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フスマin異世界  作者: くりぼう
第一章
32/79

32 家臣ゲットだぜ

読者の皆様、ブクマ、評価、誤字報告ありがとうございます!


先程のミア(リノアのママ)と友達になった発言を聞いてからのリノアは驚く程にしつこかった。


あれからずっとリノアから質問(じんもん)を受け続けている。


いつ何処でママに会ったのか?


どうやって知り合ったのか?


どんな話をし、どんな経緯(いきさつ)で友達になったのか?


どうしてリノアにそれをすぐ言わなかったのか?


もうずっとこんな調子で俺に纏わり付いてきて正直動き辛くて仕方がない。


「あ゛〜〜っ!もう鬱陶しい!さっきから説明してんじゃねーか!」


「だって、だって気になるんだもん!」


母親の話が聞ける事に嬉しいのは分かるが、何度も何度も同じ事を説明させられて、さすがに俺も苛立って来ていたのだが〝そんな事は知ったことではない〟とでも言うようにリノアは鼻息荒くふんすふんすとさせながらグイグイと顔を近づけて来る。


「だぁーもう、今はそれはいいの!」


俺は余りのしつこさに気持ちがだれ気味になってしまい、リノアの頭を押さえつけひっぺ返しながらアルキオスへと質問をすることにした。


「あのさ、アンタさ、リノアの事誘拐する気なかったんじゃないの?」


アルキオスはギョッとした顔をしたが直ぐに笑みを含んだ表情へと戻ると質問に対して質問で返して来た。


「どうしてそう思われたのか伺っても?」


「いや、だって普通に考えたらおかしいでしょ?家まで用意してオマケに妹まで助けてもらってさ?それにあんたはそこまで不義理じゃないと思うんだけど?まぁ〜話してみての俺の勘だけど?」


俺がそう告げるとアルキオスは思わず〝ぷっ〟と吹き出した。


「いやぁーまったくどうして…えぇ仰る通りですよ、もし、リノア様に危険が及びそうな時はこの身に代えてもお助けするつもりでした…。ですが、その必要はまったく無かった、リノア様を守ってくれる方をちゃんと御自分で見つけておられた。」


「パパは守ってくれるけど別にリノアの護衛じゃないよ?パパはパパだよ?」


リノアは俺の事を護衛のように扱われたと思ったのか、いつもの聡明さは微塵も見せず、捲し立て年相応な子供の様な否定を口にした。


「そう、それです、パパというのは一体どういう事なのでしょうか?」


「「うーん」」と俺とリノアが同時に唸り声をあげ俺がリノアへと視線を向けるとリノアも頷いていた。


「まぁ〜いっか?」


「うん!」


「まぁー別に隠してるわけじゃないんだけど…とりあえずこれ見たらわかるんじゃない?」


俺は身分認証プレートを取り出すとすぐに魔力を通した。


【名前】アリヒト・フォン・コンノ(32)

【性別】男

【種族】人族

【階級】上流階級 貴族 

【爵位】公爵 

【職業】公爵家当主


身分証を見せた瞬間、アルキオスは絶句して直ぐさま平伏した。


「こ、これは公爵閣下とは知らず、た…大変ご無礼を………どうか平に…平にご容赦ください!」


その姿を見た俺の口から思わず溜息が洩れる。


「はぁ〜やっぱこうなるんだね?いや、時代劇じゃ無いんだからさ〜今はそういうのはいいよ?」


それでもアルキオスは平伏を辞めない、その姿をジッと見ていると俺はいい事を思いついたとばかりに右手を軽く握りしめ逆の掌を〝ポン〟と叩き「もうまんたい、もうまんたい」と言ってみた。


ドヤ顔でリノアに視線を送ると、ちょっとそれ()()()()ネタなんですけど!とでも言いたげなジト目を俺へと向け、更に俺の顔が癪に触ったのか、久しぶりに脛を思い切り蹴り上げて来た。


(うん、全然痛く無い!うちの娘やっぱり可愛い!)


平伏したアルキオスは放って置いてリノアにも身分証を見せるように勧めた。


「アルキオス、とりあえずこれも見てみ?」


【名前】リノア・フォン・コンノ(8)

【種族】人族

【性別】女

【階級】上流階級 貴族

【爵位】

【職業】公爵令嬢


「・・・・・・・・・・」


「あーこいつまた固まってんじゃん!これリノアのせいだからなー?」


俺が肩を竦めながら言うとリノアが鼻息荒く食ってかかって来た。


「なっ!パパが見せろっていうからでしょー!!」


お互いに罪を擦りつけ合っていると5分後にアルキオスが再起動を果たしたのだが、実に醜い争いだった。


しかし俺は気付いているこの場にもう一人震えている人間がいる事を、ただ今は話を進める事を優先してその人物は放っておく事にする。


話を進めようにも平伏したままではそれすら出来ない為、リノアと二人がかりでなんとか説得をし取り敢えず家の中に入ってもらう事には成功したのだが今度はソファーへと座らせる作業に難航した、何でも平民がお貴族様と一緒の席に着く等あってはならないとか言い始めたのだ。


正直俺はもう付き合い切れなくなり、自分だけ座ろうとしたのだが、その際、物凄いジト目をリノアが俺へと向けて来た、どうやら俺が諦めたのを見透かされてしまったらしい、リノア…恐ろしい子。


