1章-1 冒険者ニト
デスゲームもの。生き残りを懸けて、人と人が殺し合います。残酷描写ありです。
登場人物の紹介から読みたい場合は「1章-3」から、
いきなりゲーム開始から読みたい場合は「1章-6」から読んでもらえればいいと思います。
それぞれ前書きに簡単なあらすじも付いてます。
その瞬間、僕はひとりで声を上げた。
「やった!」
力を込めた拳で何度もガッツポーズをとる。熱い興奮と歓喜が胸の中を走り回っていた。
ドラゴンスレイヤー。頑強な竜の鱗も一撃で砕くという、最強と名高い伝説の剣。幻とさえ言われている貴重な武器だ。
それを手に入れた。ついに僕のものになったのだ。
振り返れば気の遠くなるような長い旅路をやって来た。死闘の繰り返しだった。冒険者となって旅を始めた頃は、何度も命を落とした。その度に出発地点である町へ戻され、所持金を失くし、道具を奪われた。
諦めなかった。すぐにまた迷宮へ向かった。より遠く、より深く。迷宮の地図を少しずつ書き足しては、さらなる未踏の地へ進んでいくことを繰り返した。
迷宮の探索は緊張の連続だった。どこに怪物が潜み、どこに罠が仕掛けられているかわからない。常に細心の注意を払っていなければならなかった。油断はすぐに死へ直結する。
体力が三分の一減ったなら回復させる。新しい扉を開けるときはすぐさま攻撃できる態勢を取っておく。そこまで気を配っていても、発見した宝箱が爆発して死んでしまったこともある。仕掛けられた罠の解除を怠った、自分の手痛いミスだった。
そんな数々の苦労も一気に報われた。戦士の職業に就いた者なら誰もが憧れ、いつか手にしたいと願うドラゴンスレイヤーを手に入れたのだから。
僕は取り出した煙草に火をつけ、大きく息を吸い込んだ。パソコンの画面には短いメッセージが表示されている。
『ニトは“ドラゴンスレイヤー”を手に入れた』
淡々としたそっけないメッセージだったが、だからこそ逆に静かな達成感を噛み締めることができるようだった。この一文を目にすることができるプレイヤーは数少ない。僕は自分が選ばれた存在になった気にさえなった。
メッセージに重なって、ひとりの戦士が映されている。僕の分身である「ニト」だ。白銀の髪をうしろにまとめた精悍な顔つきの青年。その右手には手に入れたばかりのドラゴンスレイヤーが握られている。剣の柄には竜が翼を広げた意匠が施され、刀身は鈍い青色の光を放っていた。
僕はじっくりとドラゴンスレイヤーを眺めたあと、ニトと目を合わせた。3Dポリゴンで描かれた無表情が、ちょっと得意げに微笑んでいるように見えた。
煙草を吸い終わった僕は、再びキーボードの操作を始めた。久しぶりに町へ帰ることにする。ここ数日、迷宮へ潜りっ放しだったということもあるが、やはり何よりもドラゴンスレイヤーを見せびらかしたいという思いがあった。
MMORPG『ウロボロス』。
僕は今、この世界の住人として生きている。
MMORPGをフルスペルで書くと「Massively Multiplayer Online Role Playing Game」となる。簡単に言うと、オンライン上で大規模な人数が遊ぶゲームのことだ。ネットワークを通じて何百、何千という人たちが同時にひとつの仮想世界へアクセスし、その世界の住人となって冒険を楽しむのだ。
これまでのようなひとりでプレイするゲームと決定的に違うのは、画面に登場するほとんど全てのキャラクターが誰かの分身であることだ。迷宮を探索している冒険者はもちろん、町で買い物をしている者やデートを楽しんでいるカップルも、どこかの誰かと繋がっている。
だから幾つもの出会いと別れがある。言葉を交わし、気が合えば連れ立って酒場で盛り上がったり、いっしょに冒険をすることもある。迷宮の情報を教え合ったり、手に入れたアイテムを交換したりもする。もちろん気に食わないやつだっている。
