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フスマin異世界  作者: くりぼう
第一章
24/79

24 親娘の証明その2


「それでさぁ、登録明日でいいか?もう夜だし森危ないからさ?」


テーブルの上に常に置いてあるミカンに手を伸ばし皮を剥きながらリノアに聞いた。


「当たり前でしょ?夜の森の中移動をする人なんて居るわけないでしょ?」


リノアが何故か俺が剥いたミカンを一房先に口に入れる。


「いやさ、こう言うのって早い方がやっぱ安心かなっと思ってさ〜」


俺は自分が剥いたミカンを死守する様に半分に分けて一房減った方を一口で食べた。


「そうだけど、王都に行くんでしょ?わたしは入れないんじゃないの?」


リノアが残りの半分に手を出して来た、俺は左手で叩き落とす。


「あぁ〜もう別にいいじゃない!それ美味しいけど剥くの面倒くさいんだもん!!」


リノアが唇を突き出し、不貞腐れながら更に手を出そうとしたので、俺は自分のミカンに息を吐く様に唇を震わせ音を出しながら唾を振りかけた。


「ぐぬぬぬぬっ!本当どうしようもないよね!」


リノアは諦めて自分で剥きはじめた。


俺はそれを見て『勝った!』と内心ほくそ笑んだ。


「…で?」

リノアが少し怒った様に何かを聞いて来た。


「で?ってなんの質問だよ?」

俺は先ほどの勝利が消えずニヤニヤ顔で聞き返した。


「だから、その顔をまず止めて!!それで王都へはわたし入れるの?」

目つきが若干鋭くなっておりイライラが爆発しそうになっている。


「あぁ、それなら公爵パワーで何とかなるんじゃね?」

俺はこれ以上は危険だと判断し、素の顔で答えた。


「だから、その顔本当止めて!!」

そう言うと俺の頭にゲンコツを落として、ドンドンと力強く足音を響かせリノアはトイレへと向かった。


「何故に?俺普通の顔だったじゃん…」



〜〜〜〜〜〜〜


戻ってきたリノアは俺にゲンコツをした事で怒りが治まっていた。


「なぁーリノア、お前なんでママ居るのに俺の娘になるなんて言ったんだよ?」

俺は不思議そうに聞いた。


「え、何で?パパ居ないから大丈夫でしょ?」

リノアも意味がわからないと言う表情を俺へと向けてきた。


「はぁ〜お前それで通じると思ってんの?」

俺はこめかみを軽く押さえながら目蓋を閉じた。


「うーん、やっぱり分かるよね?」

リノアは苦笑いを浮かべる。


「まぁーな、お前ほど頭良くて分かんないはず無いだろ?」

ソファーに凭れ掛かりながら答えた。


「あ〜えっとね?恥ずかしいんだけど、1番の理由は寂しかったからかな…さっきも言ったけど本当に嬉しかったし、もう一つの理由はね…」

申し訳なさそうに言い辛そうにリノアが口籠る。


「何だよ?そんな酷い事なの?俺が泣いちゃうレベル?」

ジト目でリノアに視線を送る。


「パパが最初にわたしと一緒に住もうって説得してくれた時、自分の気持ちを嘘偽りなくぶつけてくれたでしょ?」

リノアは当時を思い出して嬉しそうな大事そうな表情をしてニッコリと微笑んだ。


「まぁ〜必死だったからな…。」

バツが悪そうな顔をして顔を背けた。


「それがあったからかな、この大人は信用できるって直感したの。それでわたしが居なくなった時にママを支えて欲しいって、そう思ったから娘にして貰ったんだよ?」


「…ふーん、ただ、居なくなることは未来永劫無いけどな〜。」

恥ずかしくなって素っ気無く返す。


「あ、でもさ、言葉悪いけど、俺に金貨を準備して貰おうとか思わなかったの?」


俺の質問を聞いてキョトンとした後ケラケラと笑い始めた。


「あ〜可笑しい、パパそれ本気〜?あ〜お腹痛い♪」


「な、何がそんなに可笑しいんだよ!」

俺はムスっとした顔で問いかける。


「いやだってさ〜さっきは驚いたけど…ふふっ、普段のパパを見てて何処に金貨を期待する要素があるのよ♪あははは♪」

余程可笑しかったのか?リノアは涙を流しながら笑い始めた。


俺は一瞬言い返してやろうかと思ったが、目蓋を閉じて少し自分自身を振り返ってみた。


(ご飯は常にコンビニ、精神的にリノアに支えられ、オオカミに泣かされ、貴族になってテンパリ、ミカンに唾をかける…うん、無いな、一つも金貨持ってそうな要素がない!)


