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殺戮王  作者: 如月
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悪魔の子孫

「『ヤオヨロズ』に残っている異界の記録と照らし合わせると、貴方は『ベリア』という種族の特徴に当てはまるのよね」


日本で目を覚ます前の記憶の無いミラに大して、礼子が説明し出した。


『ベリア』は悪魔の子孫と言われていて、高い戦闘能力と治癒能力を有する一族らしかった。彼らの身体的特徴として、銀髪に褐色の肌、紅い瞳であることが分かっているという。


「何か思い出すことがあるかもと思ったけど、どうかしら」


礼子に訊かれても、『ベリア』という言葉を聞いてもピンとこなかった。


ミラの記憶は依然として戻らない。礼子から、自身が異界からの『漂流者』であることを告げられたが、ミラには異界の記憶が無い。記憶の無いミラを礼子は何かと気にかけてくれる。だけど、どちらかと言えばミラは思い出したく無かった。


沈黙したミラの様子に、礼子は苦笑した。


「記憶の方は、おいおい思い出していきましょう。それよりも、外出しましょうか」


礼子に引っ張られ、ミラは街の大通りへやって来た。空からは白い、雪というものが降っている。


「この季節に雪が降るのは珍しいのよ。『ヤオヨロズ』でも、非科学的な力が作用しているんじゃないかって話題になるくらいなの」


街の大通りを歩きながら、礼子が言った。礼子はその後、ショッピングをしましょうと言ってミラを連れ回した。


ミラが礼子に質問し、礼子が答えてくれる。傍目には、日本に不慣れな外国人に、日本人の女性が解説している風に見えた。


「ちょっと、お花をつみに行ってくるわ」


大通りを歩いている時、礼子が悪戯っ子のような顔を見せて、離れて行った。


取り残されたミラはベンチに座り、歩行者の流れをぼんやりと見つめた。


礼子には話していないが、一つだけ目覚める前の記憶が残っていた。『殺戮王』という言葉だ。この言葉を思い出す度に、頭が少し痛くなる。


霧のかかる映像の中で、『殺戮王』の姿はぼんやりとしている。。ただ、『殺戮王』は青く輝く瞳でミラを射抜いていた。その青い光は、あまりに強く直視できない。まるで青い太陽だとミラは思った。


記憶の中を潜っていたミラだったが、目は開いていた。彼女の視界に、二人のカップルが入りこんだ。少年と少女だ。少年のポケットから財布が落ちるのが見えた。


「あれ?」


ミラは財布のところまで走り、それを拾った。


「あのぉ、こえれ落としましたよ」


財布を返そうと少年に声をかけた。少年が振り返った時、頭にガツンと衝撃が走った。


「あ」


霧で覆われていた『殺戮王』の顔と少年の顔が一瞬重なった。


瞳の色こそ違うが、彼の顔は『殺戮王』に瓜二つだった。だけどそのイメージはすぐにミラの頭の中から消え去った。まるで『殺戮王』の記憶に関して、忘却させられる魔法がかけられているような感覚だった。


(そんなはずない。ここには『殺戮王』がいるはずがない。でも)


「あ、あの、その、えっと」ミラは頭が真っ白になった。


頭の中で、目の前の少年が処刑場に現れ、彼女の仲間をギロチンで殺していく映像が流れた。


思わずミラは雪の積もる地面に頭をつけた。あまりの恐怖に彼女の口から命乞いの言葉が漏れ出ていた。


それを聞き、少年と少女は困惑した様子で話しだした。


その隙にミラは逃げ出すことにした。


「し、失礼します」と言って一目散にかけ出す。


(もうこれからは外に出ないようにしよう。よく分からないけど、彼に関わってはいけ、な?)


突如、右足が重くなった。


バフン。


雪の中にミラは転んでしまった。


よく見ると右足が氷りつき、地面と固定されている。気付けば、左足も凍っていた。途端、雪に触れていた両手が冷たい感触に包まれた。手袋をしていた左右の手も凍りつき、地面とくっついていた。


「僕の力は、雪の力を操るって教えただろ?」


ぜぇぜぇと息を切らす少年がこちらに近づいてきた。瞳は、僅かであるが青い光を灯していた。


(この人、前に赤井神社で会った人だ)








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