とにかく言えることは、皆が同じ世界で暮らしているということだ。
生き方も自由だ。僕のように戦士という職業を選び、冒険者として生きる者もいれば、様々なアイテムを集めて店を開く者もいる。暇な相手を見つけて談笑しているだけでもいいし、仲間を募り、新しい町を興したっていい。
結婚することだって可能だ。お互いが合意すれば登録を届けることで婚姻関係を結べる。それがきっかけとなって、現実世界で本当に夫婦となったプレイヤーもいる。別に珍しい話じゃない。逆に理想の女性だと思っていた相手が、現実世界では男だったという悲喜劇も起こり得る。
ゲームのために構築された仮想世界とはいえ、その中でできることは現実世界とほとんど変わらない。違うことといえば、互いに触れ合えないことと、会話がキーボードを打つことによるメッセージの交換であることぐらいだ。
逆に利点の方が大きいと思う部分さえある。
ゲームの中ではお互いが直接顔を合わせる必要がないし、素性もわからないために、自分の内面を外に出し易いのだ。僕自身、現実世界では決して口にしないような考えや昔話を、ゲームの住人にはためらいのないまま話してしまったことが幾度もある。
この魅力を知らないひとには眉をひそめられるだろうが、僕にとって『ウロボロス』の世界は、現実世界よりも価値のある場所となっているのだ。
僕はワープゾーンを使って、地下深くの迷宮から一気に地上へ戻った。薄闇に包まれた風景が一転し、辺りは遠くまで広がる草原に変わる。
久しぶりの地上。僕の胸に開放感が広がった。
細部まで丁寧に描かれた世界は、僕に現実感を伴って迫ってくる。どこからか聞こえる鳥の声。風にそよぐ草原の草木。全てがプログラミングで作り出された虚構だとわかっていても、僕は柔らかな風を感じ、草の臭いを嗅いだ気持ちになる。
僕は通い慣れた道をたどり、町へ急いだ。
アーチ状の門をくぐると、そこは中央広場だ。円形の広場を囲むように宿屋が店が立ち並び、中央には冒険者の旅の安全と幸運を祈る守護女神像が安置されている。冒険者たちはここから迷宮へ旅立ち、また帰ってくるのだ。
僕は胸を張りながら入り口の門をくぐった。
途端に反応があった。町を行く人々が僕――ニトのことを振り返り、驚いた顔を見せる。メッセージが表示される吹き出しには「!」のマーク。これはプレイヤーが驚いたことを表す省略記号だ。キーボード上では左上端にある数字の「1」に相当するキーを押せばいい。小指で素早く押せるために、色々な場面で多用する。何かを発見したとき、強い怪物が出現したとき、会話の中で驚いたときなど、まずプレイヤーは「!」マークを打つ。
面白いのは「!」マークとともに、ゲーム中のキャラクターたちも驚いた表情を作ることだ。キャラクターには幾つかの表情が用意されており、共通の省略記号に反応して表情を変える。「w」の文字をみっつ続けると「笑い」の意味になり、キャラクターは笑顔を浮かべる。「?」マークの「わからない」で思案顔、「¥」はピースマークを表しており、キャラクターは得意げな表情を作るという具合だ。
僕の行く手には幾つもの驚いた顔と「!」マークが乱舞していた。誰もが僕が腰にぶら下げたドラゴンスレイヤーに驚いているのだ。
中にはメッセージで感嘆の言葉を投げかけてくるプレイヤーもいる。
『ドラスレだ!!!!』
『すげ!!』
『くれくれー』
プレイヤーは自分のキャラクターを動かしながらキーボードを打つことになるので、メッセージはたいていの場合、簡素なものとなる。句読点はもちろん言葉自体が省略されたり、記号が多用されるのもそのためだ。でもだからこそ、ゲームの中では各プレイヤーの感情がそのまま伝わってくるように僕は思う。
