007 自分の部屋
ユナ、崇文、翔太朗の三人はアパートに戻ってきた。特にユナは大量の荷物を抱えているので、ヘトヘトである。
「はあ、やっとついた」
荷物を玄関先にドカンと置き、ユナは大きく溜め息を吐いた。それぐらい、両手と肩に負担がかかっていたのだろう。
「よし、ユナちゃんの部屋を用意するからちょっと待ってて」
崇文はそう言って、奥へと早歩きで移動した。どうやら、ユナの部屋はあるらしい。活動拠点と部屋まで用意してくれる地球人の優しさに、ひたすら感無量のユナだった。
しばらくすると、崇文が大量のダンボールを持って来た。
「ごめん。押し入れに使っていたから移動だけでも大変で」
どうやら、このダンボールを違う部屋に移動させる気らしい。
「大丈夫。わぬは待っている」
「それじゃ、もう少しで片付けが終わるから待っててね」
それから十分ほど経過すると、ようやく片付けが終わったらしく、崇文のオーケーサインが出た。
「終わったか!」
ユナは玄関先の荷物を両手に抱えて、指定された部屋へと移動を開始した。部屋はすっかり片づけられていて、家具一つない。広さ的には、こじんまりとした空間だったが、家具や寝具を置けるスペースは十分にあった。
「ここがユナちゃんの部屋だよ」
「成程。十分に生活できる空間だな」
ユナは両手を組んで「うんうん」と頷き、満足げな表情を見せていた。
「そうそう。時間が分からないと面倒だから、使っていない壁掛け時計をあげるよ」
すると、崇文は部屋の中に壁掛け時計を設置した。見ると、時刻は20時30分だった。
「あ、お風呂に入る時間だね」
「風呂とはなんだ?」
ユナは自然と上目使いになっていた。ピンク色の大きな瞳を崇文に向けている。
「ユナちゃんが育った国には、自分で体を洗う習慣はあったのかい?」
「それはある」
「そのことを日本では風呂って言うんだよ」
「へえ、そうなのか」
新しい発見が出来たのだと、ユナは嬉しそうな表情を見せていた。
「せっかく日本に来たんだ。風呂に入りなよ」
崇文が笑顔で勧めてきた。
「そうだな。そうしよう!」
好奇心旺盛のユナは風呂に入ろうと思った。
「僕が一緒に入るのは色々とマズイから、翔太朗に教えてもらってよ」
だが、崇文は一緒に入れないのだと言っている。
「分かった。でも、なんでマズイのだ?」
「う……うん。まあいいじゃないか」
濁された感があったが、ユナも「まあいいか」という気分になって、翔太朗の元に小走りで移動した。すると、翔太朗はテレビを見ていたのだった。