010 シャワーの使い方
「シャンプーで髪を洗ったら、次は洗い流すよ」
翔太朗はそう言い始めた。髪の毛についた泡を洗い流すのだと。
「洗い流す? どうやって」
ユナは疑問に思って、翔太朗に尋ねた。
「これを使うんだよ」
翔太朗はそう言って、シャワーを取り出した。そして、シャワーから丁度いい温度のお湯を出すのだ。シャワーは勢いが強い訳でもなく、弱い訳でもない。絶妙な加減を保っていたのだ。
「何だコレ、管からお湯が出ている?」
不思議そうな目で、シャワーを見ていた。
「そうだよ。これがシャワーっていうんだ」
「スゴいな。地球にもこのような技術力があろうとは」
ユナはシャワーというものを間近で見ている。初めて見るものは、やはり新鮮味があって面白いのだ。
「成程。これで髪の毛についた泡を洗い流すのだな?」
「そうだよ。僕が見本を見せるからね」
そう言うと、翔太朗はシャワーのお湯を頭上に降らしながら、ゴシゴシと髪の毛を洗い始めた。それにより、見る見るうちに泡が流れ落ちて行くではないか。
「凄いな」
「凄いでしょ」
目を瞑りながら、翔太朗は口を動かしていた。それを不思議に思ったユナは、翔太朗の顔を覗きこみながら話し掛ける。
「なんで目をつむっている?」
「落ちてくる泡を目の中にいれさせないためだよ」
そうだと言っている。泡避けに目を瞑っているのだと。すると、完全に髪の毛から泡が落ちると、翔太朗はシャワーを渡してきた。
「今度は、わぬの番か」
やはり興味津々だ。かなりテンションが高いのだ。
「そうだよ。やってみて」
ユナは翔太朗の真似をしてシャワーで泡を洗い流し始めた。シャワーを使う事はそんなに難しい事ではないので、簡単に髪から泡が無くなっていくではないか。
「こんな感じか?」
ユナは片目を開けて尋ねた。
「そうだよ。上手いじゃん!」
「へへへ。もっと褒めていいぞー」
ユナは褒められるのが好きだ。思わず顔を赤らめている。
「シャワーを止める時は赤い栓と青い栓を同時に捻るんだよ」
「こうか?」
すると、シャワーの勢いが完全に止まった。
「そうだよ。お湯を出す時は反時計回りに捻ればいいからね」
「分かった。反時計回りだな」
ユナは一人で反復しながら頷く。
「次は体の洗い方を教えるからね」
そう、次は体の洗い方を教えるというのだ。