俺は自分自身の不甲斐なさに打ち拉がれ項垂れていると、リノアが笑いながら声をかけてきた。


「まぁーまぁーパパのそこが良いところなんだから元気出してよ、はい、ミカン食べる?」

剥いたミカンを俺へと手渡してくれた。


「ありがとう、お前良いやつだな…。」

(しかし、何処が俺の良いところなんだろうか?オオカミに泣かされる所か?まさかミカンに唾をかける所じゃないよな…)


そんな下らない話をしながら、夜を過ごし、俺とリノアは明日に向けて少し早めに眠ることにした。




〜〜〜〜〜〜〜〜


翌朝、リノアは何故か口数が物凄く少なかった。


最初機嫌が悪いのかとも思ったのだがどうやらそうではないらしい。


詳しく話を聞いてみると、なんでも王都へ行くのが初めてで緊張しっぱなしなんだとか…。


(しかし、リノアにもちゃんと服を着せて王都へ連れて行ってやりたかったなぁ、まぁ、今回はいかんせん急な王都行きだったから仕方ないんだけどさ、日本で買った服だから別におかしいって訳じゃ無いんだけどさ、貴族令嬢に見えるかっていえば微妙つーかなんつーか…門番が心配だけど、公爵パワーで乗り切るしかないか…。ちなみに俺は普通に仕事用のスーツを着ている。正直こっちの貴族には会ったことがないが、今来てるスーツで十分だと思うんだよな。俺の服は必要に迫られたら買うってことで良いかな…。)


「よし、リノア準備おっけ〜?」


「うん、大丈夫だよ?それよりパパ魔物平気?問題ない?」

リノアが不安そうな顔で確認をしてきた。


「あー大丈夫大丈夫!熊田さんまでなら余裕余裕。正直それ以上は遭遇した事がない!」


「くまださんって誰よ?」

リノアがジト目を向けてくる。


「あー日本の熊みたいな奴分かる?」


「うーん、全然分かんない…」

不安そうに俺を見上げてくる。


「まぁ、大丈夫だから戸締りして行こう!」


俺はそう言うと強引に森を進み始めた『リノアが待ってよ〜』と後ろで叫んでいるが時間は有限なのである。


そんなこんなでバタバタした出発になったが、2人で王都までと言うより異世界を歩くのは初めての事なので正直楽しい。


リノアもなんだかんだ言って楽しそうなので良かった。


しかし、そんな時には邪魔者が現れるのが世の中のテンプレと言うもので早速緑のおっさんが1匹現れた。


リノアを見てみるとやはり怖がっている様で『ぎゅっ』と俺の腕にしがみ付いてきた。


俺はリノアへ安心させる様に優しく『大丈夫だから』と告げるとゆっくりと腕を離した。


と、そこで違和感に気付いた、俺は緑のおっさんとリノアを見比べて首を傾げた。


(うーん?気のせいかなぁ…。)


物思いに耽っていると『パパ、パパ逃げる?逃げる?』と心配そうに聞いてきた。


どうやら俺がビビっていると思われた様だ。


(俺とことんダメな奴だと思われてんなぁ〜)


何だか無性に泣きたい気持ちになったがそこはグッと我慢して、緑のおっさんの目の前まで歩いて行き、『ギィーギィー』煩かったので、腹パンして帰ってきた。


リノアが信じられないものを見る様な顔をして、俺と緑のおっさんに交互に視線を送っていた。


「パ、パパ一体何したの?」


「え?見てなかった?腹パンだけど?」

俺はリノアへ『お前大丈夫か?』という視線を向ける。


「い、いや見てたけど…え、嘘…」

そう言いながら動かなくなった、緑のおっさんをじっと見ていた。


俺はリノアの前だしどうしようかと悩んだがそもそも、教えてくれたのもリノアだったと思い直し、ゴブリンから魔石を抜き取ることにした。押入れボックスから以前拾ったナイフを取り出し、手慣れた手つきで素早く魔石を抜き取った、さすがに腹パンでは魔石は壊れなかった様で安心した。


その作業の手つきにもリノアは驚いていた。


(俺本当どんだけダメな子なのよ?これくらいできるわ!)


