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フスマin異世界  作者: くりぼう
第一章
8/79

8 2人暮らし

ポイント&ブクマ付けてくれた読者の方々どうもありがとうございます。


リノアを娘にした俺は幸せになる為の人生設計を練らねばと一人燃えていた。


(よし、当面のことは後で考えるとして、まずは衣食住だよな。幸いこの3つはアパートに戻れば問題ないな…ん?アパートに戻る?)



……これ、戻れるのか?



ふいに背中に嫌な汗がスーッと伝っていったのを感じた。


(え、ちょっと、戻れるんですよね?押入れに入っただけだぞ、俺。いや、そりゃ実際は押し入れの中ではなく異世界(リノアの家)でしたよ?でもだからって…強制的に不運な片道切符とかじゃ無いですよね?)


リノアをゆっくりと足元へ下ろし、頭の上に(てのひら)を添えそのまま後ろを振り返った。


俺は思わず叫びそうになるのをグッと堪えた、そこには場違いなだけど確かに俺のアパートのフスマが存在していたからだ、フスマは開け放たれ奥には夜なので薄らと暗いがいつもの見慣れたワンルームの部屋が広がっていた。


(よーし、よーし、よーし! ここまではセーフだ!)


リノアが何か言いたそうな顔をしているが、とりあえず今は放置だ、すまん!


俺はゆっくりとフスマの前まで移動して瞼を閉じた、そして大きく息を吸い込みそのまま息を止めると思い切りその先へフスマの先へと飛び込んだ。


そして…祈るように慎重に瞼を開けると俺の口からは安堵の息が漏れた。俺は見慣れたワンルームの部屋に中に立っていた、戻れないかもしれないという不安から解放された俺はその場へとへたり込み、不思議とその瞳からは涙が一雫だけ流れた。


(やった、やった、戻れた!これで何とかなる、リノアを養うことがこれで容易になった。)


その後、更に時間が経つにつれ、俺は完全に戻れた事を理解するとその場で飛び跳ね、万歳三唱、まさに一人大フィーバー状態となっていた。


「・・・・・・・・・・・」


そんな俺の様子にリノアは訳が分からず目をテンにして只々絶句していた。リノアのその様子に気付いた俺は少しはしゃぎ過ぎて恥ずかしくはなったが、戻れたと言う安堵感に比べると些細なことの様に感じ、テンションが戻るにはもう少しだけ時間が必要だった。


ただ、このまま放置するわけにはいかず、こちら側へリノアを呼ぶ事にしたのだが、ここでふと不安感に襲われた。リノアはこちら側へくる事が出来るのかという事である。


俺はフスマの前異世界に入るギリギリまで近づくと、リノアを呼び寄せた。


「リノアこっち、こっちに来てみて?」


「はぁ〜。一体さっきから何よ?変だよパパ?」


先程から不自然すぎる俺へリノアが訝しげな目を向けてくる。


「大丈夫、大丈夫!フスマに近づいたらゆっくりと手を前に出してみ?」


「ほんと、何なのよ!」


何処かで気持ちが悪いおっさんを見るような視線に耐えながら俺はリノアが近づいて来るのを待った。


「来たわよ?これでいいんでしょ?」


何も説明がないまま、命令だけされる事に苛立ちを見せながらリノアは乱暴に両腕を前に出した、俺はそれを素早く掴み、グッと自分の方へと引き寄せた。


リノアの足元へとゆっくりと視線を向けるとしっかりと小汚いフローリングの床へと両足を付け俺の目の前に立っていた。


「ふぅーっ!杞憂だったか…。」


俺は額の汗を拭うとリノアの頭の上に手を置き笑顔を向けながら言葉をかけた。


「全く、心配かけんなよなぁー。」


「全然意味がわからないんですけど!」


「まぁ、そりゃそうだ、但し俺はもう疲れたからそこら辺はまた明日!」


俺は偉そうに右手を開いて前に突き出すと道々と言い放った。


「はぁー別にいいけど、本当何なのよ!パパ明日絶対教えてね?」



苛立ちはしている様だが、納得はしてくれたのでそれで良しとしておいた、俺はとりあえず部屋の電気を入れ換気扇の下まで移動するとタバコに火をつけ疲れを癒すように煙を吸い込んだ。


