今と過去の交錯ー2
さて、久しぶりに予定が空いた。ノートPCをあけて書きかけの演説会の原稿をつくろう。
富岡県庁の4階にある私達の事務室は40㎡、パーテーションで区切られており入口が応接室と秘書2名のデスク。
パーテーションの奥が私のデスクだ。
使いなれたデスクに腰を掛け、pcの電源を入れると、秘書の田辺和美さんがコーヒーを運んでくれた。
「ありがとうございます」と声を掛ける。
田辺さんはその道35年のベテランだ。
PCに原稿を打ち込む。
『ご紹介いただきました、富岡県議会議員の梶村和宗でございます。私の自己紹介を簡単に申し上げます。富岡県富岡市で生まれ、ここ藤田市にあります、富岡県立山中農業高校の農林経済科で三年間学びました。
畜産部に所属し、牛や鶏の飼育から畜産農家の経営について学んできました。様々な出会いがありました。もちろん、牛や馬や豚や鶏との出会いはもちろんのことですが、恩師やたくさんの仲間たちとの出会いは今でも私の大切な財産になっています」
・・・
・・・
・・・
・・・
「梶村くん?
おーい!
おーいってば!
」
明るい日差しが天窓から降り注ぐ畜舎に明るい声が響く。
「え、あ、はい? え?」
今度は間の抜けた声と哺乳缶を落とす音が響いた。
「もう、さっきからずっと呼んでるのに声かけても返事ないんだから」
「あ!ご、ごめん、!」
「メグミの配合飼料とってほしいなと思っただけだから。梶村くん、カンタの授乳中あたしも」
ちょっとそこのメグミの配合飼料とってもらおうと思っただけだから」
明るい屈託のない安原さんの笑みが見えた。ああ。これだ。これを見てしまったら、また声が出なくなる。