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第1章 1話 最強のパーティ

「もお、僕の誕生日を祝ってくれるっていうから楽しみにしてたのに」

「それは悪かったって!」

「まあ。この手のことをケーンさんに任せたのが悪かったんでしょうけど」

「ここに来るのは初めてだとはいえ、まさかこれだけ大きな町でレストランを見繕う事すらできないとは」

「いや、調査で忙しかったからってテスラ自身に探してもらっちゃってるとか、私たちも十分同罪よ?」

「うぐっ、それを言われると耳が痛いな」


このやりとりはもちろんテスラがいじめられている等ということではなく、彼らのいつも通りである。交渉や管理などといった戦闘以外の事にはジュート、ケーンともに疎いため、テスラとテレンシィが担当している。なので誕生日を祝うとなっっても、テレンシィが手を離せない状態になっている場合、おのずとテスラが段取りを整えることになるのである。


「まあ過ぎたことはこの際いいです。今日は全力で祝ってくれるんですよね?」

「ああ、もちろんだ!なんたって俺の一番弟子なんだからな!」

「それは俺も同じだ。まあ、俺もケーンも弟子はですら一人しかいないがな」

「そうはいっても俺らみたいな旅人の弟子になるって言ったらテスラみたく一緒に旅をするしかないだろ?」

「はいはい、脱線はそれくらいにしてちょうだい。ほら、もうすぐ店に着くわよ」


彼らの止まっている宿屋がある大通りから少し外れた、閑静な場所に件のレストランがあった。木造建築が多い中で、異彩を放つレンガ造りの建物であるだけでなく、腕利きの用心棒が入口を守っていた。


「おお!さすがテスラだぜ!こんなよさそうな店よく見つけたな!」

「しかしこれだけ高級そうな店に入って、大丈夫なのか」

「もう…無粋ですよ、ジュートさん。第一、僕らの財布を握ってるのは誰ですか?」

「フッ、それもそうか」

「そうよ、この子が選んだんだから間違いなんてあるはずないでしょう?」

「あ、そうそう。シィさん、この店の売りはオレンジタルトらしいですよ」

「ホント!?嬉しいわ、わざわざ探してくれたの?」

「当たり前じゃないですか、今日は僕らの記念日でもあるんですから」

「そうね、ありがとうテスラ」


二人が恋人となった大切な記念日でもあることを覚えていたこと、恋人である自分のことを考えてくれていたことに感動して、少しだけ背の低いテスラと腕を絡めて愛情を表現した。


「おお、やっぱり中身まで高級な感じだな!」

「あまり騒ぐなよケーン、お前もいい加減大人だろう?」

「わーってるって、おとなしくしてるよ。今日の主役はこっちだしな」

「さあ、行きましょうか。シィさん、こっちですよ」

「分かってるから引っ張らないで」

「珍しくはしゃいでるな、あいつ」

「いつも気を張ってるんだ、今日くらいいいだろう」

「そうだな」


入店して案内されるままに2階にある個室に入った。


「個室ですから多少騒いでも大丈夫ですよ」

「おー!待ってました!やっぱり静かなのは性に合わねえからな!」

「限度はあるんだぞ、やりすぎるなよ」


巨体のジュートがゆとりを持って座れるほどの大きな椅子に、その椅子が小さく見えるほどの大きなテーブル、そしてそのテーブルが入っても十分に広い大きな個室、まごうことなきVIPルームであった。


「お客様、ご来店ありがとうございます。当店の最高級のお食事をお楽しみ下さい」

「ありがとうございます。料理は一度に運んでください、お酒などに関してもこちらから注文します」

「承りました。ではごゆっくりお楽しみください」


スーツに身を包んだ長身の男性が丁寧に対応をする。料理が運ばれ、できるだけ邪魔が入らないように店員はできるだけ関与しないように頼んだ。


「さて、ではいただきましょう」

「ええ、そうね」

「待ち切れなぇな、いただきます」

「いただきます」


山菜がたくさん入ったスープや畜産動物の食用肉のステーキ、さらには貴重なモンスターを使った料理まで、様々な料理が所狭しとテーブルに並んだ。


「いやぁ、ホントにうめぇなー!」

「うむ、さすがは最高級のレストランだな」

「ん~!こんなに甘いタルト、初めてかもしれないわ」

「ふむふむ、なるほど…今度にでも試してみようか」


4人それぞれが違った反応を見せる。ちなみにテスラはパーティの食事当番である。理由としては彼は年齢による制限を受けることがあるため、留守を守ることが一番多いからだ。


「しっかしテスラももう16歳か」

「あれから8年も旅を続けてきたんだな」

「すっかり頼もしくなっちゃったわね」

「本当に、いろいろなことがありましたね。未熟を感じることも何度もありました。でも、シィさんたちのおかげでここまで来ることが出来ました。本当にありがとうございます!」

「こちらこそよ、あなたに何度助けられたことか。これからもよろしくね」

「「んっ…」」

「お熱いねぇ」

「二人だけの世界に入ってくれるなよ。俺たちもまだまだテスラと旅を続けるつもりなんだからな」


プレゼント代わりのキスを交わしたところで、ますます宴は盛り上がっていった。そして他愛ない会話をしながら数時間、出された食事を完食したところでテスラが口を開いた。


「皆さん、ちょっとお話があるんです」

「どうした?改まって」

「…話を聴きましょう」


先程までとは打って変わって真剣な様子で話し始めたテスラに、3人も先程までの酔いを忘れて真剣に話を聞く。


「これからの目的地の話なんですが…」

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