オレとツレの子育て事情
どう見ても親馬鹿です。本当にありがとうございました。
何で赤ちゃんってこんな可愛いんだろう。
むしろうちの子マジ天使。
ちっちゃくって、にぎにぎ動いてるてのひらとか。ふにっふにのほっぺとか。ぱっちりつぶらな目とか。そんでもって、こっち見てにっこり笑った顔とか。
あと、仕草も可愛いんですよ。ホント。
寝てる時に口もぐもぐしてたりさ。
自分の手をじーっと不思議そうに見て、パクッて食っちゃったりさ。
まだ起きあがれないんだけど、寝たまま足をふみふみしてたりさ。
もう、ね。たまらんですよ。
「あー、もー、可愛すぎるぞこんにゃろー! うちの子最高! うちの子超可愛い! むしろ全オレランキング堂々の第1位ですよ! 何でこんなにイケメンなんだこんにゃろー! かじっちゃうぞこんちくしょー!」
「……お前、毎日そんなんばっかりだな。飽きないか?」
「飽きる訳ねぇですよ」
何やら後ろでブツブツ言ってるツレはほっといて、オレは目の前でもぞもぞしている可愛い物をじっと観察する。
てか、本当に飽きないんですよ。
毎日着々と成長してるからね。
たとえばさ、ご飯の時にだっこするじゃないですか。
段々重くなってきてるんですよ。
昔は座って無かった首は今はしっかり座ってるし。
赤ん坊の成長って何か不思議だ。
オレも通った道のはずなんだけどね。
「……うりゃっ」
にぎにぎしてる手の間にそっと指を入れてみた。
きゅっと両方とも握られた。
やべぇ、嬉しい。
顔のニマニマが止まりませんよ。
手ぇ繋がってる状況に胸の高鳴りとトキメキが止まりませんよ。
「……もしかして、これが恋か」
「は?」
なんかバックの方で疑問の声が上がっていますが、スルーです。
「何でこんなに可愛いんだろ。不思議だなぁ……我が子がかっこよすぎて生きてるのが辛い」
「お前なぁ……落ちつけよ。言う程大したことないぞ。大体、イケメン嫌いじゃないのか」
何故か微妙に低くなってきてるツレの声に、オレは呆れながら堂々と宣言する。
「うちの子は別バラです」
「いや、その言い方なんかちょっと違うって言うか怖いぞ」
「むしろイケメン我が子ばっちこーい。運良くオレに似なかったし、心おきなく世の中イージーモードの美形人生を満喫するが良いさ!」
「お前、美形ってものにどう言うイメージ持ってるんだ……つぅか、お前に似てないか? 似てるだろ」
「えー? 似てねぇですよ?」
どこからどう見てもツレ似です、本当にありがとうございます。
オレに似たらさぞかし可愛げのない子たちになってただろうから、ここは遺伝子の不思議に感謝しておきましょう。
てか遺伝レベルでチートかよこの野郎。
ケッと振り返って睨んだらきょとんとされましたよ。
しかし微妙に嬉しそうなのは何でだ。マゾか。マゾなのかこの野郎。
「中身は似るなよー。あんな大人になっちゃいけませんからねー」
「おーい……」
話ついでに抱き上げて頬ずりうりうりしてると、後ろの方で放置してたツレがのっそりと立ち上がった気配がした――と思ったら、目の中に喜んで投入出来るぐらい可愛い我が子があっさりオレの手から取り上げられていた。
おのれいつの間に。
「返せー! マイオアシス! オレの天使!」
「俺にもちょっとぐらいやらせろ」
「……おおぅ、すまん」
ちょいと不機嫌が入ってるツレの言葉にオレはちょみっと反省する。
そう言えば独占してました。
そうだよな。オレだけの我が子じゃねぇんですよ。オレばっか構ってたらそりゃあダメだよな。フェアじゃねぇよな。
うんうん、とオレは理解のある母親らしくおーよーに頷いて、「良いよ」と告げる。
それにツレはまだ若干不機嫌を引きずっている顔で「そうか」と無駄美声で言って、オレのエンジェルズをベッドに戻した。
……あれ? なんで戻してんの?
「じゃ、遠慮なく」
「ぎゃー! 違う! うちの子あっち!」
「俺はこっちが良い」
「ひぎゃー! なんか頬にずりずりされてる! てか微妙にヒゲ当たってる! きしょいきしょいきしょいー! てか痛いんじゃゴルァー!」
「ガキばっか構っているからだ」
「意味分からんし! てかマジやめろ、マジでやめろ、こんにゃろこんにゃろこんにゃろっ!」
とりあえず蹴りまくりましたが、解放されたのは30分後でした。
もうやだ、こいつ。
放置されて拗ねたらしい。