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キタガワ族の特質

教科書配布、自己紹介、そして模擬戦。これだけでも中身の濃い1日だったのだが、今日はもう一つやっておきたいことがある。それは、アゾさんの訪問。


今日、自己紹介で度々登場した「キタガワ族」という人種。担任の先生もキタガワ族だというし、これがどういう種族なのかをきっちり調べておきたい。


そういう時には、宿屋を経営していて雑学に富んでいるアゾさんがうってつけという訳だ。


「お久しぶりです、アゾさん」


「久しぶりねえ、サイン。今日はどうしたんだい?」


「一つお伺いしたいことがございまして。キタガワ族についてなんですが、いったいどういう種族なのかご存知ですか?」


「・・・あのキタガワ族を知らないのかい?」


おや、キタガワ族を知らないことをアゾさんに不思議がられてしまった。そんなに常識的なことなのだろうか。


「あ、いや、そういうことじゃなくてね。ただ、あれほど物知りなサインがまさかキタガワ族を知らないとは思わなかったもんだから、、、」


おい、結局一般常識なんじゃないか。確かに呆れられてはいないって分かったのは良かったけども。


「キタガワ族ってのはね、極稀に突然変異で生まれる究極の美形の総称よ。」


「そうなんですか。」

ぶっちゃけ、それは言われなくても分かる。何せ俺の担任、自担そっくりだったからな。


アゾさんは尚も続ける。


「キタガワ族の特徴はあともう2つ。1つ目は、男しかいないこと。もう一つは、一代限りの種族であること。キタガワ族の子は決してキタガワ族にはならないの。キタガワ族の子はキタガワ族の親の種族を受け継ぐことになるわ。」


いや一代限りって、、、それもはや「族」ではなくないか?

それと、キタガワ族には男しかいないというのも疑問だ。ただ「美形」というだけの特徴で、そこまで明確な線引きができるものなのか。

そこをはっきりさせるため、俺はさらに質問を重ねる。


「キタガワ族ってそんなにはっきりと見分けが付くものなのですか?ただの美形とキタガワ族の線引きってどうなってるんでしょうか?」


これに対するアゾさんの返答はかなり衝撃的なものだった。


「キタガワ族かどうかは、周りの女たちの反応を見れば簡単に分かるわ。というのも、一度でもキタガワ族を目にしてしまった女は一生そのキタガワ族ひ惹かれっぱなしになるの。二度と現実を見ることはできなくなるわ。だから、学校に1人でもキタガワ族がいればその学校では1組たりともカップルができなくなるし、キタガワ族がいる国は場合によっては数十年で滅びるのよ。」


うん、いくらなんでも規格外すぎる。

確かに今日クラス中の女子が担任に惚れ込んでいたようには見えたが、まさかそこまでとはな。

というか、、


「国が滅びる、とは?」


煬帝みたいな恋にうつつを抜かした愚帝がこの世界にもいたのだろうか。


「キタガワ族は、存在するだけで全ての女性を一目惚れさせてしまうのよ。当然、キタガワ族に惚れた女たちは二度と他の男に目を向けることは無い。そうすると、国中で結婚率が激減する。そうなったが最期、次の世代の労働生産力がガタ落ちして国が維持できなくなるのよ。」


・・・またもや想像の斜め上を行ってしまった。まさか、容姿で国を下から転覆させる人間がいるとは。楊貴妃でさえもせいぜい国のトップを狂わせて国を傾けた程度だというのに。


「でも何で急にキタガワ族について訊きにきたの?」


アゾさんが最もな疑問を投げかけてきた。


「実は、担任の先生がキタガワ族なんです。」


と言い終わるやいなや、アゾさんが目の色を変えて訊いてきた。


「その先生、合わせてもらうことってできるかい?ああ、まさかこの目でキタガワ族を目にすることができる日が来るなんて、、、夢みたいだわ、、、」


・・・それほどかよ。

担任の事は黙っておくべきだったかもしれない。


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