僕は「!」マークと一言だけの賞賛を浴びながら町の中を進んだ。沸き立つような高揚感に口元が自然とほころぶ。
なるほど、とひとりで納得する。有名人や金持ちは、きっとこんな気持ちをいつも味わっているのだろう。
行く先々で人々が羨望の眼差しを向け、感嘆の声を上げる。でも決して近づいてはこない。なぜなら僕が、一般人では到底たどり着けない高みにいる男だからだ。
ただその判断基準が、現実世界では地位や高級車やブランド品であるのに対し、この『ウロボロス』の世界ではドラゴンスレイヤーであるというだけの違いだ。
僕は散々町の中を練り歩いてから、やっと仲間に対する「呼びかけ」を行った。
「呼びかけ」とは自分が登録した特定のプレイヤーに対して自分の居場所を知らせる機能だ。何千人というプレイヤーが存在する『ウロボロス』の世界で、特定の相手を見つけるのは難しい。たとえお互いにアクセスする時間と待ち合わせ場所を決めていたとしても、すんなりと出会える保証はない。
だから「呼びかけ」機能がある。この「呼びかけ」を実行すれば、仲間同士はすぐさま一箇所に集合できるというわけだ。現実世界における携帯電話のようなものと思えばいい。
『ニトは仲間に呼びかけた』
メッセージに合わせて、画面上のニトが両手を口元に添えて声を張り上げる格好をする。一拍後、三つのメッセージが次々と表示された。
『ブラウンはニトの呼びかけに応じた』
『ガッツはニトの呼びかけに応じた』
『キキはニトの呼びかけに応じた』
メッセージに続いて三人のキャラクターたちがどこからともなく走ってきた。僕がパーティーを組んでいる仲間たちだ。
パーティーとは冒険をする際のチームのことをいう。迷宮はひとりで探索するには危険過ぎる。だから大抵のプレイヤーは気の合う仲間を見つけ、パーティーを組んで冒険に出かける。そうやって協力して強い怪物を倒したり、傷ついたときに助け合うことで、ひとりでは到底入り込めない場所にまで行くことができる。
だが何と言っても一番の利点は、会話が楽しめるということだ。そこにはドラマが生まれる。
知らないひとが聞けば、何を大げさなことを、と鼻で笑うかもしれない。でも仮想世界の中には、現実世界では到底体験できないようなドラマがあるのだ。
迷宮に記されていた謎の呪文を、見事に解読した彼のひらめき。強敵を前に彼女が振るった剣の冴え。死闘の末、パーティの全滅を覚悟したときに見つけた“回復の泉”の前では、皆で手を取り合うようにして喜んだ。それらの思い出はどれも、鮮烈な感動とともに心に焼きついている。
同じような毎日が繰り返される日常で、何度も反芻して思い出すような出来事はどのぐらいあるだろう。半年に一度? いや、一年に一度あればいい方じゃないか? 少なくとも僕はここ十年以上、思い当たることはない。
現実世界にいるよりも“生きている”ことを実感できる場所。ゲームの中にある仮想世界は少なくとも僕にとってはそういうところだ。
僕の前に三人の仲間が集結した。
ついさっきまで、いっしょに迷宮にいたメンバーだ。そこらの怪物とは比べものにならない強敵――ボスキャラとの戦いで命を落とし、地上へ強制送還されていたのだ。かろうじて生き残った僕ひとりがどうにかボスキャラを倒し、ドラゴンスレイヤーを手に入れたというわけだった。
期待していた反応がすぐに返ってきた。「!」マークが三つに驚いた顔。僕は画面のこちらで思わず顔をにやけさせながら、わざと『ただいま』と平凡なセリフを打った。その一言が合図となったかのように、三人のメッセージがいっせいに表示された。
『それはドラスレではないですか!!!』
『帰還が遅いので心配してたけど、まさかそんなものを手に入れていたとはね』
『すごいわたし本物見るの初めて!!』