魔石を押入れボックスへ片付けるとすぐさま今度は猪本君が表れた、俺は久しぶりと言いながら今日はリノアもいるので余り巫山戯ているわけにもいかないと思い、素早く押入れボックスから槍を取り出して、魔力を這わせて、物凄い勢いで突進してくる猪本君の眉間をそのまま挿し貫いた。


そんな俺の様子をまたしてもリノアは瞳を大きく見開き口をあんぐり開けっ放しにしてジーっと見ていた。


(あれ?これひょっとして調子に乗るチャンスじゃなかろうか…)


俺は即行動に移した。口角をニヤリと上げて両手を腰に添え胸を張り少し空を見上げる様にして言い放った!


「あははははは、どうだ!お父様めちゃくちゃすげーだろ!!こんなに強いんだぞ!」

今世紀最大のドヤ顔である。


「………………」ウンウン

リノアは本気で驚いていたらしくただ頷くだけだった。


そんな様子を見ながら俺は『あ、何か本気の反応はつまんないや』とドヤ顔を少しだけ後悔していた。


ちなみに猪本君は押入れボックスへと放り込んで置いた。


その後も熊田さんやゴブリン、オオカミにと俺の遭遇した魔物フルコンプリートでやってきたのだが、特に問題無く対処する事ができた。


リノアもなんだかんだ言って慣れてきたらしくもう別に驚かなくなっていた、正直それはそれでつまんない。


ちなみに頭の中で1回だけレベルアップの声が響いた。


森を抜けて、後1時間で王都といった所でふとリノアを見てみるととても辛そうにしていた。


「リノア疲れたのか?休むか?」


「大丈夫、頑張れる!」

リノアは苦笑いを浮かべながらも膝に来てるらしくガクガクと少し震わせていた。


「いやいや、大したものだって、ここまでよく頑張ったよ?という事で、ハイ。」


俺はリノアの前に屈んで、おんぶ受け入れ態勢に入った。


「え。パパ何?」

リノアはキョトンととした顔をして首を傾げていた。


「何っておんぶだよ?ほら行くぞ?」


断られるかなと思っていたがさすがに本気で疲れていたらしく『パパありがとう。』と恥ずかしそうにしておぶさって来た。


(あれ?俺なんか今お父さんぽくね?)


俺は力が溢れて来て結構な速度で走り回っていた『しまった!』と思ったがセーフだった!後ろで滅茶苦茶楽しそうに笑い声をあげてました。


それから少し経ってから目の前に見覚えのある2人組の姿が視界に入って来た。


俺は面倒くさいなと思いながらも無視するわけにはいかず、一応声を掛けることにした。


「あ、森にいた女騎士さんですよね?こんにちわ。」


俺が背後から声を掛けてしまった為、振り向く時に一瞬警戒の色を見せたが視線が俺に向いた瞬間、その色は消え寧ろ笑顔になった。


「おー貴君はあのブラッドウルフの時の、魔獣の森にいた者だな。あの時はアーレンが世話になったな!」

そう言うと女騎士は相好を崩した。


(あの森そんな物騒な名前なの!?)


「いえいえ、所であの騎士の方は?」


「おぉ、もう大丈夫だぞ、一時期は騎士も続けられないかと危ぶまれたが、今は問題ない、順調に回復していると言う事だ。」


「そうですか、それは良かった。」


俺が安堵の息を漏らすと、すぐに女騎士が何かを思い出した様にリノアへと視線を向けた。


「所でそちらが以前言っておった、貴君のお子さんか?」


「あ、そうですそうです。」


俺はリノアを一旦下ろし、出会いから別れまでを簡潔に説明した。するとリノアは俺が騎士を助けた事が嬉しかったのか、笑顔で『そうなんだ』と言いながら微笑んでくれた。


(最低な考えなのは理解しているがやっぱ騎士より娘だろ、なんかすまん騎士。)


そんな事を考えて居ると、リノアが自己紹介をはじめていた。


「はじめまして、パパの娘のリノアです、よろしくお願いします。」

ちょこんと可愛らしく頭を下げた。


「これは申し訳ない、私はレイシアという、こっちがローデックだ、よろしく頼む!」

そういうとレイシアは左手を胸に添え綺麗なお辞儀をした。


ローデックという老人も同じ様なお辞儀をしてから俺へと視線を向けた。


(え、なに?無口キャラかなんかなの?)


