004 道中
空き地までの距離はそこまで遠くは無いらしい。しかし、普段歩かない夜道を闊歩しているため、小学生翔太朗はテンションを上げていた。
「ユナの船は凄いんだよ」
と、翔太郎はいい始めたのだった。
「船?」
父親の崇文は聞き返す。
「うん。空から降って来たんだ」
翔太朗は夕方に起こった出来事を崇文に話していた。空が割れて、円盤状の船が降ってきた事も、中からユナが出てきたことも。
「なんだろう。新しいなぞなぞかな?」
しかし、崇文はよく分かっていないようだった。
「あそこに服とか寝具を詰めてた」
ユナはそう言うのだ。
「あの船にユナの着替えがあったの?」
翔太朗は可愛らしく小首を傾げる。
「そうだ。あの船にだ」
時刻は19時だが、既に辺りは薄暗い。懐中電灯の光があるのとないのとでは、えらく違いがあるだろう。
「ところで、ユナちゃんはなんで一人で日本にやってきたの?」
まただ。また崇文は質問をした。
「探し物だ。わぬはそのためにここへ来た」
ユナは探し物だと言っている。
「探し物ってなんだい?」
崇文はそれを聞いている。
「百枚のプリティーカードなのだ」
百枚のプリティーカード。ユナはそれを集めるためにアララ星からやって来たのだ。祖国の危機を救うために。単独で。
「カード集めか。オジサンも若い頃、カード集めに励んでいたな」
「百枚集めると、何でも願いが叶う!」
ユナは片手を挙げてハッキリと言った。
「へえ、そういう特殊効果なんだね。でも、百枚集めるのは大変じゃない?」
しかし、崇文は何か勘違いしている様だった。恐らく、プリティーカードをバトルカードか何かと思っているのだろう。
「大変だ。だから二人も手伝ってくれ」
ユナはそう提案した。
「はは。いいよ」
崇文は笑顔で頷くのだった。
「僕も手伝うよ!」
翔太朗はやる気満々だ。両手を天高く挙げてジャンプしているのだ。
「三人よればなんとやらだな」
「凄いね。ことわざも知ってるんだ」
「ここに来る前に勉強したからな」
褒められるのが大好きなユナは胸を張って鼻孔をぴくぴくと動かす。
「へえ。勉強熱心な子だね。日本語も上手だし」
「ねえねえ、ユナの家ってどんなところなの?」
ここで、翔太郎がユナの家の事を聞き始めた。
「わぬの家はアララの中でも一番豪華な家だぞ。そうだな……崇文の家の200倍はあるな」
「すごい。ユナちゃんの家はお金持ちなんだね。羨ましいな。僕も小説を一発当てて、仲間入りしたいな」
崇文は確かに心の奥底で燃えていたのだった。