その時だった、室内に換気扇の『ブーン』という音が響いたと同時にリノアが大声を上げた。


「!!!!なに!?」


どうやら、いきなりついた部屋の電気の明るさと換気扇の音で驚かせてしまった様だ。


ちなみにこっちの部屋はお客さん様に一応電気ガス水道は通してある。


「あぁ、大丈夫大丈夫、電気はわからないか…。んーとりあえず害のあるモノじゃないから安心していい。」

俺はそれだけを伝えるとタバコを再開した。


リノアは俺のズボンを掴んだまま、ジト目で睨んできたが、少し怯えている様だった。


「どうせ、それも明日って言うんでしょ?」


「正解♪」


リノアはジト目を俺に向けて来ていたが、とりあえず笑って誤魔化しておいた。


そんなやりとりをしていて俺はふと気になった。


「そういえばさーリノアの部屋何か明るかったよな?何で?」


「はぁー?パパ本当に何も知らないよねぇー?………それなのにこんな()()()もってるし……何者よ……やっぱり夢の国の…。」


最後の方、何か小声でブツブツと呟いていたが聞き取ることが出来なかった。


「で、何でよー?」


「あーえっとね、あれは天井に光る石を吊るしていたからだよ。」


「え、なにそれ!スゲー見たいんですけど!」


俺は好奇心を抑えきれずにリノアの家へ移動しようとしたが…二度目の異世界転移と言っていいのか、取り敢えずフスマを潜るのを躊躇ってしまった、次も戻れると言う保証がどこにも無いからだ。


そこで俺は考えた、まず片足をゆっくりと潜らせ安全が確認された後、もう片方もフスマを潜らせる、その後日本に戻り、同じ事を数回繰り返して、更に安全を確認した後に光る石の見学に向かう。


(よしその作戦で行こう。)


そしていざ渡ろうとした瞬間…ドン!


「ちょっとパパ何急に止まってるのよ?早く進んでよ?」


さっき娘になったばかりの幼女が俺のケツを両手で押してきた。


「…あっ」


こうして呆気なく2度目の異世界転移を終えた。


「ちょっとパパ何悲しい顔してるのよ?」

リノアは首を傾げ訝しげな目を俺に向けてくる。


うん、無事に戻れました。


(娘になった瞬間に反抗期ですか、そうですか。)


〜〜〜〜〜


そんなこんなで予定外の出来事もあったがただ今光る石見学中。


「おー本当だ!こりゃすげぇ!結構上の方に吊るしてるのな。」


天井付近には小さな光る石が編み目の細かいネットに20個ほど入れられ

それが10セットほど掛けられていた。


「これずっと光り続けるの?光が消えたりしないのか?」


「んーわたしは、光らなくなった所とか見たことないよー?」


「ほほぉ〜そりゃ面白いな!」

ニヤニヤしながら天井を見上げた。


「リノアこれどうやって手に入れるの?」


「ダンジョンとかの壁から削って持ってくるんだよ。」


「ダンジョン!ファンタジーっぽくて大変宜しい!」


「ねぇーもういいでしょ?あっち戻ろ?」

リノアは暇そうな顔をしてフスマの先の102号室を指差し、その後すぐに俺の腕を引っ張って来た。


「まぁーいつでも見れるか。」


〜〜〜〜〜


アパートに戻ってからが大変だった。


電気に対する恐怖が無くなったリノアは凄まじかった。


俺のズボンを掴むほど電気を怖がっていたリノアだが本当に安全だと分かった途端に目を爛々と輝かせ電気のスイッチのon offをやりまくったのである。


そしてアレ何コレ何と質問の嵐だった。


とりわけ、蛇口に衝撃を受けた様で「コレすごい、回すだけで水出てくるコレすごい!!!」

と大興奮だった。


何でも今までは、家の外にある井戸から何往復もしながら桶に水汲みに通っていたらしい。


その際すぐ家の前だと言っても魔物への注意は必要であるようで、かなり神経を使うと言っていた。


一応魔物除けらしきものは家の周囲に置いてあるとは言ってたが…要確認である。


(そんな話聞いたらやっぱ日本すげーわ、しかし、ここ魔物がすぐ近くに居るのかよ…)


