10.大臣閣下の1日
◇リーフ
政務用のスーツを着て宮殿に登城すると、一瞬で気持ちが切り替わった。
もとよりこちらの経歴の方が長いのだから当然なのだが、最近は町での生活にすっかり慣れてしまい、それが普通だった無表情も意識して作らなければならないときもあった。宮廷では、感情を見せることはあらゆる状況においてマイナスとなる。いつも鉄面皮でかわし、どんなときでもにこやかな笑顔を作れるというのが、この世界で生きていく秘訣だ。
「おや、お久しぶりですな、クラウス殿」さっそく廊下で、タヌキ顔のユーベル伯爵と出くわした。「最近はめっきりお姿を拝見しなかったので、病でも患われたのかと心配しておりましたぞ」
生きていて残念そうだな。「これは失礼しました。このところ屋敷にこもって仕事をすることが多くなり、陛下にもご無沙汰の無礼をしている次第です」
「お元気そうで何よりだが、お留守の間に夢境省がひっくり返ることがなきよう、お気をつけなされよ。はっはっは」
ひっくり返そうとしているのはお前たちだろう。「ご忠告、ありがとうございます。我が部下はわたしと違って有能な者たちばかりなので、いつも任せてしまうのがわたしの悪い癖です」
「まったく、心強いことですなぁ。……貴殿のような方にとっては」
それはどうも。「では、悪い虫がつかないよう、たまには顔を出しておきます」
感情や表情はなくても、心の中はお互いに見え透いている。全員がそれを充分承知した上で、この茶番を性懲りもなくくり返しているのだ。俺も外の世界を見て初めて違和感を覚えたくらいだから、彼らはごく当たり前の常識として疑問もないだろう。
「今月も、もう閣下がお戻りの時期なのですね」
夢境省の大臣執務室に入ると、多少の皮肉を交えたカリーナが、すでに会議の資料をそろえて待っていた。
彼女はそれほど身分のある家柄ではないが、頭の回転が早く、冷静で論理的な判断能力も高いので、三年前に副大臣に抜擢した。俺が屋敷にこもると称して宮廷に顔を出さなくなってからは、月に一度程度しかここに戻らない大臣に代わって省の切り盛りを任せている。もちろん具体的な指示を出してはいるが、細かいところまでよく気がつく彼女には、指示以上のことを期待しても裏切られることはない。
「こちらが今月の報告書、そちらは午後の会議の資料です」
「例の新施設の件は、またひと波乱ありそうだな。漁業組合が申し立てをしていると先週の報告にあるが、それから動きはあったのか?」
「今のところは沈黙しています。しかし今日の会議の結果によっては、また出てくるのは確実でしょう。海岸景観保全事業部も、そろそろ動くかと思われます」
「開園予定日までもう一ヶ月を切っているというのに、泥沼だな……」
「推進派、反対派ともに、閣下の動きに注目しております」
もちろん無視したこの前の反王党派の誘いのように、俺は良くも悪くも注目されることが多い。爵位は五つのうちの中位で、大臣といっても重要政策にはなんの関わりもない閑職(と思われている)で、何より閣僚の中では最年少だ。こんな取るに足らない若造が警戒されるのは、後ろに王の影があるからに他ならない。
「会議の前に、陛下にご挨拶を申し上げてくる」
「それでは、私は定例委員会がありますので、これで失礼します」
見事なブロンドの髪を後ろで束ね、細いメガネとスーツの隙のない立ち振る舞いで、カリーナはきっかり一礼して退室した。あれでおしゃれのひとつでもすれば、抜け目ない貴族たちが放っておかないと思うのだが、いかんせんまじめな役人肌が邪魔をして融通が利かない。俺としては、やりやすい優秀な部下なのだが。
「リーフ、来てくれたのか。ちょうどそちらへ行こうと思っていたところだ」
「陛下にお越しいただくなど、とんでもございません。ご挨拶が遅くなりました」
大国コルスコートの第四十代国王は、大半のイメージと違い、三十一歳という若さと気さくな性格であらせられる。即位なされたのも俺が当主を継いだ時期とほとんど同じで、王太子のご時分から弟のようにご温情をいただき、今でも人払いをして二人だけでお話になられることが多い。
