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フスマin異世界  作者: くりぼう
第一章
35/79

35 襲撃者


サンドウイッチを食べながらどうしたものかと考えていると、急に家の外から騒がしい音がし始めた。その音を聞きつけ、アルとアンヌが大慌てでフスマの部屋(リビング)へと入って来る。


索敵能力が俺より高そうな二人の顔色は明らかに青ざめていたが、その場から逃げ出そうとはせず死地に赴く覚悟を決めた戦士のような表情を二人は垣間見せていた。


(これかなりの人数で攻めて来てるだろ、気配半端ないぞ。)


「閣下、私が少し外を見て参ります。」

アルがそう言って出て行こうとしたのを俺は制した。


「いや、俺が見てくるよ、アルはリノアを頼む。アンヌは来るなら来ても良いけど、どうする?」

俺はタバコを咥え指先から出した炎で火をつけながら聞いた。


「畏まりました、私はリノアお嬢様のお部屋の前で待機しておきます。」

アルは一礼するとすぐさまリノアの元へと向かって行く。


(アル…リノアの部屋じゃ無いからね?寝室だからね?元々俺の部屋だからね?)


「閣下、私は是非ご一緒させて頂きます。」

アンヌは太腿に仕込んだ短剣(ナイフ)を左手で摩る様に確認していた、その姿はまさに女スパイのそれであった。


(あんなとこに短剣仕込んでんのかよ!)


「まぁーあんまり気負うなよ?戦闘になったら俺が殺るから大丈夫大丈夫。」

タバコを吸いながら俺は冷静なフリをした、正直この気配の数は確実にリノアを殺しにかかって来てる。

そう考えただけで俺の頭は沸騰しそうだった。


「あ、申し訳ありません、ですが閣下お一人で戦わせるわけには参りません!」

アンヌは眼つきを鋭くすると決意を込めた表情で視線を向けて来た。


「まぁ、良いから良いから。」


アンヌが気負いすぎないように一言かけてから俺はさっそくドアの閂を開け部屋の外へと向かった。


家の前まで行くとすぐに状況は把握できた、100m程先に大きな砂煙が上がっておりその先には傭兵団か私兵と思われる男達が荷馬車のような物で箱詰めになりながらこちらへと向かって来ていた。


「うーん…おっさん二十人ってトコかな?」


俺が淡々と人数を告げるとアンヌはさすがに顔色を青くしていたが、その場から離れようとはしなかった。


「アンヌ本当に大丈夫か?無理はすんなよ?」


アンヌへと笑いかけながら俺が言うとアンヌも臆したと思われたく無いのかぎこちない笑みを返して来た。


そんなやり取りをしていると荷馬車はすぐ目の前まで到着していた。するとその集団の中から両腰に剣を帯びた赤髪長髪の男が太々しい態度をとりながら気怠そうにゆっくりと前へと進んできた。


俺が適当に無視してタバコを吸っているとアンヌは殺意のこもった眼でその男を睨みつけその全身からは抑えが効かず物凄い殺気が滲み出ていた、するとその赤髪長髪の男は歩みを止めニタニタとにやけ顔を晒しながら俺たちへと小馬鹿にしたような視線を送りつけると俺に向けて口を開いて来た。


「貴様がガキのお()りをしていると言う男か?」


「おたく誰?」


俺は面倒臭そうに質問に質問で返してみた。


勿論鑑定はすでに終えてある。


【名前】ベイランド(27)