そんな事を考えていると女騎士がジト目を向けて来た。


「コラッ!貴君も名乗らぬか!」


「あれ?そういえば名乗ってませんでしたね?いやーすみません。」


俺が謝ると女騎士はさらに何かを思い出した様に俺に呆れ顔を向けて来た。


「そうだぞ、全く貴君は…大体あの挨拶は何だ!あれは男性のするものではない、そんな事も分からぬのか?少しは勉強して教養を身につけぬとだな……」


何故かめちゃくちゃ怒られ出した、しかも長そうな奴である。


ローデリックという老人もこめかみを抑え、リノアも困ったような顔をし始めた。


俺はその説教を黙って15秒ほど聞いてから、面倒臭くなって来たのでサッとリノアをおんぶしてから逃げる準備を始めた。


「あ、あのすみませんが王都へ昼食の材料を買いに行きますので、また後ほど!!」


そう言ってローデリックさんに視線を向けると頷いてくれたので俺も頷き返してから、速攻で逃げた。


(さすが気が合うと思ったんですよ、ローデリックさん、マジ最高っす!)


後ろの方で「あ、貴様はまた逃げおって!次は容赦せんぞ!」という怒鳴り声が聞こえて来たが気にしないことにした。


(ヤレヤレ、貴君から貴様に格下げになりました、そもそも貴君の時点で下でしたけどね!)


〜〜〜〜〜〜〜〜


リノアをおんぶしてから全力ダッシュをしたおかげかあっという間に王都の門へと到着していた。


リノアを下ろし歩いて門前へと移動するとすぐに門番の男が声を掛けて来た、どうやら以前の門番とは違う男のようで、訝しげな目を俺とリノアへと向けて来ていた。


(仕事だとは思うけどさ?いきなりその目は無いんじゃない?)


俺がそう思っているとリノアはやはり『わたしが零民だから…』みたいな悲しそうな不安そうなそんな表情をしていた。


俺はそんな表情をリノアにさせた門番に対して激しい怒りを覚えていた。だから公爵らしく偉そうに振る舞うことにした。


「おい、お前さっさと身分証を確認しろ!」

自分でも思っていないような低い声が出て来た。


リノアもそんな俺の様子に驚きの表情を浮かべている。


門番の男は俺の物言いに何か言いた気な目をこちらに向けて来ている。


俺がこいつを弄るチャンスを身逃がすわけがない!


「おい、貴様なんだ、その目は?何か言いたいことでもあるのか?」

俺は挑発する様に門番の男に言い放った。


「な、何だお前、その言い草は、ここを通して欲しいんだろ?ならもっと低姿勢に…」


下卑た笑みを浮かべながらそう言おうとした瞬間俺は身分証を提示した。


(俺は知っている、あの商人ギルドの受付嬢の態度がこの世界の階級の全てだ、こいつは絶対に逆えない)


【名前】アリヒト・フォン・コンノ(32)

【性別】男

【種族】人族

【階級】上流階級 貴族 

【爵位】公爵 

【職業】公爵家当主


やはり思った通り、俺が身分証を提示した瞬間、この門番の男は口を魚のようにパクパクとさせながら顔色を青白くさせていった。


「おい、通りたければ姿勢を何だ?もう一度言ってみろ!」


俺が威厳たっぷりに言うと門番の男は額から汗をダラダラと多量に掻き言い訳をはじめた。


「い、いえ、公爵様とは知らず、その…」


俺は目の前の男をゴミを見るような目で見下してからリノアの手を握ると通行の確認を取ることにした。


「あ〜もういい、それで通っても良いのか?どうなんだ?」

『勿論良いんだよな?』という脅しにも似た表情で聞いた。


「も、勿論大丈夫です、それでそちらのお嬢様は?」

目を泳がせながら門番の男が質問をして来た。


「ああ、彼女は私の娘のリノア、リノア・フォン・コンノだ、まだ幼い為、通行証を何処かに落としてしまってな、それで今日再発行に来たのだが、私が身分を保証しよう、問題ないよな?」

門番の男へと鋭い視線を送る。


「はっ!それは大変失礼致しました、何も問題ありません!」

門番の男は姿勢を正して敬礼をした。


「わかった」

それだけ言うとリノアの手を引き王都の門のを潜った。


リノアもドキドキした表情をさせ俺の後をちょこちょことついて来た。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「あ〜疲れた、ああいう演技は大変つかれますなぁ〜」

首を回しながらリノアへ視線を向ける。


「パパ。お貴族様ぽかった!怖かったけどカッコ良かったよ❤️」


リノアが目を輝かせながら言ってきた。


(おやおや?)