三人に乞われて、僕はドラゴンスレイヤーを鞘から抜いて見せた。光り輝く青い刀身に、三人が感嘆の声を上げる。切れ味も試してみたかったが、怪物のいない町中ではさすがに無理だった。
ひと通りのお披露目が終わったところで、僕は三人に向けてキーボードを叩いた。
『本当にみなさんには感謝してます。DSが手に入れられたのもみなさんの力があってこそです』
正直な気持ちだった。
長く冒険を続けているとパーティーを組む相手も変わっていく。理由は千差万別だ。
キャラクターの転職によってパーティーのバランスが悪くなったり、ゲームの中で“冒険者”という生き方を捨てたときに別れが訪れたりする。中にはある日を境に突然、出会えなくなってしまったという相手もいた。もちろんいつも同じメンバーが同じ時間にアクセスできるわけではないので、適当に声をかけて、一度きりのパーティーを組むことも珍しくない。
ひとによっては、普段いっしょに遊んでいる友達といっしょにゲームを始め、ずっとパーティーを変えないというプレイヤーもいる。だが僕には縁のない話だ。僕には現実世界で友人と呼べるような相手はいない。
そんな中、目の前の三人との付き合いはとても長い。パーティーを組んでからもう二週間以上は経っている。プレイ時間で言えば百数十時間ということになるだろう。
出会ったときは、四人全員がお互いに初対面だった。とにかく迷宮の先へ――より深い場所へ行きたくて、軽く声をかけて見つけたメンバーだった。きっと他の三人も同じような考えだったろう。
本音を言うと僕は、一度きりのパーティーだろうなと思っていた。実際、初めて会った日は、次にアクセスする時間を決めることもなしに別れたのだった。
だが次の日も、その次の日も、僕たちはパーティーを組んで迷宮へ出かけていた。最初に「呼びかけ」を行ったのはガッツだったかそれともブラウンだったか。ともかくそれに応じてみると、他のふたりも駆けつけていた。次の日もやはり同じような具合。三日目ぐらいには僕が呼びかけてみた。示し合わせたわけでもないのに、やはり四人が揃っていた。
これがひとの縁というやつだろうか。僕たちはいつの間にか、ずっと以前からそうだったかのように、四人で冒険を続けるようになった。
面白いのは、長くパーティーを組んでいると徐々に息が合ってくることだ。阿吽の呼吸というやつだろうか。迷宮を進むときの隊形、怪物と遭遇したときや罠を解除するときも、決めたわけでもないのに役割分担ができていたし、いざというときには自然と助け合った。
僕がドラゴンスレイヤーを手に入れることができたのも、そんな仲間たちがいてくれたおかげだ。三人は残念ながら先にやられてしまったものの、彼らの力がなければ、到底ボスキャラを倒すことなど不可能だった。
『ホントにサンクスです』
僕が重ねて礼を言うのに、三人も温かい言葉を返してくれる。
『いやいやこちらこそ先にさっさとやられてしまって面目ないです』
『そうそう全部ニトさんの実力っすよ』
『ボスがDSを落とすのだって確率の問題だしね。ニトさんが強運だったってこと』
迷宮の各所で登場するボスキャラを倒したとき、どんな宝物が出るかはプログラムされた確率による。特にドラゴンスレイヤーほどの貴重品が手に入るのは極めて稀だ。同じボスキャラに何十回も挑んでいるプレイヤーがいる一方で、僕のように一回目で入手できるときもある。
くわえて僕たちはたったひとつだけ決まりごとを作っていた。原則的にボスキャラが落とした宝物は、戦いに生き残り、それを手に入れたプレイヤーのものになる、というものだ。
“原則的に”というのは、自分のキャラクターの職業によっては、不要なアイテムもあるためだ。たとえば僕のニトは戦士だから、それがどれほど貴重なアイテムでも、他の職業専用のものならば意味がない。だからそんなときはパーティーの仲間に譲るわけだ。
