第四話 各々の才能
あかん、キャラが多すぎる。
この話を書いていて思った私の思いです。
最初の方のキャラの出し方って難しいです。
悠星達はそれから純度の高そうな水晶に手をかざし、また別の場所では水に自らの血を垂らした。当人達はそれに何の意味があるのか見当もつかなかったが、会議室のようなゆとりある場所に案内され、ようやく説明を受けようとしていた。
「ルカちゃん……ルカフィーンから引き継いで私が説明をさせてもらう、レナ・クリエンスよ。よろしくね」
正面の壇上で一礼をしてレナと名乗る女性が出てきた。薄らと紫色の長髪。前髪は右に流していて、手に持つ書類が知的な印象を受ける。
「では、検査結果が出たから発表するわ。まず、唯一の魔法を持っている子達だけど、"三人"いるわね」
レナは嬉しそうにそれを告げるが、悠星達は唯一の魔法? なにそれおいしいの? な反応を見せるが、幾度かそのワードは出てきているものの、説明は受けていないから当然だ。
「あの〜、その、唯一の……なんちゃらってなんなんですか?」
「唯一の魔法ね。固有の魔法よ。自分しか使えないから、唯一の魔法」
茶髪のポニーテールの少女、春野 ゆづの質問にやはり喜びの色を表に出すレナ。一方の悠星達は"自分だけの魔法"と聞き、もしや自分なのでは? などと期待を膨らませている。ただ、大半の生徒は誰が保有しているか検討を付けていたが。
「それじゃあ、発表するわ。まず、山崎 良樹」
「おぉっ!?すげえな良樹!」
「うん、よかったよ」
言外に「才能あり」と言われた丸坊主の野球部っぽい男の子ーー良樹は周囲の賞賛も相まって照れ臭そうに頬を掻いている。そして、生徒の淡い期待もどんどんと高まっていく中、二人目が告げられた。
「西垣 武蔵」
「……流石歴戦の覇者」
「おい、宮本武蔵と重ねんな」
黒髪短髪の周りより身長が高い男ーー西垣は誰がポツリと呟いた発言にツッコミをいれながらも嬉しそうに口元を緩めている。
二人目の発表以降、生徒達には落胆の色が見えた。彼らは皆一様にある人物が選ばれるだろう、と確信に近いものを抱いていたから
だ。
そんな生徒達の心情を知ってか知らずか、レナは間髪なく最後の名を告げた。
「最後は、花柳 有紀よ」
「「「「「!?」」」」」
「……っし!」
生徒達の目が見開かれる。先生である川島でさえ、少し驚きの色が顔に浮かんでいる。花柳本人はガッツポーズをして表情を喜色に染めているが。
「凄いな、良樹、西垣、花柳!」
そんな中、悠星は彼らに心からの賛辞を呈する。他の生徒とは対極で、悠星の顔には尊敬が見える。
「う、うん……」
思わずどもる良樹。彼らは、信頼できる悠星が絶対に相応しいと思っていた。そうであって欲しいと思っていた。だから、悠星が選ばれなかった事に驚愕を隠せないのである。当の本人はなんとも思っていないようだが。
「ただ、無二の能力は調べる技術が発展していないから、発覚次第伝えてくれると嬉しいわ」
そう言って、手に持っていた書類に目をやるレナ。
これから、魔法の適性属性とその才能を発表するようであるーー
レナに、魔法には"火" "水" "風" "地" の四つの概念があり、そこから派生し、炎や氷などのものを生み出すという。そして、それぞれに適性があり、並みの者は一つの概念しか適性がない。と悠星達は説明された。
「それじゃ、書類配るので各自見てね」
突然、レナが、抱えていた書類が空中にばら撒いた。そしておもろに手をかざすと、ヒラヒラと宙を舞っていた紙たちが、それぞれ意思を持ったように目標を定めてそこに降りた。
目を丸くする悠星達。ふと手元にある一枚の紙を見てみると、それは自分の魔法適性の内容だった。
「何が……起こったの?」
艶やかな黒髪をショートにした、少し幼い顔をした生徒がレナに問うた。しかし、レナは手をヒラヒラと振ってどこかへ行ってしまった。
(ふぅ……悠星って子可愛かったぁぁ!)
