていうのは本当みたいです」

「それはどこで?」

「調査の斡旋をしている組織の受付で聞きました」

「なるほど、それで騎士団が来たというのは?」

「組織の受付ではそのような事実ないと言われましたが、その森の入り口近くの人たちに聞くとそれらしき集団を見かけたと言っていました」

「騎士の集団だってのは分かるにしても、帝国軍だってのは分かるもんなのか?」

「キングス帝国軍の紋章である王冠のマークがついていたとのことです」

「なるほどな」


少し考えこむテスラ。普段ならば迷いなく「行こう」という場面なのだが、3人は違和感を感じ取った。


「どうしたの?何か気になることでもあるの?」

「正直、帝国軍が手に負えない結界を張れる存在は限られています」

「そうね、私たち2人ともう一人、最東端の森に住むエルフの魔導士」

「あとは三巨神、ですよね」

「そうだな」

「もちろん結界を張ったのは僕らじゃない、あのエルフがここに来るなんてことはあり得ない」

「なら、三巨神がいるという事になるな」

「あ…」

「どうしたんだシィ?何か分かったのか」

「ああ、なるほどな」

「なんだよ!流石にこれだけじゃわかんねえよ!」

「ケーンさん、三巨神ってどんな奴らか知ってますよね」

「?ああ、確か世界各地を動き回ってる桁違いの力と大きさを持つ3体のモンスターだったよな」

「そうです、その3体ってなんでしたっけ」

「たしかエンシェントドラゴン、マントルスネーク、パンゲアトーターだっけか?」

「はい、そうですね」

「この中で今回の件に関係する可能性があるのはどいつだ?」

「え?そりゃ陸続きなんだから亀野郎なわけないし…」

「木や岩の多いこの辺では蛇も無理だろうな」

「じゃあドラゴンだな!」

「そうなるわね」

「……。」

「…。」

「…。」

「…?あ、そうか!」

「やっと気づいたのね…」


少し下を向いて黙るテスラ。彼にとってエンシェントドラゴンは、ただの強力なモンスターではなかった。幼い時の禍根が、決心を鈍らせていた。


「大丈夫よ。今は私たちがいるわ」

「そうだぞ、あの時と違ってお前もめちゃくちゃ強くなってるだろ?」

「心配することは無い、たまには俺たちのことを信頼してくれてもいいんだぞ?」

「…はい、ありがとうございます!」


ケーン、ジュートは手を取り、テレンシィは背中からそっと抱き着いた。テスラ自身、自分の能力に自信がないわけではないし仲間のことを信頼していないわけではない。しかし、心の中の不安はぬぐい切れないのである。それを分かっているほかの三人は何も言わず、静かにテスラに寄り添っていた。


「ありがとうございます。決心がつきました」

「そう、もう大丈夫なのね」

「はい!では明日、入念に準備して行きましょう!」

「おう!暴れてやるぜ!」

「久々に骨のある相手と戦えるのだな、腕が鳴る」


テスラにとって、テレンシィにとって、そして天変地異にとって記念すべきその日、新たな歴史の幕が切って落とされた。

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