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プロローグ 第3話 逃亡、そして邂逅

「逃がすな!生き残った奴は皆殺しだ!」


黒いフードをかぶった2人の男が追いかけてくる途中に叫んでいる。投擲用と思われるナイフや魔道具らしきものを持っていることから遠距離攻撃が主体と考え、テスラは木の間を縦横無尽に縫うように逃げた。


「くそっ、ちょこまかと…!」

「おい、お前はあっちに回れ。挟み撃ちにするんだ」


逃げ場を奪うために2手に分かれた。すると、テスラは急激に進路を変更し、深い茂みの多い場所へと逃げ込み姿を隠した。この獣道にただでさえ慣れていない2人はテスラの速度についていけなくなり、ぐんぐんと距離が開いていった。


「なっ、小賢しいガキが!」

「どこに行きやがった!?」


周囲に人間の気配がないことを確認し、追ってはあの2人だけであると当たりを付けたテスラであったが、見失った程度では諦めそうにない様子を見て別の作戦を考え始めた。


(武器も魔道具も持ってる、多分戦って勝つのは無理。じゃあ諦めさせるには…)


その時テスラの頭にある考えが浮かんだ。


(僕が死んだって思えば、あの人たちは諦めてくれる…)


浮かんだのは、逃げる途中で木に登った時に見えた男の子の姿であった。少ししか見えていないものの、血を流して倒れており動く様子はなかった。


(あの子、僕と似てた。それにこの辺にはさっきのシルバーウルフがいるはず…!)


今の極限状態のテスラにはおそらく同胞であろう子供の死に動揺する余裕などなかった。すぐに作戦を決行するため辺りを見回した。


(いた!さっきのシルバーウルフ!よし、じゃあこのサソイダケで…)


一瞬の静寂に包まれる森の中、叫び声がこだまする。


「いやだ…こないで…こないでーーー!!!」

「!!」

「あっちか!」


叫び声を聞いた男たちは即座にその声の元へと向かった。そこで2人が見たものは、


「グルルルゥ…」

「なっ…!」

「シルバーウルフだと…!?」


人間を襲う事例が後を絶たず、かなりの速度とパワーを持つその獣は帝国に専門の部隊が敷かれるほどの危険生物であった。そんなモンスターが今目の前にいる。命の危機に2人の集中力が研ぎ澄まされる。


「おい、そこに倒れてるのは…」

「ああ、それにサソイダケも落ちてる…」

「そういうことか」

「ああ、任務は果たした。戻るぞ」

「分かった。…もしもし聞こえるか、全員の死亡を確認した。今から帰還する。」


サソイダケに夢中になっているシルバーウルフに見つからないように2人は帰っていった。その時見えた背中に見えた紋章が、テスラの目に深く深く刻まれることになった。


「ハァ…ハァ…おなか…すいた…のど…かわいた…」


謎の男2人から逃げ切った後、テスラはほぼ3日歩き続けた。必死に食べられるものを見つけて飢えをしのいだが飲み水にはありつけていなかった。


(あっちに川があったはず…もうすぐ水が飲める…!)


すでに限界を迎えていたテスラだが気力を振り絞って歩き続けた。そしてついに川の前へとたどり着いた。


(み…ず…)


川に着いて緊張の糸が切れたのかそのままテスラは気を失った。そんなテスラの元へと1人の少女と2人の少年が歩いてきた。


「何でこんな時に旅に出なきゃいけないんだか…」

「ケーン、それは神様からの啓示だって何度も言ったでしょう?」

「話を聞いていないのもそうだが、それで誰よりも早く旅の準備を終えるのも相変わらずだなお前は」

「だって旅に出るなんてワクワクするじゃねえかよ!」

「はぁ…こんな調子で大丈夫かしら」

「大丈夫だって!俺も、シィもジュートも選ばれしものなんだろ?」

「それはもちろんだが、あまり調子に乗りすぎると痛い目にあうぞ?」

「分かってるって、心配すんなよ」

「だといいが…」


彼らは近くの村から旅に出たもので3人とも神の啓示を受けている。優れた才能と高い向上心を持ち、大いなる力を手にすることがほぼ約束されているとして、いつか世界を救うといわれたのである。そんな彼らは今、旅の始めに大きな出会いを果たそうとしている。それは世界を救うというある意味抽象的な「推測」が、はっきりとした「使命」へと変わろうとしていることを意味する。


「ん?…おい、子供が倒れてるぞ!」

「え?どこよ」

「ほらあそこ、川辺にいるだろうが!」

「む…確かにいるな、一体何があったんだ」

「確かこのあたりには小さな村があったはず、多分そこの子ね」

「とりあえずいくぞ」

「ああ」

「ええ」


急いでその子供の元へ向かった。距離はそこまでなく、だんだんと詳細な部分まで見えるようになってきた。ひとまず子守の経験があるテレンシィに介抱を任せた。


「ひどく衰弱してるわ、痩せているし息も荒い…」

「何かから逃げてきたのか?あちこち怪我してやがる」

「ひとまず水を飲ませてやらねばなるまい」

「そうね、大丈夫?水飲める?」

「あ…は、い…」

「しゃべらなくていいのよ。ほら、飲んで」


水筒を使って少しづつ水を飲ませていく。体は動かなかったものの、あまりの苦しさに眠ることさえ出来てなかったテスラは、喉を潤したことでようやく眠りにつくことが出来た。


「寝ちゃったわね」

「ああ、しかしこの子どうするんだ?」

「そうね、とりあえず話を聞かないと…」

「話を聞いてどうする?」

「事情にもよるけど、連れて行こうかと思うの」

「本気かよ!?」

「ひとまずこの子が起きるまで待とう。話はそれからだ」


とある昼下がり、これがテレンシィ、ケーン、ジュートの3人とテスラの、後に天変地異と呼ばれる4人の、邂逅である。


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