26 鑑定の可能性
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俺は外回りへと出掛ける前に一度営業課へと戻りホワイトボードの自分の欄に『直帰』する旨を書いておこうとしたのだが…係長がずっとこっちを何故か睨んで来ているのだ。俺はタイミングを掴むべく、ジッと耐え視線だけで係長を監視し、チャンスを見逃さない様に気を張りつつその瞬間を待った。
そんな攻防の中、またしても新山さんが異変に気づいてくれ係長に声をかけてくれた。新山さんに声を掛けられた係長はでれ〜っとした表情へと変わり、俺への監視の目が完全に緩んだ。俺はその絶好のチャンスを見逃す訳にはいかず、ササっと素早くホワイトボードに『直帰』と書き込み声を掛けられる前に素早く営業部を後にした。
うん、これですぐ帰れるし、係長に会わずに済んで最高である。しかし、この神経をすり減らす様な攻防はバーレリアで魔物などを相手にする方が何十倍もマシだなと肩や首、腕等を回しながら営業先へと向かう俺の口から意図せず小さな溜息を漏らさせた。
そんな事があり俺の癒しは一体何処にあるのかと頭の中だけで探していると、ふとお留守番中のリノアの事が過り心配になってしまった。このままでは不安で落ち着かなくなってしまった俺は電話をかけて見ることにしたのだが、それと同時に昨日のことを思い出しついつい愛好を崩した。実は昨日の夜、今日から仕事なのでいつでも連絡が出来るように電話の使い方を教えておいたのだが、その練習風景が思いの外可愛らしく傑作だった。家に電話がかかって来たら音がなるので、受話器を取り耳に当てて家名を名乗る、実にシンプルで簡単である。しかし、元々家名を持っていなかったリノアにとって家名を名乗るという行動自体が恥ずかしく擽ったい感じがする様で、『はい、コンノです』『コンノか〜わたしコンノ令嬢なんだ〜うへへへっ』と何度も何度もそれはもう嬉しそうに繰り返しやっていたのだ、最初はほっこり見ていた俺もだんだんと酷くなっていきリノアの笑い声が『うひひひっ』に変化したときにはさすがに引いてしまった。
しかし練習していた娘の姿を思い出し、やっぱり何処かほっこりとした気分になった俺は胸ポケットに入れていたスマホを取り出し、娘がしっかりと出来るのか期待と不安に胸を膨らませながら自宅へと電話をかけてみることにした。
練習の甲斐もあってか、リノアはすぐに電話に出る事が出来たようだ。
『は、はいっ!コ、コ、コ、ココ、コ、コンノです!』
初めての電話という事もあり受話器の向こう側から少し緊張した様な声が聞こえてきた。
「もしもし、間違えました。」
『あ、パパ〜!えへへへっ電話できたよー♪』
「おう、今のでよく俺だと分かったな!家名もいつからウチはニワトリみたいになったんだよ!だが初めてにしては上出来だった!」
『でしょー♪』
電話越しでも胸を張った誇らし気なリノアの姿が浮かんで来るかの様だ。
「何か困ったりしてないか?ご飯食べたか?」
『うん、大丈夫、ご飯食べたよー!ラーメン食べた!』
「そっか、ちゃんとポットのお湯使ったんだろうな?火使うんじゃ無いぞ?」
『わかってるって!全然大丈夫だから任せてよー!』
「本当かぁ〜?じゃまぁー頼んだぞ〜あ、そうそう、今日仕事終わって家に帰ったら肉焼いてやるからな?」
『え、ウソ!?』
「ホントホント」
「なんて言ったけ、猪本君じゃ伝わんねーし…?あのバーレリア猪のやつな」
『あぁ〜ワイルドボア?うっそ!ワイルドボアあるの?』
「あ、それそれ。何度か狩ってるんだけど捌いてもらってたのがあるんだよ。冷蔵庫に入ってるぞ。」
『きゃああ!!やったぁ〜パパいつ帰ってくる?今から帰ってくる?』
「いや、今からは無理だろ!とりあえず、大人しくまってろな?また連絡するからさ。」
『はーい♪』
「あ、カギ絶対あけんなよ?」
『りょうか〜い、パパがんばってねー!』
「おう!」
元気なリノアの声を聞き安心した俺はスマホの電源を切り、その足で取引先へと向かった。
取引先の相手とはすぐに会う事が出来たという事もあり思った程には時間は掛からなかった。
その後数カ所、他社を回ったが、どこも似た様な感じですぐに終える事が出来た。ただ、不思議なことに今まで話すら聞いてくれなかった他社のお偉いさんが、何故か話しかけてきてくれて、小さいながらも契約を一つ取る事が出来た。
…何故だ?