「誰もいないのだから、そうかしこまらなくてもよい」
「陛下は主でございます。臣下がかしこまるのは当然です」
「昔は兄弟のように育った親友ではないか」
「あのころは若輩でございました。しかし今、陛下は国を背負っていらっしゃるお立場、一介の臣下などと同じ立場におられてはご威光に傷がつきます。わたくしは、そのご厚意だけで身に余る光栄です」
「あくまでも臣下の立場を貫くというのか……王とは孤独なものだ」
心の底に隠した本心が時折お見せになる陰りに表れるが、それを口にするほど愚昧なお方ではない。いや、むしろ王たる素質は充分におありになる。ただ、優しすぎるのだ。
「すまぬ、愚痴を言ってもそなたが困るだけだな」
「王の孤独を代わって差し上げることはできませんが、おそれながら、どちらもそう思っている限り、友というものは一生変わるものではございません。陛下のお力になることが、わたくしの務めです」
「そう、か……ありがとう、リーフ。わたしはわたしの務めを果たさなければな」
アルベール陛下は王という絶対者でありながら、自分の非を認めることも頭を下げることもできる。甘すぎて威がないと言う者が多いことは知っているが、これこそが人の上に立つ者に必要な素質なのだと思う。威厳など後からいくらでも付けることができるし、それを助けるのが臣下であり友である、俺の役目だ。
「王妃様はご息災でいらっしゃいますか」
「早く子供がほしいと、いつも言われてしまうくらい元気だよ」
「お世継ぎの重圧を誰よりも感じていらっしゃるのは、王妃様ご自身でございましょう」
「クラウス家も、そろそろどうなのだ?」
「申し訳ございません。社交界にもあまり顔を出していませんので……」
「どうもクラウス家は代々、社交界を嫌う者が多いらしいな。初代をはじめ、十人以上が貴族でない者と結婚していたのではなかったか?」
「おっしゃるとおりです。が、こればかりは、どうも……」
「ふふ、町へ出たらよい女性でも見つかるかと思ったのだが、どうかな?」
その問いには曖昧に笑って直答を避けたが、そのとき頭に浮かんだのはただ一人だった。しかし、本当に彼女のことをどう思っているのか、自分でも正直よくわからない。心を開いて人と接したことさえほとんどないのに、恋愛など想像するのもむずかしい。色恋沙汰こそ宮廷の華だと言ってはばからない貴族連中との付き合いが疲れるのは、それが原因なのか、そのせいなのか。これは難解な堂々巡りだ。
「わたくしがお留守にさせていただいていた間に、ずいぶんと魚が群がってきたようでございますな」
どうもこの分野を突っ込まれるのは苦手だから、前置きはこれくらいにして本題に入った。俺が町へ出ていることを知っているのはアルベール陛下だけで、他の貴族や閣僚たちには、ますます職務怠慢で人付き合いが悪くなったと思われている。もしも彼らに知られた日には、今も見え隠れしている刺客の影がいっせいに押し寄せてくるだろうな。
「しばらく事故や災害が続いた西地区の活性化につながると思うのだが、あそこは国内漁業の中心地だけに、組合を無視するわけにもいかん。工事が進むほど影響が出てきても、今さら中止するとさらに状況は悪化する。もはや進むことも引き返すこともままならぬ状況だ」
「引き返す必要はございません。今のまま進むことはできないというだけで、同時に対策をとって進めればいいのです」
「同時に対策、か……。リーフ、地図を見せてくれ」
陛下は万能の天才ではない代わりに、臣下の意見にひとつひとつ耳を傾け、そこからすぐに何かを見つけられる。この聡明で謙虚な姿勢は天性のものであり、これを優柔不断だと批難するだけの者たちに、王の重荷と資質など理解できるはずがない。
