目覚めた日 午前中
今私は走っている。
そして…今すぐあの脳筋親父を呪いたい!
お父さんから衝撃の事実を聞いた。午後から、狩りだって。うん、何が衝撃か分からないでしょ。だから言うけどね。私4歳!4歳の幼女だよ?!狩り?は?殺す気か!
…とは言わなかったんだけど、びっくりした顔をしたら、
「大丈夫だ。アメリアはもう十分実力があるからな。なに、最近この辺りの獲物を食い荒らしてるマンティコアを殺りに行くだけだ。」
いきなりマンティコアかよ?!確かあれだよね、ライオンの体に人の顔、尻尾はサソリみたいな毒針がついてるっていうやつだよね。そんでもって人肉が好きっていう…。やっぱ殺す気だよね。無理だって。嫌だって言おうとしたら、
「よし、まずは素振り500回!」
多いよ!幼女の筋力舐めんな!いかにも不機嫌なオーラを出していると、お父さんは大丈夫だ!ってバシバシ背中を叩いてきやがりましたよ。でもまあどうせ強制的にやらされるだろうから、仕方なしに剣を取った。自分より頭一個分くらい大きい剣。これもちあげるの?絶対重いじゃん!無理でしょ!これで素振り500回…お父さん脳筋だろ。ただの脳筋だろ!これも仕方ないのか…。と無理やり自分を納得させて、思い切り剣を振り上げる。ふわっと体が一瞬宙に浮く。そのまま尻もちをついて、剣の重みで手が後ろにいって、剣を持ったまま“バンザイ”の形になった。…あれ?
「どうしたんだ、アメリア。2、3日休んだら勘を失ったか?」
「だって、この剣軽い…。」
「なんだ、重いのがいいのか?」
いやいやいや!無理でしょ!この剣で軽かったんだから、私が重いって感じる剣なんてどのくらいの大きさになるか…!!
と、心の中で全力で拒否したけど、アメリアはしょんぼりして言った。
「ううん、重いのはいや。」
「アメリアが重いって感じる剣なんてそうそうないと思うぞ。それに、想像してみろ。小さな女の子が自分の数倍の大きさの大剣を振るっているんだぞ?かっこいいと思わないか?」
え、かっこいい。それだけで異名とかついちゃいそうじゃない?めっちゃかっこいいじゃん!怪力幼女万歳!
「かっこいい…?」
「ああ。そしたら母さんもお兄ちゃんも喜ぶぞー。」
「うん!じゃあ大っきい剣にする!」
そう答えると、お父さんは倉庫の方に行って、巨大な剣を担いで来た。…思ってたよりでかい。私の身長の3倍くらいの長さで幅は私2人並んだくらいだ。
いや、でかすぎだろ。いま私の身長はたぶん95cmくらいだと思うから……前世の私の実家にあったクリスマスツリー位でかいわ!!
お父さんがそっと剣を下ろす。
「持ってみろ。」
両手で剣を持って、そっと持ち上げた。するとさっきとは違うけど、案外簡単に持ち上がった。そこそこの重さでちょうどいい感じだ。
ただ…でかい。いや、分かってたけど、でかい。剣の先が見えなくて変な感じがする。せめて1.5倍くらいの大きさで、剣の幅?ももうちょっと細い剣があれば。あ、重さはこの剣くらいで。流石にないか…。だけか剣作れる人に作ってもらいたい。
とか考えつつ素振りを始める。いい感じかな。
素振りを続けながらお父さんがやけに静かなことに気づく。
そっとお父さんの方を伺うと、ぽかんと口を開けて固まっている。
わー、すごい間抜け面(暗黒微笑)。
顔には出さないけど、心の中ではめっちゃニヤニヤしてる。
「お父さん、どうしたの?」
「い、いや。その大剣を持ち上げられる奴なんてそうそういなかったからな。しかもその年で軽々持ち上げられるとは。やっぱり俺の子は天才だ!」
お父さーん。そうそう持ち上げられる奴がいない剣をなぜ4歳の幼女に持たせた。やっぱただの脳筋だな、お父さんよ。私、脳筋嫌いなんだよなぁ。話通じないから。
「というわけで、素振りは免除してやる!」
よっしゃ!お父さん大好き!
「飯食ったら狩りに行くぞ!」
脳筋め!嫌いだ!