葛藤
「ありがとうございます。せっかくの話ですが
、私はその立場にありません。次の県議選に出馬するかどうかもわかりませんので」
思わず口に出てしまった。
「梶村さん。それは、国政にはでない。ってことかい?そして、次の県議選にもでないと、そう言ってるのかい?」
「はい。まだ迷っているのですが、立花さんが私を高く評価していただいているのをお聞きし、余計にそう思うようになりました」
「急な展開にいささか驚いているよ。
なぜ、そう思ったのか、教えてもらってもよいかね」
立花さんは声を荒げるでもなく、怒るわけでもなく、しかし、静かに、深くため息をついて、口をへの字に曲げて私に尋ねた。
私はコーヒーカップを抱えて、温もりを確かめるように、掌に包む。冬空はその表情を変えていくのが、私の座る席からも見える。
「私の評価のなかに、ずっと亡くなった妻子が入っているんですよね。
“妻子を失ってもなんて健気に不幸を背負ってがんばっているんだ”って。オレはそれを利用している気がして、ずっと辛かったんです。もうこの仕事を6年間させていただきましたが、妻子の仇を打つどころか利用するだけ利用してるじゃないか、って思ってしまう自分がいます」
「ふぅん。なるほどね。そりゃわからんでもない。」
立花さんはコーヒーをすっと口にする。
「しかしな、そりゃ梶村さんよ。子どもの理屈だ」
「梶村さん、君は奥さんと子どもを殺したテロリスト、本当にイスラム過激派だと思うか」
立花さんは煙草に火をつけて燻らせた。
「」