【Level】31

【性別】男

【種族】人族

【状態】良好

【職業】オヘイリア私兵団団長

【体力】288/288

【魔力】432/501

【力】49

【素早さ】32

【防御力】27

【魅力】36

【スキル】剣術Lv2 身体強化lv1


「これはこれはまさか俺を知らない者がいるとは貴様どこの田舎者だ?」


ベイランドがそう言うと周囲の男達も一斉に下卑た表情でニヤつき始めた。


俺はこの熊田さん程度の男がなぜこんなに強気なのかが全く理解できずキョトンとした顔を晒しているとアンヌが耳元へと囁きかけて来た。


「閣下あの男は私兵団長で私たちを抜くとオヘイリア男爵の手の者の中で実質No.1の男です。」


「…は?これが?こいつどう見ても雑魚キャラじゃない?」


何だか急にやる気が無くなって相手をするのも馬鹿らしくなって来た俺は、もうさっさと終わらせることにしたのだが…その矢先、またしてもベイランドが話しかけて来た。


「ところでそっちの女の方、お前アンヌだな?何故この男と一緒にいる?裏切ったのか?」


ベイランドと言う男は全身を舐め回すように粘っこい視線をアンヌへと向け舌舐めずりをしていた。


その視線を受け更に眼付きの鋭さを増したアンヌは舌打ちをしてから返答をしようとした所で俺はアンヌへと視線を送りそれを制した。


「…っ」


「あのさーベイランド君であってるよね?君おしゃべりに来たの?何の用よ?」


面倒くさそうに俺が問いかけるとベイランドは明らかに馬鹿にされたと感じ瞳に怒りの炎を宿した。


「貴様、死にたいのか?用件はリノアとかいう女のガキを連れて来いと言う事だ、リュノミアとか言う女の前で処刑するのに使うらしいからな。」


下卑た表情でニヤつこうとした瞬間、俺は足元に落ちていたテニスボールサイズの石を右手で拾いあげ身体強化を使うと、まるで野球のピッチャーのようなフォームで大きく足を上げ、右腕を鞭のようにしならせながらその手にしっかりと握り締めた石をベイランドの腹部目掛けて思いっきり投げ込んだ。


ブォン!!!グチャ…


生々しい音だけを残しベイランドは足元から力なく崩れ落ちると地面に伏した、その周辺にはゆっくりとではあるが真っ赤な血溜まりが出来上がりつつあった。俺の放ったその石は弾丸のような速さで飛び立つとベイランドの胃のあたりを貫通しその命を完全に刈り取っていた。


一瞬の出来事にベイランドを含め俺以外誰一人として何が起こったのかすら理解できないでいた。


「それでリノアをどうするって?おたくらのリーダーもう死んじゃったみたいだけど?」


俺が声を発するとその場にいる全員の驚愕した視線が俺へと集められた。


「か、閣下、今何をなされたのですか?」


「え?足元の石投げたんだけど?」


なんでも無いことのように淡々と言って返すとアンヌはまるで化け物でも見たかのように驚愕した表情を浮かべ口を半開きにしたまま俺へと視線を向け続けていた。


すると混乱が少し収まって来たのか私兵の一人が大声で叫んだ。


「てめぇ〜ふざけんじゃねーぞ!石投げたくらいで人が死ぬわけないだろうが!」


「いやー俺にそんな事言われても…実際死んじゃったし?ていうかお前ら何なの?死にたくないなら帰れよ!」


俺がそう叫んだ瞬間『行くぞお前ら!』という一人の私兵の男の掛け声を合図に一斉に襲いかかって来た。


俺は口に咥えた火種のついたままのタバコを右手の親指と人差し指で掴み取りデコピンの要領で弾き飛ばした。その後約二割ほどの力で身体強化を使う、アンヌも太腿の短剣を右手で引き抜くと迎撃態勢を整える。


それと同時に斧を持った大柄の男と剣を持った男が左右から一斉に俺へと斬りかかってきた。


「くらえぇ!」


「この!死にさらせ!!」


俺はその斬撃を紙一重で後方へと回避し、すぐさま斧を持った男の顔面へと右ストレートをカウンター気味に突き刺すようにぶち込んだ。


「はぁぁぁっ!」

バシンッ!!


「ぶぎゃぁぁぁぁっ!!」


俺の拳は相手の顔面の顎の骨を砕き斧を持った男は悲鳴にも近い声をあげると痙攣しながら地面へと蹲った。


「この化け物が!!おらおらっ!」


間髪入れずに剣を持った男が俺へと連続で斬りかかってきた俺はそれを上半身のスウェーのみで回避し、六蓮撃目を躱したところで左足を一歩前に突き出し地面をグッと踏み締めながらそのガラ空きになったボディへと右拳で渾身のボディブローを捻じ込んだ。


「そこっ!」

ボゴンッ!!


