17 過激なリフォーム
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現在俺は絶望の渦の真っ只中にいた。
「いやいやいやいや…これどうすんだよ…」
俺はタバコを吸い天井を見上げながら呟いた。
「パパが何も考えないでやるから、こーなったんでしょ!!!」
リノアが顔色を真っ赤に染め眉間にシワを寄せながら睨んできた。
「うわぁーお前ずるいぞ!カフェオレに目を眩ませてやっちゃえーって言ってたの誰だよ!!」
俺はリノアにジト目を向けた。
リノアは視線を右の方へスーッと逸らしながら答えた。
「べ、べつに…カ、カ、カフェオレ関係ないし、やっちゃえーとは言ったけどこうしろとはいってない!!」
リノアが目の前の空白スペース、さっきまで壁があった場所を指差しながら言ってきた。
「ですよね…………はぁ〜……」
俺はため息を吐きながらリノアが指した方に目を向けた。
ついさっきまで壁だった場所は2本の柱に沿って綺麗に穴が空き柱の間に残った破片もノコギリ等に魔力を這わせて綺麗に処理済みである。穴の向こう側には土や石、砂等の壁の破片があちらこちらに散乱していた。酷いものになると破片が何かに当たった拍子に粉々に砕け滅茶苦茶に飛び散っている。
ハッキリと言って大惨事である。
「はぁ〜片付けるしかないか……これ押し入れボックスに大きな破片以外入れたらダメな気がするぞ…中がどうなってるのか分かんないけどド◯キャスに砂は絶対だめだろ!」
俺はボリボリと右手で頭を掻いた。
_____________実は昨日の夕食時、俺はリノアにある提案をしたのだ。
「なぁーリノア、この部屋に2人で寝て、生活するのってちょっと狭いと思わないか?」
「ん〜テーブルやソファーが置いてあるし確かに狭いかも?それにベッドも置いたしギリギリだよね…」
リノアは周囲を見渡しもう生活スペースがギリギリである事を理解し微妙な顔をした。
「でも、どうするの?あっちの家で一緒に暮らす?」
お茶の入ったコップを揺らしながら聞いて来た。
「いや、もっといい方法があるんだ!!」
俺はニヤニヤしながら言った。
「もっといい方法??」
訝し気な表情をしてこっちを見てきた。
「おほんっ」
俺は1つ咳払いをしてから堂々と言い放った。
「リノア君そんな顔をしていられるのも今のうちだけだよ!」
俺はキリッとした顔で偉そうに言った。
「はぁー?どうせまた適当な事言うんでしょ?」
リノアが肩を竦め面倒臭そうに言う。
「いやいや、今回の私適当ではありません。いつもの30倍は真剣です!『そうだ!狭ければ2つを1つにしちゃえばいいんじゃない?』と言う事で101号室と102号室を繋げたいと思います!!そうする事で、バーレリアの家も部屋として使え実質3部屋確保できるのでは無いかと思います!」
超ドヤ顔である。
「はぁ〜?どうやって?壁があるから無理だよ!」
リノアは『この人何言ってんの?』と言いたげな呆れ顔をしている。
「そこですよ、リノアさん!壁があるから無理、ならその壁を壊せば済む話なのです!そして身体強化を得た、今の私ならそれが可能だと思われます!」
そう言ってビシッと敬礼を決めた、どこぞの軍曹の様に。
「確かに、オオカミとの話を考えたら出来そうではあるけど……」
リノアが少しだけ腕を組み吟味し始めた。
更に俺はこのチャンスを逃してなるものかと凄い勢いで畳み掛けた。
「その作戦が上手くいけば、寝床を確保できゆったり快適空間へと生まれ変わりいつも充満していた変な臭いともオサラバです!」
ピクッとリノアが反応を見せた。
「そして広いスペースを確保出来れば料理等も今よりももっと凝ったモノにチャレンジできるはずです。そう例えば素晴らしき肉料理の数々をご提供できるかと思われます!」
ピクピクッと更に反応を見せる。
「極め付けは冷蔵庫も2台確保する事が可能になり、カフェオレも十分な数備蓄する事ができ飲み放題になるかと思われます!」
バンッとテーブルを叩く音が部屋中に響いた。
「パパ、それは大変素晴らしい提案だと思います、是非やりましょう!そして絶対に成功させましょう!」
「ハッ!ご賛同ありがとうございます!」
ビシッと敬礼を決めにやりと笑った。
そう、初めてパックのカフェオレを渡したあの日以来、俺はちょくちょく違うジュースも差し出していたのだ、しかしリノアが本気で反応するのはカフェオレのみ、アレを大層お気に入りな事は既に調べ済みである。
