修行内容
朝が来た。新しい1日の始まりだ。
全く、昨日のアゾさんの慌てようといったら酷いものだった。「僕の授業参観とか何とか言って来たら良いんじゃないですかね」と提案してみたものの、「でも、それだと先生に子持ちだと思われちゃうし、、」とか言ってくる。
いくら夫が3年前に老衰で死んだから一応「独身」ではあるからとはいってもだ。そこは妥協する点なんじゃないのか。
それはそうと、今日からどうするか、だな。
教科書を読む限り、今週末の実習の範囲まで分からないことは特になかったので座学の授業には一切出なくていい。戦闘訓練コースの授業も、今日は「迷宮学概論Ⅰ」と「パーティー編成・同演習A」だけだったので聴講する道理は無い。
となれば、することは決まっている。現時点での周波数の測定をしてから、入学前にやっていた鍛錬のルーティンを今日も繰り返すのだ。
まずは、周波数代入法による戦闘波の周波数の測定。今まで「気が向いたら確認すればいいか」程度に考えていたが、ガウスゼット様との模擬戦のことがあって考えが変わった。力量差を把握しておく為にも定期的に測定しておくことは必須だろう。
結果は80Hz。前回測った時より3Hz増だ。増分が「ランニング2日+邪ゴリラ討伐」と同じなのは心外だったが、とりあえず「永遠の二十歳計画」を基準に考えるならば順調と言えるか。
地獄でのバイトの時は「1か月で17Hz増」という驚異の成長率を示したが、あれはあくまで特殊な環境故のものだ。無理にあれを追い求めたりはせず、今のペースを守っていこう。
さて、今日の修行だ。
先月のセールスレターの印税で買った特注製の重りを装着する。両手両足と胴体合わせて20kgの重りだ。これを着けたら山に入り、相棒の邪ゴリラに会いにいく。
この邪ゴリラは、2週間前に偶然エンカウントしたものだ。相手としては物足りないものの、数少ない実戦稽古の練習台になる。そう思って重宝していたところ、次第に仲良くなったのだ。
そしてその頃こそ実力不足だったものの、すぐに邪ゴリラは自分と対等なくらいまでパワーアップした。きっかけは、仲良くなった証にと名前をつけてあげた事だ。名前をつけると強くなるというのは不思議なものだが、稽古の相手として不足ない実力を伴ってくれたのは喜ぶべき事だろう。
「コセカント、今日も来たよ。」
相棒の邪ゴリラに声をかける。サインの相棒だからコセカント。命名理由はそれだけだ。
普段通り、コセカントと修行に励む。まず午前中はコセカントとの鬼ごっこと岩キャッチボール。岩キャッチボールとは名前の通りビーチボール大の岩を投げ合うものだ。
それが終わるとお昼休憩。コセカントとともに山菜や木の実などを食べ、昼寝をするのだ。昼寝からは俺の方が先に目覚める。コセカントが起きるまでは筋トレと空手の型の練習だ。
コセカントが昼寝から起きたら1日の仕上げとして組み手をやる。コセカントはガウスゼット様ほど強くはないが、それでも20kgの重り付きだと結構厳しい戦いとなる。
実力は伯仲し、今日の組み手は引き分けに終わった。
「じゃあな、コセカント。また来るよ。」
組み手が終わり、コセカントと別れる頃にはもうヘトヘトだ。だが、辛くはない。なけなしの力を振り絞って特待生の部屋まで帰るこの時間は存外幸せなものなのだ。
部屋に帰ると風呂に入り、用意された夕飯を食べて机に向かう。夜は、前世の知識を忘備録的に纏めたり、試験では諦めた特異解の算出にチャレンジしたりする時間に充てている。
前世の知識は、周期関数に関するものから優先的に書き残すことにしている。あと数日でフーリエ級数展開をまとめ終えられそうだ。一方、特異解は、、、残念ながら今日も手も足も出ない。
寝る前は申し訳程度にラップの練習もしている。またあの子に出くわすことがあるのかどうかは分からないが、もしもの時にはバトルに応じれる程度にはなっておきたい、、、なんちゃって。
そしてベッドに入ると、意識が途切れるまで瞑想の時間だ。今は精神に肉体が追いつくべき時なので、瞑想部屋にいた時の感覚を忘れない程度にやっておけば大丈夫だ。
周波数代入法は、「待望の学校生活に向けて」に出てきた「y=sin ax」のaに具体的な周波数を入れて詠唱してエネルギー弾を放てるかどうかで判定するあの方法です




