表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

003  活動拠点


「それで、ユナちゃんは何処からやって来たの?」


 肉じゃがをつつきながら、崇文は尋ねてきた。


「アララから来た」


 ユナはそう言うのだ。


「アララ……聞いた事ない国だね」


 20年も小説を書き続けている崇文でさえ、聞いた事がないという。それもそのはずだろう。


「そして、わぬは船に乗ってやってきた」


 相変わらず頬にご飯粒をつけたまま、ユナは喋っている。


「舟かい? 両親と一緒に来たの?」


「わぬ一人で来た」


「一人で日本に?」


「そうだ」


 ユナはご飯を食べながら頷いている。


「この近くに、誰か親戚はいるのかい?」


 崇文の質問攻めは続く。


「いない。わぬひとりだ」


「それは困ったね」


 と言いながら髪の毛をかいていた。すると、そこに翔太朗が会話に割って入ってきたのだった。


「ねえねえ、ユナも僕の家に暮らさない?」


 翔太朗は目を輝かせて言うのだ。あまりの輝かしさに、ユナは一瞬言葉を失って唾を飲み込む。


「わぬが……この家に?」


 突然の事に戸惑いを隠せないでいた。


「そうだね。君も住む場所がないと困るでしょ?」


 崇文も住んでいいと言っていた。後はユナの返答次第である。


「ううむ。それはありがたいのだが、本当にいいのか?」


「大丈夫だよ。大人の手続きは僕がやっておくから」


 面倒な事は全て崇文が引き受けてくれるというのだ。こんな優しい人間は滅多にいない。


「あ、ありがとう!」


 ユナは感謝の気持ちを忘れずに、日本式で頭を下げて礼を言ったのだった。


「困ったときはお互い様って、お遍路で学んだから」


 そう、崇文は四国八十八か所を巡ったことが過去にあるのだ。


「お遍路……聞いた事がある」


 ユナは日本に来る前にある程度勉強していたため、お遍路の事をある程度知っていた。


「その時に家の大切さを身に染みて感じたからね。君を見ていると放っておけなくてさ。両親が迎えに来るまでここにいていいからね」


「あ、そうだ」


 すると、ユナは突然大きな声を出した。


「どうしたの?」


 翔太朗が顔を近づけて尋ねてきた。


「あの場所に荷物置いたままだった!」


「あの場所……あきちの事?」


「そうだ。とってこないと」


「もう暗くなるし、僕も一緒について行くよ」


 すると、崇文は押し入れの中に上半身を入れて探し物をしていた。しばらくすると押し入れから出てきた崇文は片手に懐中電灯を持っていたのだった。しかも、見事に古風な懐中電灯だ。



「僕もいくっー!」


「そうだな。その空き地とやらに案内してくれ」


 こうして、空き地に荷物を取りに行く事となったのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