「リノアさんや、俺はお貴族様っぽいんじゃ無くお貴族様なんですよ?」


その足で俺とリノアはすぐに商人ギルドの門を叩いた。


中に入ると俺を担当してくれた受付嬢さんがいた。


「こ、これは公爵様、この様な小汚い場所へお越し下さりまして有難うございます❤️」


(もう、この人やだ、すげー睨まれてんじゃん、あれギルドマスターじゃねーの?)


俺は内心そんな事を思いながらもリノアの身分証を作りたい事を説明して先に料金を払いこの受付嬢さんに担当してもらうことにした。別の人だとまた一々説明が面倒くさいからである。決して睨まれているからではない!


リノアは俺の時と同じように隣の部屋へと入ることになった、ちなみに説明などは昨日に夜に俺がしておいた事を伝えた。特にこれと言った問題はなく滞り無く身分認証は終えた、終えたのだが…。


【名前】リノア・フォン・コンノ(8)

【種族】人族

【性別】女

【階級】上流階級 貴族

【爵位】

【職業】公爵令嬢


「なんで?パパこれ壊れてる壊れてるよ?え、貴族?新しいのに交換してもらわなきゃ!すぐやる?今から交換してもらう?というか、公爵令嬢?このリノア・フォン・コンノ様って誰?挨拶しなきゃ!パパ、公爵ってなんだっけ?そうだ!服よ!わたしこっちでの綺麗な服持ってないわ!ドレス、ドレスよ、ドレスを買わないと!!!」


(うん、もう大混乱だよね、わかる、わかるぞ、俺も何かもう色々やばかったからな!)


「リノアいいから落ち着け!」

そう言って俺はリノアを抱え上げて膝へ乗せ頭を撫でた。


「ふえぇぇぇぇん!無理だよ〜!何でいきなり貴族になってんの〜?それに何で公爵家?これ貴族階級の頂点だよ〜?私には絶対ムリ〜!零民だったんだよ〜?気持ちは今もまだ零民だよ〜!!」


(いや、気持ちは零民ってそれもどうなんだよ………)


「とりあえず、これを見てくれ。」


俺は自分のプレートへ魔力を通した。


【名前】アリヒト・フォン・コンノ(32)

【性別】男

【種族】人族

【階級】上流階級 貴族 

【爵位】公爵 

【職業】公爵当主


リノアが覗き込んできた。


「…………」


「要は完全な親子って事だろう」


それから俺は思い当たる原因とこれからの事について話した。


・この譲り受けた指輪が当主の証だった時点で間違いなくばーちゃんが絡んでいる事。


・指輪が光ったときにこの♨️の家紋がリノアにも出た事によって貴族になったと思われる事。


・ある人と街で知り合い話した時に身分を偽りながら生きて行くのは不可能だと考えた事、またその弊害により、これからは貴族としての立ち居振る舞いが必要になって来ると考えている事。


・この生活を守り続けていく為に色々な種類の力が絶対に必要になる事。


俺は包み隠さずにリノアへと全てを話した。


リノアは暫く考える様な顔をした後


「うん、わたしもそう思う」

覚悟を決めた表情でゆっくりと頷いてくれた。


「パパ、貴族になったのは全然嬉しくないしきっとこれから凄く大変だと思うの。でもこれはパパの娘になった証でもあるんだよね?


パパ、娘にしてくれてありがとう。


パパになってくれてありがとう。


零民から救い出してくれてホントにホントにありがとう!」

と目尻に涙を溜めて微笑んだ。


俺は機械の音が『ブーン』と鳴り響く部屋の中で一言だけ呟いた。


「お前さ、前から思っていたけど結構ずるいとこあるよね?」

恥ずかしくなり素っ気無くそう言うと俺はそっと顔を背けた。


読んで下さりどうもありがとうございます。

面白い、続きが気になると感じたらブクマ&ポイントお願いします、作者のやる気が跳ね上がります。

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