「ぐはっ、おぇええぇっ…」


男は地面に膝をつきもがき苦しみながらその口からは大量に胃の内容物が溢れ出していた。


「ふーっ。次!」


俺はそのまま直ぐに敵の集団へと向けて両掌を突き出し魔力を集めた、集まったその魔力は炎の塊に変化を遂げ、チリチリと熱気を放ち始める、その熱気は俺の頬へと伝わりまるで高揚させるかのように撫でていく、更にその炎はどんどんと大きさを増していき、限界に達するとその集団へと〝ゴゴゴゴゴッ〟と凄まじい轟音を響かせながら襲いかかっていった、10人程度のその集団は爆音と叫び声の消え去った後一瞬にしてその見た目を赤黒く焼け爛れた肉の集団へと変えてしまっていた。


(アンヌは大丈夫かな…)


俺は視線をアンヌへと向けた、どうやらアンヌも私兵を二人程始末した様だった。


今は目の前にいる槍を持った男と対峙していた、鑑定で見る限りベイランドと大差ない相手のようなので俺はいい機会だと思いそのままアンヌの実力を確認する事にした。


(取り敢えず残り4人はどこかな…あ、いた!馬車のところで蹲ってやがるな。)


俺が残党に意識を向けていると既に戦闘が開始されていた、よく見るとあの槍の男は初めに俺に石で人は死なないと叫んでいた男のようだった。


その槍の男は手慣れた手つきでアンヌに対して連続で突きを放っていた。


「死ね、裏切り者が!」


アンヌはそれを紙一重で交わしながら少しニヤけた表情で楽しそうにしていた。


「裏切り者と言われようが私はあの神の如き慈悲深くお優しいあの方に生涯忠誠を誓っています、その為の罵りなら喜んで受けさせて頂きます。」


アンヌは敵の放った連続突きを体勢を低くし躱しながら近づいていき右手に持ったナイフを自分の背後へと構え相手の死角になる様にすると更に逆の手へとナイフを持ち変え構え直す、その低い姿勢のままどんどん槍の男の懐へと近づいていき、男の懐へと入ると直ぐに右腕を振り上げた。


「そんなナイフ如きで俺に勝てると思っているのか?」

槍の男の視線が右手へと誘導される、しかしそこには有るはずのナイフが無い。


槍の男は驚愕した表情を見せるがもう遅い、アンヌはニヤリと口角を上げそのまま左手に持ち変えたナイフを敵の右頸動脈へと突き刺した。


ブシュッ!!

「それではお疲れ様でした、ご機嫌よう。」


「ぐはぁっ!こ…の…!!!」


しかし、槍の男は死ぬ間際にアンヌへと最後の突きを放った。アンヌはその突きを瞬時に右へと交わし槍の柄の部分をナイフの刃を用いて滑らせながら相手の指まで近づくとそのまま親指を切り飛ばした。


シュッ!!


カランカランカランッ


親指を切り飛ばされた男はその手に持っていた槍を手放すとそのまま静かに息絶えた。


アンヌのその姿は暗殺者というよりもまるで何処かのくノ一のようで有り、日本人である俺の心にかなりの勢いで突き刺さった。


(アンヌかっけぇぇぇぇっ!)


「おぉーすげぇー!」

俺は大興奮で拍手を送っていた。


俺の応援に気付くとアンヌは恥ずかしそうにモジモジと体をくねらせながら近づいて来た。


「か、閣下、見ておられたのですね!」

アンヌが頬を赤く染め上げて上目遣いで聞いて来た。


「見てた見てた、アンヌ強いのな!カッコよかったぞ!」


興奮を押さえきれない俺はその勢いのままアンヌに対してサムズアップアップを決めた。


アンヌは最初キョトンとた顔をしていたが俺の真似をしてぎこちなくではあるが親指を立ててくれた。


その後、俺とアンヌは蹲ってる4人の元へと向かうと隠れているつもりなのかよく分からないがケツが丸見えだったので思いっきり蹴り飛ばしてから威嚇するように大声をあげた。


「おい、お前ら!!」


「「ひぃぃぃっ!」」


「も、も、申し訳ありません!申し訳ありません!」


「あーうるさい!静かにしろ!」


俺が怒鳴り声をあげると一瞬にしてその場は氷の世界のように静まり返りざわざわと木々の揺れる音だけが聞こえていた。


「なんだ、やれば出来るじゃない?」


「はい!」


右から2番目が大声を張り上げた。


「うるさい!」

ビシッ!!