しかし、リノアをトイレに連れていったら気絶するのではないだろうか………


「なぁーリノア、ここで1人で暮らしてるって言ってたけど魔物除けが有るっていっても魔物がいるんじゃあんまり外に出れないだろ?」


「うん、出れないよ?私行商人と、もう1人の人がうちを訪ねてきてくれるまで水汲み以外で外には出ないようにしてたんだよ?」

悲しそうな顔で言う。


「は?そんなん生活できないだろ?行商人がくるって言っても全部買えるわけじゃ無いだろ?ていうーか、友達は?あそんだr…」


そう言いかけて俺はハッとした。


恐る恐るリノアの顔を見てみると下唇を噛みしめ、今にも泣き出しそうな顔をしていた。


(俺は本当に学習しねーな!!俺のバカ、バカ、バカ!!こんな環境で友達とかいるわけがないだろ!20秒くらい前の俺を殴り飛ばしてやりたいわ!)


「リ、リノア大丈夫だ!これからきっと友達出来るからな!それに俺も友達っぽいのが1人いるだけだしな!」


(うん、須藤は友達っぽい感じでいいはずだ!)


俺はリノアを慰める為、自信満々に言い放った。


すると何故か哀れんだような視線を向けられた。


(あ、あれ?なんだこれ…)


「パ、パパ友達いないの?友達っぽい人しかいないの?そ、その寂しかったよね?なんて言っていいのか分からないけど…でもわたしが居るから元気出してね?だ、大丈夫!パパは1人じゃ無いんだよ!それに比べて、わたしは…パパは今までずっと1人で寂しい思いをして、ずっと1人ぼっちで生きてきたのに、たった1年友達に会えなくなっただけでこんなに落ち込んで、パパはこれまでこんなに孤独だったのに…」


(あれ…何だろう目から水が出てきた、リノアさんやめてお父さんをもう追い詰めないで!…そうか俺はずっと1人ぼっちで孤独だったんだな…。)


俺はリノアが喋れば喋るほど目からハイライトが消えていき、逆にリノアは俺を慰めようと無理して痛々しい笑顔を作り、俺はその笑顔を見ると又落ち込んでいくという無限スパイラルに突入し復活にかなりの時間を要する事となった。




復活をなんとか遂げた俺は先ほどの件を誤魔化すように質問を続けた。


「そ、それでそういう生活を何年くらい続けたの?」


「え、えーっと…い、1年くらいだと思う…そ、その…」


お互いに目が泳ぐ。


「だいじょーぶ、だいじょーぶ!お願いだから何も言わないで!お父さんまた泣いちゃうから!」


俺が必死でそう言うとリノアは『わ、わかった』とだけ言い視線を逸らした。


「そ、それで1年前までどうやって生活してたんだよ?」

不思議そうに聞いた。


「あのね、1年前はママがいたから…」

悲しそうな顔をしながら下を向いた。


(まーたーかーよー!俺ほんと何やってんの?バカなの?死ぬの?)


「あ、それはわりぃー…。」


(しかし…うーむ、やはり母親は亡くなったのかな、あんまり気軽に触れない方が良さそうだな。)


そんなことを考えていると________


「………z…Z……zz…Z……ムニャムニャ……」


(え?何で?もう寝ちゃったの?というか寝るの早くね?今まで話してたよな?あ!そう言えば人と接する事すらあんまり無さそうだったし久しぶりに人と話して疲れたのかもな。……いやいやいや、そんなで納得出来ねーから!話してたの3秒前くらいですから!)


心の中でノリツッコミをしながら俺はリノアの顔を覗き込んだ。


「こんな小さいのに本当今までお前はよく頑張ったよ。」

 

そして俺はリノアの髪を優しく撫でた。



異世界側(リノアの家)の戸締りをし、電気を消した俺はそのままリノアをおんぶして、俺の部屋(101号室)へと向かった。

今後も読んでもいいと感じたらポイント&ブクマよろしくお願いします。

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