4話
PSYを発動させて思いっきり殴る。
「離れろぉぉぉぉ!!!」
言葉を理解してるわけじゃないだろうに体が熊のようなインベーダーはすぐに飛び退いた。
「大丈夫!? 立てる!?」
「は、はい」
「じゃあ、できる限り遠くへ逃げて。速く!」
足音が遠ざかる。
それを追う気なのかインベーダーは僕よりもあの子供を狙っている。
「お前の相手は、僕だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
じいちゃんが言っていた。
『人間はな。大切な人を守る時ならいくらでも力が湧いてくるんじゃ。もしお前にもその時がくればわかる』
きっと、今がその時だ。腕が千切れてもいい。だからこいつを吹っ飛ばす力をくれ!
右こぶしが相手の顔面に突き刺さる。
インベーダーは少し身をよじった後、適当に、ハエでも払うかのように右腕を振るうと、僕の体は糸の切れたマリオネットのようにふらふらと地面に倒れ込んだ。
インベーダーの爪が僕の頭を掠めただけ。ただそれだけであっさりと倒れてしまった。
(なんだ。全然だめじゃないか)
これが走馬灯なのか?
今までの人生が早送りされた動画のように流れている。
PSYが発現して喜んだこと。
その能力があまりにも弱いことを知って落ち込んだこと。
さらに現実を突きつけられてもっと落ち込んだこと。
PSYを少しでも強くするためにトレーニングを始めたこと。
それでも一向に強くなれなかったこと
ごめんじいちゃん。やっぱり僕はヒーローになれなかった。
必死で努力しても、守るべきものがそこにあっても何ひとつとして役に立たなかった。
もうすぐ僕は死ぬ。ヒーローどころか何物にもなれずに僕は死ぬ。
でも、これはなんだ? 今にも死にそうなこの体からどうして力が湧いてくる?
ああ――――そういうことか!
ようやく理解できた。僕のPSYを――――!
「うぐぅ、げほっげほっ。どうした? 何か意外そうだな」
せき込みながらも、ぼろぼろになりながらも立ち上がる。アドレナリンでも出ているのか普段より口が荒くなっている気がする。
昆虫のような頭がこちらをのぞき込んでいる。まるで訝しんでいるようだ。何故この人間は生きているのかと。表情は無いけど動作からそう思った。
僕のPSYの本質は筋力増強じゃない。その本質は自分が危機に陥れば陥るほど強くなること。だからこそ死に至るほどの攻撃を受けても立ち上がることができた。
今まではどれほど訓練しても命懸けではなかった。それじゃだめだ。本当に命懸けの戦いでなければ僕の能力は発動しない。
けど、今なら――――何でもできる。じいちゃんの言ってたことは間違いじゃなかった。守るものがあれば、人はどれほどでも力が湧いてくる。
ここからが本当の勝負だ!




