~範菜の目~
いつもありがとうございます!
大変ながらくお待たせしましたが、続きが完成しました!
わくわくしながら見てください!
こわい、こわい。
誰か助けて・・・
誰か、誰か。こわいよ。
するとふいにー。
「欄ちゃん、とても大きくなったわね。ふふ、『能力』はもう使えこなせたかしら。 これ からはもう「高校生」よ。高校生活、がんばってちょうだい。お母さん、見守っているわ。それから、あんなふうにあなたを恐れて本当にごめんなさいね。わたしはあれから、生きる意味がなくなって、自殺したの。そのお詫びに、いろいろと分からないことがあれば、答えてあげるからね。
今、あなたは松下先生の暗くて冷たい倉庫にいるわ。買い物中なの。あなたから見 て、右側にある光をたどれば、出口があるわ。今のうちにでなさい。いい、わかっ たわね?」
何が起きているのかわからない。というか、いろいろな考えがこみあげてくる。
あれはきっと、お母さんの声だ。『ノウリョク』ってなに?そうか、私は高校生なんだ。え?お母さんは自殺したの?ここは松下先生の倉庫?
ただ、声の主は必ず母であり、胸に響いてくるような感じでテレパシーのようなもので声を感じるということは分かった。
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「お~い。範菜、ご飯できたから、もってはいるぞ。今でいいか?」
父は呼びかけるが、いつもの返事は聞こえない。「はいるぞ。」がちゃ。
部屋の鍵は開いていた。だが、だれもいない。トイレなのか?そう思って部屋を出ようとした瞬間、範菜の部屋の机に小さな紙切れがおいてあるのを見つけた。不思議に思って、開いてみると、中にはこんなことが書かれていた。
「父さん、心配ばっかりかけてごめんね。何もしないのも悪いから、勇気を出して、外 に出てみることにしたよ。欄姉ちゃんを探すの。幼稚園の先生とかに、欄のヒントになるものを聞いて、探してくるよ。それから、探せたら欄姉ちゃんをさがして みるね。私には勇気のいることだけど、がんばるね。」
父はそれを見て、がんばっている範菜に感激した。だが、今はそんな場合ではない。「早く俺も幼稚園に行かなきゃ。」
そういって、父はガチャリとドアノブをまわした。
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範菜は、姉である欄を探すために、幼稚園へ向かっていった。数分後、幼稚園に着いた。職員室のインターホンをおす。「ピ-ンポーン」と音が流れる。しばらくして、一人の若い女性がドアを開けて顔をのぞかせた。「どうされましたか。」とたずねてきた。「すみません。ここの幼稚園出身の欄っていう人の妹なのですが、松下先生と少しお話をさせてください。」そういうと、女性は、少し顔をこわばらせた。「今は、松下先生はおられません。まあ一回、中へお入りください。」女性は、範菜を職員室の中に招き入れて、いすに座るよう、指示した。ゆっくり落ち着いたところで、最初にきりだしたのは範菜だった。
「私、範菜といいます。 今、姉の欄が行方不明なんです。松下先生のこと、知って いますか。」
すると女性も話し出した。
「そうなの?私、欄ちゃんの副担任をしていたことがあるから、覚えているわ。あ。わ たしの名前は鈴よ。でも・・松下先生・・・・。」松下の名前を出した瞬間、鈴は軽く目を伏せた。そして、沈黙が続いていた、そのとき。
「範菜、今こそ使いなさい!あなたの能力を!あなたは人と目をしっかりと合わせ、 相手の目をおく深くまで見つめると、その人の悩みや悲しみを吸ったり、その人の 悩みが聞けたりするの。さあ、目を閉じて、鈴先生の目をしっかり見つめるのよ。」
これは母の声だ。やわらかい声だった。なんだかわからないが、やってみるしかない。
範菜は小さくうなずくと大きく息を吸って、ゆっくりと目を閉じた。
―すると、目の能力のことすべてが範菜の頭の中にスーッと入ってきた。もう1度目をあけてみると鈴先生と目が合った。
「松下先生のこと、話してもらえませんか?」
ゆっくりと語りかける範菜の心は自分でもびっくりするくらい落ち着いていた。
鈴は、範菜の透き通った目を見て、その目に吸い込まれそうな勢いで語りだした。
「松下先生は、9年前に退職されたわ。松下先生は、欄ちゃんが倒れて、学校に来 て、目のことをいろんな人に見せているころから、学校に来る回数は減っていった わ。私は、あなたの青色の目もだけど、そこまで気にかからなかったし、逆に、そ の目の色、純粋でとても大好きだったわ。・・・でも、多分松下先生はそれを恐れていたのね。聞くところによると、怒りに満ちた目で、クラスの園児に向かって、