でもドラゴンスレイヤーは戦士のための武器であるため、約束通り、僕のものであるとして問題はない。
それでもやはりひとりで稀少アイテムを手に入れたというのは、ちょっとうしろめたい気分でもあった。だから三人の言葉に、僕は内心でほっと息をついた。
僕はすぐにキーボードに指を走らせた。ではではこれからもよろしくです。そうメッセージを打つつもりだった。
それより早くガッツが言った。
『それじゃこのパーティーも今夜で解散ってことで』
僕の指が止まった。どう反応していいかわからないうちに、他のふたりからも続いてメッセージが表示される。
『そうですね。ではではニトさんこれからのご武運をお祈りしています』
『またどこかで会ったら声かけてね』
画面の中で三人が背を向ける。僕は慌ててメッセージを打った。
『どういうことです???』
焦る気持ちが「?」マークの連打になった。
ゲームのキャラクターは声をかけられると自動的に相手のほうへ振り返る。そのプログラムにのっとって、三人がこちらに向き直る。
ポリゴンで描かれた無表情たちが言葉をつむぐ。
『言葉通りの意味ですよ。このままいっしょにいても我々はニトさんの足手まといになりそうですから』
『だからニトさんには抜けてもらおうって』
心がいきなり、しんと冷えた。僕が帰ってくるまでの間に、すでに話し合われていたことなのだ。だからといって引き下がるわけにはいかない。
ゲームが進むほど――迷宮の深部へ行くほど、新しい仲間は見つけにくくなる。パーティーのバランスが崩れたり、キャラクターのレベルが合わなくなるということもあるが、何よりも信用のできない相手をパーティーに加えることを誰もが敬遠するためだ。
せっかく手に入れた貴重なアイテムを横から奪われ、そのまま行方をくらまされてしまったというような話はよく耳にすることだ。特にひとりでうろついているプレイヤーは、そういった疑いの目を向けられてしまう。
僕はすがるような気持ちでキーボードを叩いた。
『これからは僕が先陣を切って戦いますよ。ボス戦も任せてください。レアもの手に入れて装備を固めてもっと深く潜りましょうよ』
『ニートうぜえ』
いきなり突きつけられた。
『あんた何もしてねえ引きこもりなんだろ。ニトって名前もニートから取りましたってか。バレバレだよ』
ガッツは「w」キー三連打による笑顔を作っていた。その横で相変わらず無表情のブラウンが言う。
『最初に会ったときはみなさん同じぐらいのレベルだったのに今ではニトさんだけが十も違いますからね。一日中プレイできるってのはうらやましいです』
『まったくだねあんた総プレイ時間はいくらだよ。ここんとこ、ついていくの大変だったぜ。ひとりで勝手に進まれてよ』
僕には返す言葉がなかった。短い沈黙のあと、最後にキキが言った。
『明日仕事あるからもう切るねばいばい』
止める間もなく、キキの姿は渦巻状の光に包まれ消える。ブラウンとガッツもすぐに続いた。
呆然となっているうちに、僕はひとり取り残されていた。
時計を見ると真夜中の一時を過ぎていた。僕からすればまだまだこれからだったが、普通のひとはもうとっくに寝ていてもおかしくない時間だ。ついでに言うなら、今日は平日だ。そのくせカレンダーを見ても、すぐに何曜日なのかはわからなかった。
これまでの総プレイ時間を表示させた。「736:14」――七三六時間と十四分。丸何日分なのかと計算しかけて、やめた。
ニート。職にも就かず、学校にも行かず、就労に向けた活動もしていないもののことをいうのだとか。
そのニートから自虐的につけた名前がニト。自分にぴったりとくるような気がして、すぐに愛着を持った名前だった。
でも今は、自分のことをひどく惨めなやつだと思った。