(娘よ、さすがにチョロ過ぎではないだろうか?お父さんは少し心配だよ………)
自分で乗せておいてこの言い草である。
_________________で。現在の惨状に戻る。
結果だけ言えば、綺麗に壁を打ち抜いたのだから、成功ではある、成功ではあるが、掃除の事も考えておくべきだった。
「よーし、やろう、リノア靴を履いて、バケツと雑巾もってこーい!」
「わかったー!」
そう言ってリノアは早速準備に向かった。
俺も靴を履き掃除機や、ホウキ、塵取りなどを取りに向かった。
102号室の掃除には細かい砂等も飛び散っており2時間も掛かってしまった。
その際、少し不思議な事もあった。
大きな破片がフスマの方まで飛び散っていたのだが傷1つ付いていなかった。運が良かったのかそれとも別に理由があるのか、よく分からない。
あと俺の身体強化は少しおかしいらしい。
リノア曰く普通よりも強すぎると言う事だ。
リノアはあんな風に壁を壊すのは100%無理らしい。
試しにリノアに破片でやってもらったら10㎝くらいの破片が少し欠ける程度だった。
うん、俺もおかしいと思う。
もしかしたら俺はチートなのかもしれない。
ただ、あの狼みたいな事がいつ起こるか分からないので慢心だけは気を付けておこうと思う。
片付けを終えた俺は昨日行ったホームセンターへもう一度向かう事にした。
102号室や、バーレリア側の部屋へ必要な家具などを買う為である。
リノアは家でお留守番をしながら日本語の勉強をしている。
(さて、何が必要かな……適当に絨毯や、カラーボックスの棚、あとはテーブルや椅子辺りかな?)
俺は思いつくままに必要そうなモノを購入した。
その際余りに量が多くなったので徒歩で持って帰る事が困難になりホームセンターから軽トラックをレンタルして家まで運ぶ事にした。
ちなみに30分2000円である、これは高いのか、安いのか…微妙な範囲である。
まぁー荷物を置くだけだし、20分もあれば余裕で返せそうではあるが。
家に荷物を運び終えた後、もう一度ホームセンターへ軽トラックを返しに向かう。
駐車場へ車を止めて、すぐにスマホからレトロな黒電話の音がした。
ジリリリリリッ……………
「はい、もしもし」
『お、有人か、元気にしてたか?』
「あ、じいちゃん、俺は元気だよ、それよりどうかした?」
『いや、どうもしてはおらんよ?元気ならそれでよい』
「そうなの?まーいいけど丁度俺も聞きたいことがあったし…」
『なんじゃ?やっぱり何かあったんか?』
「いや、まー有ったというか有りすぎたというか…ばーちゃんの事なんだけど…」
『ツーツーツーツー………』
(ゲッ、じーちゃん電話切やがったよ!)
俺は慌ててもう一度電話をかけた
「ちょっと、じいちゃん、切るのは酷くね??」
『ぐっ…すまん、華夜の事だと言うもんで条件反射で切ってしもたんじゃ………』
電話越しでもじいちゃんの遠くを見つめる様な視線を感じた
「いや、気持ちはわかるけども…」
『それで、それは電話で済む様な話かの?』
「・・・・・・・・・」
俺は少し考えてから答えた
「いや、電話では無理だな…」
『だったら、有人こっちへ1度帰ってこい、儂が行ってもいいがどうする?』
「じーちゃんに会わせたい人もいるし、まとまって休みが取れたら俺の方から行くわ。」
『何じゃ?別に時間もかからんじゃろ?』
「まーそうなんだけどね、俺もやる事があるんだわ」
じいちゃんは何かを考えたのか少し間を置いて
『………そうか、無理はするな』
とだけ言った。
「じーちゃんこれだけ答えて全部知ってるの?」
また少しの間沈黙してから
『……………ただ………』
『華夜は…そっちの方が面白いと言っとった……』
「・・・・・・・・」
俺、絶句である。
(何も教えなかったのはやっぱりそんな理由かよ!!)
『……………有人、お互い苦労するの』
「……………ホントにね……」
『まぁ、その何じゃ…がんばれ……』
「……ありがと、じーちゃん、近いうちにまた連絡するね、それじゃ……」
と言ってスマホを切った。
(じいちゃん、なんか疲れ切ってたな…ばあちゃんのとこへ婿養子に入るってすげぇ辛かったんだな…)
そして軽トラックを返しに行った時のレンタル時間は45分を超えていた。
更に、カフェオレ用の小型冷蔵庫を買い忘れてたのを思い出し、そのまま担いで帰る羽目になった。
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