エピローグ
線香に火を点け、鈴を棒で打ち鳴らす。
物悲し気な高い音と、穏やかな線香の匂いが部屋に満ちる。
僕がインベーダーと戦ってから三年。じいちゃんは一年前に亡くなった。
最後は穏やかな顔だった。ファンレターが届くようなことは無かったけど、多くの人がじいちゃんの葬式に参列したことはきっとじいちゃんのやってきたことが無駄じゃなかったことの証明だ。
「じいちゃん。僕は銃の免許を取ったよ」
僕はヒーローにならない。でも誰かを守る仕事に就きたい。まだはっきりとは決めていないけど、後悔はしていない。
人々を守るならヒーローじゃなくていい。PSYなんかなくてもきっとそれはできるはずだ。
きっと僕は特別になりたかった。他人にはない力を持っているから、それを使えば簡単に特別になれると思ってた。なんて子供っぽい。
本当に大事なのは誰にでもできることで誰かに認めてもらうこと。特別な力なんて必要ない。同じ条件で、それでも努力して夢を掴んだ人なんていくらでもいる。
「じゃあ、いってきます。じいちゃん」
……お……
じいちゃんだってきっと喜んでくれるはずだ。誰かを守ることが悪いことであるはずはない。
……辰夫……
まるで夢を見ているかのように、一度も呼んでくれなかった名前で僕を呼ぶじいちゃんの声がする。
いや、ただの幻聴だろうけど、じいちゃんに励まされているようで、悪い気はしない。
さあそろそろ行かないと。
そうしてドアを開けようとする。すると、
「辰夫お前はヒーローになれ」
幻聴でも追憶でもない。
確かに肉を持った声が背後から聞こえた。
後ろを振り返るとそこには
この作品はこれで完結になります。
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