大声を張り上げた為、反射的に2番目にチョップを入れた。


「お前らそこに綺麗に一列に並べ!」


俺の命令を聞くや否や少しの乱れもなく1番から4番までどこかの軍隊のように綺麗に整列をした。


「よしよし、まずは座れ。」


そう言うと4人はその場で胡座をかくようにして座った。


「バカモノ!!普通正座で座るだろうが!」

ビシッ!!×4


チョップを受けた4人は涙目になりながら慌てて正座で座り直した。


「それで?何でこんな事しちゃったの?よし、お前答えろ!」


俺はビシッと3番目に指先を向け発言権を与えた。3番目は顔色を青白くさせ、まさか自分が指されるとは思っていなかったのか周囲に助けを求めるような視線を向けるが皆視線を逸らすと沈黙を保っていた。俺がチョップの仕草を見せると一瞬怯えて何か諦めたように話し始めた。


「あ、あの信じて貰えないかもしれないのですが、理由は俺たちみたいな下っ端には何も聞かされて無いんですよ…」


俺が3番目の瞳をジッと見つめて信じかけた所で、1番目が急に手を上げた。


「何?発言していいよ?」


「はっ!ありがとうございます!この男は嘘を付いております!理由は子供を拐うだけの簡単なお仕事だと聞いておりました!」


言い切った1番目は胸を張り満足そうな表情を浮かべていた、逆に3番目は絶望的な表情を浮かべその額にはびっしりと多量の汗を流し始めていた。


「あぁーあ、君嘘ついちゃった?」


3番目に近づき中腰で座りながら笑顔を向けると、大慌てで否定をしながら2番目と4番目に助けを求め始めた。


「い、いえ、決して嘘など付いておりません!!な、なぁお前らも知ってたのかよ?」


話を振られた2番目と4番目は青白い顔色をさせ静かに挙手していた。俺が2番目から順番に許可を出すと真剣な顔で話し始めた。


「わ、私も聞いておりませんでした!」


「お、同じく私もい、いつもの盗賊退治だと思っておりました!」


「と言う事はだ、理由知ってたの1番目だけって事になるよね?」


俺が男達全体見回すと、2番目から4番目は高速で首を縦に振っており1番目は先程とは真逆に青白い顔色をさせ、今にも気絶してしまいそうになっていた。


「君だけ理由知ってたみたいだね?」


俺は1番目に近づいていき笑顔で話しかけると1番目は「そのようです、エヘヘッ」と苦笑いを浮かべていた。


「このバカ、このバカ!エヘヘッじゃ無いんだよ!バカバカ!」

ビシッビシッビシッビシッビシッ!!


額が腫れ上がるほどチョップを入れて気が済んだ俺は周囲を見回すと3人は怯えながら声を一切洩らさず只々、土下座で許しを懇願してきた。チョップのダメージが抜けると1番目も早速その輪に加わっていた。