先程震えていたガムテープぐるぐるの彼女も部屋の中へと入れ、床へと寝かして置いた。一瞬彼女の気絶したフリに笑いそうになったがグッと堪えた。


俺が彼女を床へと運び終え振り返ると何故かアルキオスが先にソファーへと座っていた、いや…別にいいんだけどさ…。


リノアが言うにはものすごく頑張って説得したらしいが、コイツはあざといからな…。


色々な疑念が俺の頭の中を駆け巡っていたが、これでやっと話を進行できると思い直し、テーブルを挟んで、俺とリノア、対面にアルキオスという形で座り合い、居住まいを正すとアルキオスへと向き直り話し始めた。


「まぁー今見た通り名実共にリノアは俺の娘なんだよね。」


「そうそう!パパの娘なんだよわたし」

リノアは自分を指差しながら満面の笑みでアルキオスへとそれを伝える。


「なるほど、それで閣下の事をパパとリノア様は…いえ、失礼しましたコンノ公爵令嬢は呼んでいらっしゃったのですね。」

アルキオスは納得したようにゆっくりと頷いている。


「「え゛っ」」


ついつい変な声が洩れてしまい、そんな俺達を不思議そうな顔でアルキオスが見つめてきた。


「いや、別に閣下とか言わなくてもいいけど?」


「わたしも名前でいいけど…」


俺たち二人の呟きを聞くと、アルキオスは一旦何かを考えるように顎を摩ると、遠慮がちに聞いてきた。


「ではリノアお嬢様と呼ばせて頂いても宜しいでしょうか?閣下の事は今後どうお呼びすればよろしいですか?」


「うん、いいよー!よろしくね、アルキオスさん」


「こちらこそ、宜しくお願い致します、リノアお嬢様」


リノアが嬉しそうに頷くとアルキオスも目を細めてとても嬉しそうな表情をした。


「あー俺の事も名前でいいよ?」


「いいえ、それは成りません!謹んでご辞退させて頂きます。」


この流れなら俺もそれで行けるのでは無いかと思ったのだが、深々と頭を下げ固辞されてしまった。上手くいくと思ったのだが残念だ。


「あーやっぱり?じゃもういいよ閣下で。はぁ〜」


俺は大きく息を吐き出すとソファーの背もたれへと(もた)れ掛かった。


これがきっと貴族としての立ち居振る舞いの第一歩なのだろうと頭では理解しているが正直面倒臭いと思わずにはいられなかった。


「それとリノアお嬢様、わたしのことは呼び捨てでお呼びください。」


「ふぇ?」


「貴族と平民とはそう言うものに御座います。それに貴方は公爵家の人間になられたのですよ?」


「あー待った待った!そういうのは追々でいい。」


「そうでしたか?はい、畏まりました、リノアお嬢様申し訳ありませんでした、差し出がましい事を申しました。」


「ううん、だいじょーぶだよ?アルキオスさんじゃなくて、アルキオス…?」


「はい、ありがとうございます」


アルキオスは笑顔で答えリノアもにへらっと釣られるように笑顔を返していた。


俺はそれを見てある事を決めた。


「ところでアルキオス、お前まだ男爵家に仕えるつもりなのか?」


アルキオスは力なく首を横に振った。

「いいえ、もう、私は無理でありましょう、あの方は失敗を決してお許しにはなりません。それに……正直もう私はリノア様やリュノミア様を形だけとはいえ裏切るようなマネはしたくありません。」


その返答を聞いた俺はまた悪い癖が出た、そう、俺は形から入るのが大好きなのだ。


俺は出来る限りのアニメやラノベで見たことがありそうな貴族を演じることに集中し、まるでマントでも羽織っているように〝バサッ〟と音がなるかの如く、右手を振り抜くとそのまま目の前に突き出しカッコよく決めてみた。


「ふむ、ならばアルキオス、俺に仕えろ!リノアの護衛官兼教育係になれ!!」


「…その本気でございますか?」


「ああ、本気だ」

俺は力強く頷いた。


「何故わたくしなのでしょうか?」

期待と不安が入り混じったような表情で聞いてきた。


「なんだ、そんな事聞いて来るのか?そんなのはリノアが気に入ったからに決まっているだろう、仕方のない奴だな、もう忘れたのか?俺はリノア最優先だぞ?」


公爵閣下を意識した口調でハッキリと言い切る俺にアルキオスは嬉しそうに笑う。


「全く閣下には敵いませんな。」


アルキオスは俺の目の前まで来ると片膝をつき頭を下げて臣下の礼をとった。

「不肖の身なれど、今後このアルキオスが持てる全身全霊を持ちまして、閣下とリノアお嬢様へ忠誠を誓わせていただきます。」


「やったー♪アルキオス一緒?ねぇーお昼も一緒?」


まるで天にも登りそうな愛娘の姿を尻目に、そんなに俺の仕事中、寂しい思いをさせていたのかと俺は心の中で謝罪をした。


だが真相はただ〝暇だっただけ〟と言う事を俺が知る事は生涯無かった。


「あぁ、そうだよ、アルキオスよろしくな!」


俺はアルキオスの肩を軽く叩くとある事を提案してみた。


「あ、そだ、アルキオスって長いからアルって呼ぶぞ?いいか?」


「えぇ、勿論です閣下。」

アルキオスは笑顔で頷いた。


こうして俺に初めての家臣ができた。

お読み頂きありがとうございます。

面白い、続きが気になるそう感じましたらブクマ&評価の方よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これで一件落着ですね あれ?誰か忘れてるかも? 更新ありがとうございます
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