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俺が死のうとすると必ず異世界に来ている  作者: 月這山中
俺たちが国外を旅していると風の噂が届く
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1.俺たちが国外を旅していると風の噂が届く


「アキ、次はそっちをお願い」


 俺とケイはイシスを離れ、旅をしている。

 ヤーム魔王研究所に対する損害賠償は到底払えるものではなく、その代替案として提案されたのは地質調査への協力だった。


「お前の言葉も信じられないしな」

「失礼だなぁ。謀りこそしても嘘はつかないよボクは」


 こいつも同行している。

 カタリ、魔王の亡骸だった存在。その正体を知るのは俺しか居ない。


 しかし俺たちが調べた範囲だけでも、瘴気の含有率が各地で一割から三割ほど減っていたし、植物と虫類の多様性が回復していた。


「ほらみろ」


 カタリが白い髪を揺らして笑っている。


「相変わらず子供に好かれる質ね」


 ケイが呆れた様子で言った。分厚い眼鏡の向こうで赤銅色の瞳が揺れている。


 魔道具で地面に穴を空けながら翠色の空を見上げる。わずかに青へ近付いたその色で、ある女騎士のことを思い出した。


「彼女、もうイシスに戻ってるわよ」


 人々の思考を読んでケイが口にした。

 俺たちを逮捕したローディは罷免を取り消され、国王護衛のトップに返り咲いている。


「早く帰らないとな」


 ふと口をついて出る。


「また始まった」

「しかたないよ。これがないとアキお兄ちゃんじゃないんだもの」


 子供のふりをしてカタリが笑う。

 調査旅行は二年で終わった。





 イシスへの帰還は予想に反して大いに歓迎された。作物の花びらが降り注いでくる。

 俺たちが留守の間、ローディが何を話したのか容易に想像がつく。


「勇者様ご一行だ!」

「勇者様! おかえりなさい!」


 市民から着飾った貴族たちまで通りに並び、口々に唱える。

 俺は手を振ろうとも思わなかった。


「さっさと投獄しろ」


 間。


「俺は死にたいんだ!」


 そのまま希死罪現行犯で逮捕された。


「なにをしてるんだ、君は」


 黒髪の青年が呆れた声を吐く。

 査問官のハルから城内貯蔵畑での労働について滔々と説明された。


 俺はそれを聞きながら、国王の護衛騎士に斬り殺されるにはどんな規則を破ればいいか考えていた。


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