あの子はのろわれているから絶対に近づくなといわれていたらしいわ。それから数日 後、松下先生は退職されて、その翌日から、欄さんが来なくなったの。そこから警 察とかいろんな人に探してもらっているけど、なかなか見つからない。ニュースにも なったけど、やっぱり9年経った今でも見つかってない。どうしようって、いろん
な先生と話しているけど、でも・・・・」鈴は、出そうになった涙をこらえた。
範菜は大量の涙を流していた。これからどうして行けばいいのか、分からなくなった。範菜はゆっくりと席を立つと「ありがとうございました。ほんとうに、たすかりました。」といって、無理な笑顔を作って、ゆっくりとかえっていった。
範菜が歩いていると、途中、父に会った。「お。範菜。どうした?何か、分かったか?」範菜はそれをきいて、さっき話したとおりに順を追って、事細かに欄や松下のことを伝えた。父は驚きの表情を隠せなかった。
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欄は、右側の光をたどって、外に出ることができた。頭はくらくらするし、頭は重いし、久しぶりのまぶしさに目が開けられない。
やっと目が開けられたところで、欄はゆっくりと歩き出した。見ると町並みは少し変わっている。でも、懐かしさがこみ上げてきた。町並みに見とれて、家に帰ろうとしたとき、ドンッとやわらかくて大きなものにぶつかった。みると、デブの警察官の格好をした人だった。「警察だ。あなたの名前を聞きたい。」少し戸惑ったが、「欄です。」と答えた。すると警察官は目を丸くした。「あなたが欄さんですか!!良かった!最近欄さんと松下って言うやつが行方不明になっていて、探していたのだよ。」
そういうと、欄は深々と頭を下げた。「そんな。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。そしてありがとうございました。」警察は少し照れた。
そして、自分の仕事を思い出す。「欄は、どこから来たんだ。」
そう聞かれて、欄は一瞬困った。だが、言葉を濁した。
「私は、・・暗闇に閉じ込められていたみたいなんです。先ほど、隅のほうにある光 の筋に起こされ、行ってみると、外に出られました。」
「なるほど。」警察は手帳を取り出し、すらすらと欄の言った言葉を書いていく。
「じゃあ、これから君の家に行こうか。家の人が心配するからね。」
「はい」
欄がうなずいた瞬間安心して、ぼろぼろと自然に涙がこぼれた。
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範菜は久々に父とリビングのいすに座り、考え事をしていた。あの能力のことだ。
範菜にとっては一瞬のことで、何がなんだかわからない。ふいに問いかける。
「ねえ父さん、1つ聞きたいことがあるの。」
「何だ。」
「私には、人の悲しみや悩みを吸い取る能力があるの?」
父はどきりとした。
「え?なぜそれを・・・」
「さっき、幼稚園の先生の話を聞いていたとき、胸のうちから、お母さんの声が聞こえ てきて、能力を使えっていわれたの。」
すると父は思いもよらない事を言ってしまった。
「まさか、範菜は母さんが自殺したことを知っているのか!」
範菜は、驚きに満ちた表情で、固まった。
「母さんが、・・・・・・自、殺・・・・?」
範菜はあふれ出てくる涙をこらえることができなかった。
「ごめん、範菜・・・」
リビングは重い空気に包まれていた。
-ピーンポーン
沈黙を破るように家のチャイムがなった。
「はい。」顔が暗いまま父は玄関へ向かいドアを開けた。
するとそこにはー。
「欄!?欄なのか???こんなに大きくなって!」
父はほろりと涙をこぼす。
「ただいま、父さん。いろんな人に迷惑かけてごめんね。さっき、警察の人に会った んだ。」
欄のその声を聞いたとたん、範菜は玄関まで勢いよく走ってきて、欄だと確認すると、欄に抱きついた。
「範菜・・!!」
「お姉ちゃん!おかえり!ずっと待っていたんだよ!よかった。お姉ちゃんが生きてく れてて良かった!!」
「ただいま、範菜。」
その言葉を聞き、範菜は欄の胸の中で泣きじゃくった。
その泣き声は、家族に笑顔をもたらしてくれる、最高の涙だった。
つづく
ありがとうございました!
今回は範菜の目について書きました。
時間がかかり、本文の作成に時間がかかりました。申し訳ありません。
そして、そばで見守ってくれた友達にも感謝しています。
ほんとうにありがとう!!