予定外の成果を上げる事も出来て特にやることも無くなった俺は少し早いが須藤と約束したファミレスへと向かうことにした。予想通り俺の方が先に着いたようで、ファミレスについた旨を須藤にL◯NEで伝えておいた。
俺はドリンクバーを単品で注文し、注いできた烏龍茶を飲みながらボーッと待っていた。
そういえば、日本でも鑑定って使えるのかなとふと気になり目の前のグラスを鑑定して見ることにした。
◆コップ
【概要】 ガラス製のコップ日本ではごく一般的なあり触れたもの。
【価格】 銀貨4枚
「はぁーーーっ?」
俺は驚ろき過ぎて思わず大声を出してしまった、その俺の声に反応するかの様に周囲の訝し気な視線が俺へと突き刺さる、俺は居た堪れなくなりその場からまるで逃げ出すかの様な勢いで頭を下げながら謝罪を決行しすぐに鑑定結果へと意識を向けた。
(おいおいおいおい、これやべーな!こんなドリンクバーのコップなんて1個300円くらいで買えるんじゃねーの?銀貨4枚ってあっちじゃこのコップは20000円の価値が有るのかよ。)
他にも何か掘り出し物があるかもしれないと思い立ち、俺は目に着くあらゆる物を鑑定しまくったのだが結局一番利益効率が良さそうだったのは最初のコップだけだった。
一通り鑑定も終え、これは金の匂いがしてきたぞ!と胸を高鳴らせていると俺以外にも煩く、周囲から明かに迷惑がられているグループが1組いる事に気が付いた。そのグループに視線を向け一体どんな人達なのか確認する様な視線を向けていると、中に一人見知った人物がいる事に気がついた。
(ん?あれは……えーっと誰だったかな……帰り際名前呼ばれてたんだよな……)
考え込んでいるとどうやら相手もこちらに気づいた様でゆっくりと着ているスタジャンのポケットに手を突っ込んだまま、まるでチンピラの様に肩を揺らしながら俺の席へと近づいて来た。
俺がその人物に視線を向けるとほんの一瞬、だが確かに相手と視線が交わった、相手の視線からは物凄い殺気が感じられた。
ただ、どう考えてもゴブリン以下だったので放置し今現在近づいてくるこの人物が一体誰だったのかを思い出す事に思考を巡らせた。するとある夜の場面が頭を過った。
(あっ!)
「おい、おっさ「ゴリタ君!」ん…ケンタだよ!!」
俺は目の前にいる人物に全く気付くこともなく、喉まで出かかっていたことが一気に溢れ出たことにあまりに嬉しくなりついうっかりと本人の名前を口に出してしまっていた。
「え。嘘はダメだよ?俺思い出したんだぞ?ゴリタ君」
俺が更にそう続けるとゴリタ君はプルプルと震え出し、胸ぐらを掴んできた。
(はぁー最近の若者は沸点が低いな)
周囲を見回すと他のお客さんは興味津々な視線を向け、店員さんは顔色が青冷めているのが視界に入り込んできた。これからが面白くなる所なんだけどなと少し不満に思う気持ちはあったが、ここは異世界ではなく日本である事を思い出し、渋々ながら店に迷惑を掛ける訳にもいかず、ケンタを揶揄う事を中断する事にした。
異世界なら良いというわけでも無いのだが…。それでも明らかに異世界だと日本にいる時よりもはっちゃけている自分がいる事も確実に俺は気付いていた。
「はぁーもういいよ、いじるのはこれくらいで…それで何の用だよ、ケンタ?」
ケンタは目つきを鋭くさせ、親の仇でも見る様に睨みつけてきた。要は〝ガンを飛ばす〟と言う奴である。
「別に用事じゃねーよ!ただ…まだ、俺とやるまで誰にも負けてねーだろうなって確認だよ!」
俺はポカーンとした顔をつい浮かべてしまった。
(え、この子なに言っちゃってんの?おじさん恥ずかしいんですけど、え、ちょっとそれ本気の確認ですか?)
俺はそんな事を考え返事をするのが遅れてしまったが何とかギリギリ突っ込んだ。
「いや、お前少年漫画の読みすぎだから!!」
「チッ、本当にうぜーおっさんだな!これでつえーんだからやってらんねー。」
舌打ちを鳴らしさらに目元を鋭くさせ睨み付けてきた。
俺は異世界で度胸がついたのか、ケンタが何をしようが、どんなに睨み付けて来ようが全く何も感じなくなっていた、以前は怒らせるだけで『あ、これ死んだ』とまで思っていた相手だったはずなのだが…しかしよくよく考えてみると異世界に行って俺がやっている事を考えてみれば今回異常なのは間違いなくケンタの方では無く〝俺〟の方である。
コンビニでの事からそんなに時間は経ってはいないのだが等と考え込んでいると何やら嫌な視線を感じた。
視線の先を探るとケンタの連れて来ている奴らからだった。
(あぁ、あの目は駄目だ、あれは弱者を痛めつけて悦に入る奴らの目だわ。)
「なぁ、ケンタ、あれはお前の友達か?」
「だったら、なんだよ?」
一瞬戸惑った様な表情を見せたが直ぐに睨む様な目つきに戻った。
「いや、まだあのイケメンの方がマシだわ、あいつ一緒じゃねーのか?あと彼女は?」
俺は烏龍茶を飲みながら新しいお友達を横目で確認しつつ聞いた。
「テメェーには関係ねぇーだろ!」
何か地雷を踏んでしまった様で物凄く怒らせてしまった。全くお子様はこれだからリノア以外可愛く無いんだよ等と思いながらも俺はこのままじゃなんと無くケンタがダメになる気がして少しだけ殺気を解放しながら忠告をする事にした。
「いいか、友達はちゃんと見てから作れ!もう言わねーぞ?」
「チッ…ホントうっぜ〜、何なんだよ一体…。」
ケンタは額に汗を流しながら震えていたが、殺気を解いた瞬間に虚勢を張りながら新しいお友達と共にファミレスを後にした。ただ、その際何か寂しそうなそんな孤独な瞳をしている様に感じ、ケンタ達とは〝襲い襲われた〟仲でしか無いはずなのに何故だか無性に気になった。
新しいお友達は俺に対して敵意を完全に向けて来ていた。中でもチンピラみたいな鼻にピアスをした金髪の男はここがファミレスじゃ無ければ間違いなく攻撃を仕掛けて来ていただろうと思うほどの敵意を向けてきていた。
(ふむ、余計なお世話だったか、意図せずおっさんの称号『YOKEINAOSEWA』を手に入れてしまったな……)
それから5分くらいまたぼーっとしながら待っていると須藤達がやってきた。
え、何で1人じゃ無いの?
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