俺は4人へまるで鷹のような鋭い視線を向けてジッと観察し、1番目から3番目までを指名して前にくる様に命令した。


指名された3人は震えながら前に出て来た、だが残された一人はそんな三人の姿を眺めながら明らかに喜色を浮かべている、甘い俺が何もしないわけがない。


「取り敢えず、お前ら三人ここの片付けな、全部荷馬車に詰め込んで持って帰れ。」


俺がそう伝えると三人に絶望の色が浮かんだ。


「えっと、その、な、仲間の死体を持って帰れって事でしょうか?」


怯えながら2番目が質問して来た。


「え、そうだけど、嫌なの?俺のお願い断るの?」


俺がそういうと何も言えなくなり、ただ俯いて「はい」とだけ返事をした。


「あ、そうそう、服の切れ端一つ残ってたら俺めちゃくちゃ怒るから?」


そう付け加えると更に絶望の色を深めトボトボと片づけに向かっていった。


「それじゃよろしくねー♪」


俺はそんな三人を眺めながらご機嫌に腕ごとブンブンと手を振った。


だが、その時4番目がラッキーみたいな顔をしていたのが妙に気に食わなかった。


「次お前ね。」


そう言って4番目に指を差した、その指先が向いた瞬間4番目の顔色が青白くなっていた。


4番目は何かを諦めた様にトボトボと前に出てきた。


「お前のその腰の奴ちょっと見せてよ。」


俺がそういうとその場で固まり泣きそうな顔で俺の顔をじっと見つめてきた、俺が首を横に振ると大粒の涙を溢しながら諦めて差出してきた。


そう、こいつは実力に見合わずミスリルの剣なんか持ってやがったのだ。


「お前のこれいいな?」

4番目に視線を送りながらそう言った。


「は、はい、と、とても高かったんですよ。」

自慢の剣を褒められた事が嬉しいらしく4番目は少しだけ愛好を崩した。


「へーこれちょっと貸してくれよ。」

真顔で4番目に伝えた。


「……え?い、いやでも…それ一本しかないですし…」

4番目は泣きそうな顔でどうにか拒否しようとして来た。


「そうか、じゃこれやるよ」

俺は押し入れボックスからゴブリンの剣を出して4番目に渡した。


ゴブリンの剣を受け取った瞬間、4番目の顔がこの世の終わりの様な顔をした。


俺は一通りミスリルの剣を眺めてから、4番目に視線を戻した。


「なーこれ返してほしい?」


「は、はい!是非お願いします。」

4番目は土下座をして懇願して来た。


「じゃーお願い聞いてよ?」


「お、お願いですか?」

4番目は土下座中に顔だけを上げてからお伺いを立てて来た。


「うん、今から王都へ行ってリュノミアに何かあったりオヘイリア男爵が何かしたら教えてよ?」


「そ、それだけでいいんですか?」

4番目の顔に生気が戻った。


「うん、そうやってくれる?」


「は、はい!是非やらせてください!」

4番目は嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。


「うん、じゃよろしく。」


「ま、任せてください!」

しっかりと力強く返事をしてから、嬉しそうに4番目は自分の両手を俺の目の前に出して来た。


「なに?その手」


「い、いやだな…これから王都に戻るのにその剣は必要ですよ。」

4番目は黒目を泳がせ額から多量の汗をかき始めた。


「ああ、これはもう少し借りとくからお仕事頑張ってね。」


俺がそう言うと4番目は死人のような顔をしてゴブリンの剣を握りしめ王都へとトボトボ向かって行った。


その後ろ姿を見ながら「頑張ってお仕事しないと剣折れちゃうかもしれないね?」と声を掛けると大急ぎで王都へと向かって行った。


そんな一連の流れをアンヌは恍惚とした表情で見つめながら「さすがです閣下!」と何度も呟いていた。



その後周辺の片付けをしている3人組の所へ行き「サボったら酷い事になるかもしれないから気を付けてね」と満面の笑みで伝え終えると森の家へとアンヌと2人で帰る事にした。



〜〜〜〜〜〜


森の家へと戻ってきた俺は一連の騒動をリノア護衛の任に着いてくれていたアルへと説明をした。


説明を聞き終えたアルはこめかみを抑えながら自分の想像より遥かに多い人数に驚いてはいたが、リノアを完全に殺す気で来ている事を感じ取ると怒りの表情を垣間見せていた。


それと同時にそんな大人数相手に無傷で戻った俺とアンヌを何か化け物でも見たような表情をしながら見つめていた。


ただ、アンヌだけは〝閣下なので当たり前です〟とさも当然の事のように澄まし顔で俺の後ろに控え立っていた。


ちなみにリノアはまだ熟睡中らしい、実際40分程しか経ってないし当たり前なのかも知れないが、普通はあんなに騒がしかったら起きるだろうとは何気に思った。



その後はリノアがやっと起きてきたので、アンヌはご飯の準備に向かい、アルはそのまま護衛の任務続行のようだ、一人になった俺は外へと出ると、あの私兵が使っていた武具を回収する事にした。勿論リノアには今回の騒動は一切伝えていない。


