006 カルパッチョ博士
「ワーハッハッハッ!」
老人は空を動き回って笑い叫んでいた。
「なんですか。こんな夜中に? 迷惑じゃありませんか?」
崇文はいかにも迷惑そうな顔で老人に話しかけた。すると老人は、
「ワシはその女に用があって参ったのだ」
と、言うのだった。
「ユナちゃんに?」
崇文は聞き返す。
「そうじゃ。その女は我が祖国からキラキラスティックを奪った泥棒じゃ」
老人は言うのだった。
「キラキラスティック?」
崇文は、振り返ってユナのカバンからはみ出ている棒を見た。
「その棒じゃ!」
老人は顔を真っ赤にして、指を差して叫んだ。余程、怒っているのだろう。
「ユナちゃん。盗みはよくないよ。持ち主に返さないと」
崇文は手のひらを返して、ユナを叱りつけた。しかしだった。
「違う。奴は嘘をついている!」
ユナは老人が嘘をついていると言った。
「なんだって?」
「奴は元々アララで研究をしていた。だが、奴は研究中だったキラキラスティックを持ち出して、敵の手に落ちたのだ。それをわぬが奪い取っただけだ。この棒は元々、わぬのために作っていた代物だ。奴の物じゃない」
「えええ! ってことは、あの人は君を裏切ったのかい?」
「そうだ。奴はアララの歴史の中でも最大の悪人だ。名前はカルパッチョ博士」
キラキラスティックを手に取って、空飛ぶ男に先端を向けた。すると、男は「ガハハ」と再び笑い始めたではないか。
「お褒めの言葉を頂いて、光栄だ」
「褒めていない!」
瞬間、スティックから虹色に光るビームが放射された。そのビームはあっという間にカルパッチョのブースターを焼き焦がして、空を飛ぶ手段を失った博士は尻餅をついて、地面に叩き落とされてしまう。
「いてて。さすがワシが開発した武器よ。破壊力抜群じゃな」
すると、カルパッチョの周りに、三人が集まった。
「日本にまで追いかけてくるとは。しつこい輩だな!」
ユナは怒っていた。星を裏切った者に。
「それを返してくれれば、わしも潔く去ろう」
キラキラスティックに手を伸ばすカルパッチョだったが、ユナの手に寄って払いのけられた。
「今日だけは見逃してやる。この場から早く消え去れ」
「フフフ。わしは何度でも現れるぞ!」
そう言って、カルパッチョは背中丸出しで逃げさったのだった。
「あの人、異常だったね」
「ユナちゃん、大丈夫?」
と、翔太朗が心配そうな顔をしてきたので、ユナは笑顔でかえした。
「わぬは大丈夫だ。色々あったが、帰ろうか」
「そうだね。これ以上暗くならないうちに」
「僕も帰るう!」
こうして、三人はアパートに帰ったのだった。