012 疲労感
長くはないと感じさせらる。いつかはこの家を出ていく時が訪れるだろう。しかしユナは1秒だって無駄にはしない。地球に墜落して一家の元にお世話になっているのも天命だと思えば危機感を覚えない。今のユナにとっては何よりも安心感が必要だ。未開の地に降り立ったのだから相応の覚悟も必要ではあるが、それと同時に心が休まる場所を本能的に求める。いつもと同じ生活とは違ってジャパニーズ風呂にも悪戦苦闘中だ。風呂から出ると予想以上に時間が立っていた。もはや一刻の猶予もならないというのに、身体がポカポカして睡魔に襲われる。パジャマに着替えてフラフラと千鳥足になりながら目的を果たそうとするも限界だ。布団に倒れてスースーと眠ってしまった。あっという間に夢の中に誘われたのは適度な疲労感と寝床の確保だろう。少なくともこの一家はユナに対して敵対心を抱いていない。日本人のデータベースに入っていた特徴的な性格と一致する。つまり日本人はお人好しであり、困った人間を見逃せない民族なのだと。そこまで計算したつもりは無いが、成り行きに身を任せるだけで、しばらくの拠点が見つかったのだ。やはり目的成就のためには運は必要であると再認識させられる。