俺が森へと姿を表すと片付け中の三人に緊張が走ったのが伝わった、俺が3番目を呼びつけ死んだ奴らが使っていた武器は何処だと聞くと物凄〜く落ち込んでから、何かを諦めるような瞳をしてから俺の事を武器が積んである荷馬車の所へと案内し始めた。


荷馬車へと俺が案内される様子を見ていた、1番目と2番目も遠目からでもハッキリと把握出来る程に落胆の色を見せていた。


荷馬車の前まで行くと俺は明らかに一箇所おかしな所に気が付いた。


「え?こんなに俺たちに迷惑かけておいて自分たちだけ美味しい思いをしようとしていたんだね?」


俺が3番目に真顔で伝えると、激しく首を横に振り始めた。


「だって隠し事してるじゃん?」


俺はそのおかしな箇所を指差しながらジッと3番目へと視線を送る。


「…っ、い、嫌だな…勿論お教えするつもりでしたよ?ま、まさか隠し事なんて…。」


更に追い討ちを掛けると一瞬3番目は1番目と2番目を見てから、申し訳ない顔をし荷馬車の中央付近にあった〝色の違う板〟を涙目で外し始めた、その様子を更に遠くから眺めていた二人は頭を抱えながら何かを叫んでいた。


隠し板の中にあったものは私兵が持っていた金貨や銀貨の詰まった袋だった。こいつらは死んだ仲間からお金を回収していた様だ。俺が魔法で殺した相手からも回収できたのか確認すると、どうやらちゃんとした鎧を着込んで懐に金貨を入れていた相手からは少し焦げたりはしているが結構回収できたとの事だった。


俺は押し入れボックスから何か入れ物がないか探したが見つける事ができず、諦めかけた時、台風や水害対策で買い込んでおいた土囊袋の存在を思い出した。俺はそれを取り出すとその中に金貨、銀貨、銅貨で綺麗なものだけ仕舞う事にした。この私兵団は思っていたよりも裕福な集団だったようで、その理由を聞いてみると盗賊なども定期的に襲って金品を奪っていたらしい、絶対に普通の商人なんかも襲っていただろうと思ったが言わないで置いてあげた。


仕分けを終え、総額の確認をすると、金貨27枚 銀貨189枚 銅貨455枚もあった。焦げた貨幣もこの中に含まれ得ているが血のついたものは含まれていない、血のついたものはそんなに多く無く、金貨2枚 銀貨16枚 銅貨31枚だった。


俺はこの血のついた貨幣の手入れを2番目に命じることに決めた、さっきから少し睨んでいたからだ。早速2番目を呼び出し井戸水を使って綺麗にして来るように命じ、ついでに頑固な汚れも落として来るように付け加えてから、お中元で貰っていた洗剤と金束子を手渡すと〝しっかりと磨き上げて来てね!〟と笑顔で見送った。


その間に俺は武具の確認をする事にした、はっきり言って使えそうなものは殆ど無かった、槍も鑑定をしてみたが唯の鉄の槍ばかりで、少々落胆した、剣については、ベイランド君が持ってた鋼の剣がミスリルの剣を抜いて考えると一番だったので回収しておいた。防具なんかは黒焦げにしてしまった物ばかりで使えるものが殆どなかった、ただ、これもベイランド君が持っていたものなのだが、力のバングルというモノがあった、これはアルに良さそうなのでもらっておく事にした。


俺は家に帰る途中で貨幣を受け取る事にした。俺が声を掛けると緊張した面持ちで2番目が今洗ったばかりの貨幣を見せて来た。

少し弄って遊ぼうかとも思ったが、彼には森の掃除がある事を思い出し、グッと耐えておいた。


物凄く真剣に洗ったのであろう、貨幣はどれもまるで新品のようにピカピカに輝いていた。俺は満足そうな笑みを洩らすと安心したのか何故か泣きそうになっていた。俺は2番目の肩を叩いてから労いの言葉をかけ、洗剤や貨幣を回収してから家の中へと入った、その際何だか物足りない様な顔を2番目がしていた気がしたので、次は弄り倒してあげようかと心の中で決意を固めた。

お読みいただきありがとうございます。

面白い、続きが気になると感じたらブクマ&評価をよろしくお願いします。

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