005 到来
宇宙船だ。宇宙船が着陸した地点に三人は到着した。ここは元々空き地なのだが、ユナの船が大きすぎて、まるで空き地を私物化しているようだ。
「凄い、大きな船だね。どうやって運んできたの? ここから海は遠いのに」
崇文はこれが宇宙船だと気が付いていないらしい。それどころか、所謂普通に海の上を進む船と勘違いしているようだ。
「何を言っている。ここまで飛んできたのだぞ」
ユナはアララ星からこの船に乗って来たと言う。
「え? この船って飛べるの?」
「当たり前だ」
「へえ。科学の進歩ってすごいね」
小説ばかり書いているアナログ人間の崇文は、最近の科学事情に疎かった。だからこそ、船が飛べると言われても不思議に感じなかったのだろう。
「アララの科学力は宇宙一だぞ」
そう言って、人差し指を天にかかげるユナだった。
「なら、日本も負けちゃいられないね」
「ねえねえ。何を持ってきたの?」
ここで、翔太朗が前のめりになって船内に入ろうとした。しかし、
「勝手に入ったら駄目だ。今は故障してるから尚更だ」
ユナは入っちゃ駄目だと言うのだ。
「ユナのケチンボ」
そう言って、頬を膨らませる翔太朗だ。
「すぐに戻ってくるから待ってててくれ」
壊れた扉の隙間に体を通して、ユナは船内に入るのだった。
■
しばらくすると、ユナは両手にたくさんの荷物を抱えて、宇宙船から這い出てきた。歯磨きセットや寝具、着替えなど生活用品ばかりがカバンからはみ出していた。ところが、一本だけ長い棒状の杖のようなものが露出していたのだ。その杖は全体的にピンク色で、先端部分にキラキラとした宝石が取り付けられているのだ。
「これなに?」
そう言いながら、その杖をとろうとする翔太朗に待ったをかけたのはユナだった。
「触っちゃ駄目。危険だから」
「危険?」
「そうよ。これは敵を撃退する時に使う道具なのよ」
「敵って?」
その時だ。ガハハという笑い声が上空に木霊した。見ると、白い髭生やして深く帽子を被り、研究服を着た老人らしき人物が、足元にブースターをつけて飛んでいるではないか。