プロローグ 第4話 旅立ち
「う…うん…?」
「あ、起きた?大丈夫?」
しばらく眠った後、目を覚ましたテスラを見てテレンシィが優しく声をかける。しかし、テスラは予想だにしないような反応を示した。
「ひっ…!」
「えっ…?ど、どうしたの?!大丈夫!?」
辺りを見回したかと思うと体をのけぞらせてテレンシィに寄りかかる形となった。目は恐怖に染まっており、体が小刻みに触れている。
「あ、ああ…」
「おいおいどうした?」
「何かにおびえているのか?」
分析を行うものの、言葉を発することすらできないような状態では状況はよく分からない。そんな状況を察したのか、テスラは恐る恐る震える手を焚火の方に向けた。
「焚火が怖いの?」
「う、うん…」
「焚火が怖い?どういうことだ?」
日が傾きかけており、夕方になろうという時間帯。季節としては春先であるため、この時間は少し冷えていた。そのためテスラがしっかりと休めるように焚火で暖を取りながら交代で見張りをしていた。
「あ…えっと…その…」
「大丈夫よ、急いだりしないから。ゆっくりでいいの。ゆっくり話して頂戴」
「何があったんだ!?」
「おい、ゆっくりといっただろうが。お前が急いでどうする。」
安心させるように言葉を選びながら続きを促すテレンシィ、状況が知りたくて解答を急ぐケーン、冷静に話を見守るジュートと三者三様な様子を見て、少し安心したのかテスラがゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「む、村に、白い竜が…来て…」
「白い竜?ほかに何か特徴はあったの?」
「あ、青い目をしてました…あと、なんか、しゃべってた…」
「え?それって…」
「ん?なんだ?どうかしたのか?」
「ケーン、お前も話を聞いただろう、エンシェントドラゴンだよ」
「エンシェントドラゴン…?ああ!あの伝説の竜ってやつか!」
「そうだ」
「へぇ~…って何!?そんな伝説の竜に会ったのか!?」
「だからそういってるだろう」
「ちょっと!今この子が離してるんだから静かにしてちょうだい」
話は進まないが、3人のにぎやかな様子に少しづつ落ち着きを取り戻したのか少しづつ話が滑らかになり始めた。
「それで、村が焼けて、誰も助けられなくて」
「大丈夫よ、そんな状況でどうにかできる人なんていないの、だから心配しないで」
先程の光景がフラッシュバックしたのか暗い表情になったテスラに対して、テレンシィは落ち着かせるように手を握った。
「その後、黒いフードをかぶった人たちが追いかけてきました」
「え?」
「ど、どうしたんですか?」
「エンシェントドラゴンは、邪悪な魔力が貯まった場所に現れて災害をもたらすという伝説があるんだ」
「でも、その後に生き残りを始末するような人が現れるなんて」
「誰かが仕込んだことだっていうのか?」
「そうかもしれん。ただ、エンシェントドラゴンは人間がどうこうできるようなものではないはずだ」
「その人たちに何か変わったことはあったのかしら」
「背中に変わった模様がありました」
そういって地面にすらすらと模様を描いていく。3人ともその模様は知らなかったが、何か感じるものがあったようで、顔を見合わせた。
「ねぇ…」
「ああ…」
「なんだよ、どうかしたのか?あの模様が何か分かるのか?」
「?」
少し離れて小声で話し始めた。
「やっぱり、あの子を連れて行こうと思うの」
「なに?本気か?」
「ええ、もちろんよ」
「あんな状態でもあれだけの記憶力と判断力、子供とは思えないほどだ」
「それに抱きしめて分かったけど、魔力も相当よあの子」
「なるほどな、俺も剣術を教えてみるとするか」
「あら、気が早いわね。それにあの子には魔法を教えるのよ」
「なに、剣術も魔法も格闘術も全て教えればいいんだ」
「それもそうね」
「それもそうか」
気が早いとか脱線してるとかツッコむ人間は3人の中にはいなかった。本人を除いてとんとん拍子に話が進んだ結果、考えがまとまった。
「ねぇ君」
「は、はい!」
「名前は何かしら?」
「て、テスラです」
「よし、テスラ。今日からお前は俺たちの仲間だ!」
「え、ええっ!?」
「どこか行く当てはあるのか?」
「そ、それは…無いですけど…」
「けど?」
「迷惑なんじゃ…」
「まさか、私たちが連れていきたいの」
「そうだぞ、お前には俺に続く2番目の剣士になってもらうからな」
「テスラの才能を見込んで言ってるんだ。あれ達が信じられないと?」
「い、いえ、そんなことは無いです」
「ちょっとちょっと、無理強いしたらダメよ。まあでも、一緒に来てほしいの、ダメかしら」
「そ、そんなことないです!よろしくお願いします」
そうして、テスラ、テレンシィ、ケーン。ジュートの4人のパーティが結成された......。
「シィさん、ケーンさん、こっちですよー!」
「おー!今行くぞー、待ってろよー!」
「はしゃぎすぎじゃないかしらー!別に急いだりしないわよー!」
「お前らがゆっくりしすぎなだけだぞ。早く来い」
それから8年の月日が流れた。4人は成長し、世界でも並ぶ者がいない程の強さと頭脳で知る人ぞ知る存在となっていた。最強の名を冠したそのパーティは「天変地異」と呼ばれた。