などと歩きながらレナが赤面していたのはまた別の話。
「アイツ、やるだけやっておいて……。すまんな、ちょっと用事があったらしくて……」
金髪の外国人のような美形の男性が引き継いだ。一部の女子が目を輝かせているのを見た男は微笑みを返し、名を"レンジーク・ジークフルズ"と名乗った。
「さっきのは、風属性の操作だな。風の才能がある人はきっとできるようになる」
その言葉に、風属性の才能があると書かれていた者は歓喜した。目の前で絶技と言ってもいい程の技術を魅せられたのだから、理想が目標になる事が嬉しくないはずがないだろう。
自分の才能を確認した後は、自然と"唯一の魔法"を持つ生徒達の才能が記された紙に視線が集まったが、
山崎 良樹・・・"唯一の魔法"『魔法無効化』 "才能"全属性で平凡
西垣 武蔵・・・"唯一の魔法"『全武器適性』"才能"火属性に才能あり
花柳 有紀・・・"唯一の魔法"『妄想の戯言』"才能"無し
という結果であり、大抵の生徒が落胆の色を示した。
次いで、遊星に視線がゆく。
宮地 悠星・・・"才能"全属性で才能あり
書き留められた文字を見て、多くの人間が遊星を褒める。悠星も満更ではないようで、にへっとしている。やっぱり不安だったようだ。
「えー、みんな、友達と見せ合いっこは終わったか? これから"聖剣"のある部屋へ行く。勇者の素質があるものだけが抜けるから、みんな期待するといい」
挑発的にレンジークが笑い、ドアの向こうへと歩いて行った。
"勇者"という単語にロマンを覚えた生徒達(主に男子)は挑戦的に笑い返し、よく分からない覇気を纏いズカズカとついて行く。他のメンバーも呆れ顔でその後を追った。
★
そこは、厳重な警備が敷かれた地下室だった。分厚い扉の外には二人の兵士が見張りをし、それまでの通路にも五メートルに一人は兵士がいた。そんな部屋の中に遊星達はいる。地下独特の湿ったどんよりした空気を跳ね除けるほどの威圧と魅力を持った、岩盤に突き刺さる両刃の剣を目の前にして。
「うおぉぉ! すげえ、見ただけで鈍じゃないと分かるぜ!」
「煩いよ」
村上三兄弟の長男、朝日がテンション高めに叫ぶ。それを制止するのは鈴野 花梨。茶髪でつり目がちなのとその口調からチャラく見られがちだが、実際は唯我独尊なだけな女の子。そう、ただ唯我独尊なだけ……
「神聖な場所だから、極力ふざけるのはやめてくれ。……じゃ、誰から抜く?」
相変わらず挑発的な笑みで視線を送るレンジーク。誰も自ら行く勇気はないのか、生徒達の視線は悠星へと向けられた。
「え、俺? いや、いいけど……」
「よし、じゃあ思いっきり抜いてみろ!」
「は、はいっ!」
半ば強制的に前へ出された悠星は柄をおもむろに掴み、上体が仰け反る程に勢いよく引っ張り、そのまま倒れた。スポッ、ゴチーンという、なんとも間抜けな音とともに。
悠星以外の全員が、ポカーンと口を開けている。テンプレを破る"まさか"に誰も対応できていないからだ。
そして、数秒間の沈黙の後、レンジークも含めた全員が口を揃えて叫んだ。
「「「「「いきなりかよっ!?」」」」」
と。
「あ……あはは」
悠星は苦笑いするほかなかったのだった。
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