「先日、潮の流れについて海洋学者を招いて講義をさせたのだが、ここから湾にかけての変化がもっとも重要らしい。それが乱れるなら、こことここ……それとこのあたりへ、石を置くか壁を作ってもとの流れに戻せないものかと思うのだが、どうだ?」
「漁業組合の方は、それでかなり抑えられるでしょう。環境保護団体については、自然との共存というテーマを前面に出して、その方面への配慮を加えるべきかと存じます」
「では、そちらの専門家も呼ぶとして……しかし自然環境への配慮は、それほど短期間では改善できないだろう。継続的に対策を進めるために、環境分野の学者か博士を館長に置くことにしよう」
「ご英断です」
これで、政府が進める公共施設が民間と協力できる体制になる。この草案を陛下が提議してくだされば、あとは必ず出てくるだろう理不尽な反論を俺が切り返す。普段仕事をしていなくせに会議では発言がうるさいとなると、確かにうっとうしいだろうな。そう思われることまですべてが思惑どおりなのだから、俺も役者がうまくなったものだ。
さらに細かい打ち合わせをして臨んだ会議は、予定の夕刻を過ぎても決着がつかず、夕食をはさんで夜遅くまで続いた。休憩を入れて十時間というのはそれほどめずらしいことではないのだが、中身はよく聞いているとくだらない意地の張り合いばかりだ。すでに館長に内定していた男爵はホーキンスの忠実な子分だから、反王党派の反論はそれこそ火を噴くような勢いで、早い者勝ちだなどと子供じみたことまで言い出す始末だった。ここまでくると本気で相手をする気もなくなり、逆に苦笑をこらえるのに顔の筋肉が痛い。
「少々強引ではなかったか? 彼らも納得してくれていればいいが」
王の支持者や少しでもまともな判断ができる者たちが過半数を占めて会議が終わった後、出席者が全員いなくなってから陛下に呼び止められた。周囲を気遣われるのはすばらしい人徳だが、国王という唯一無二の激務と重圧をこなすにはあまりに細やか過ぎて、ときどきそれがあだにならないか心配になる。
「ご心配には及びません。彼らは何を言っても反論を出してくるでしょう。議論の内容自体に意味はないのです」
「やはり、わたしが気に入らないのだろうな」
「いいえ、陛下ご自身ではなく政権を狙っているだけです」
そう、本当に邪魔なのはこの俺で、お優しい陛下はむしろ利用できると値踏みしているところだろう。
「彼らは理想のために、わたしやそなたを廃すつもりなのだろうな」
「そのような意見の違いなど、常にあるものですから……」
「案ずるな、わたしは退くつもりはない。理想はあっても理念がない彼らに、玉座を渡すわけにはいかない……わたしには、この国と民を守る義務がある」
「……王のご自覚、ご立派でございます」
即位されたころは誰もが頼りないと思うほど穏やかで繊細だった王は、今やその中に確固とした強さもお持ちになっていた。どうやら俺が危惧していたことなど、杞憂だったようだな。
「おぉ、これはこれは。まだこちらにいらっしゃいましたか」
陛下の泰然とした言葉に安心して会議室を出たところで、なぜか先に戻っていたはずのラウフェイ侯爵に会った。彼は反王党派ではないが、発言力が大きいのにどちらへ転ぶかわからない曖昧な態度で最後までまわりを振りまわすから、気を許すことはできない。
「先ほどの陛下の草案とクラウス殿の弁論、とてもお見事でございました」
「候の賛成あってこその成立であったぞ」
「ありがたきお言葉です。……ときにクラウス殿、お話したいことがあるのですが、少しよろしいですかな?」
どうせロクなことではない。「申し訳ありませんが、この後すぐに省内の打ち合わせがありますので、今こちらでお願いできますか」
「いや、しかし……」
「何か、陛下の御前では不都合なことでも?」
「とんでもない、これは私的なことなのですが、陛下のお邪魔でなければ申し上げましょう。クラウス殿、我が末の娘をご存知ですか?」
やはりロクでもなかったな。「ミラヴィ嬢には、舞踏会や晩餐会で何度かお目にかかったことがあります」
「貴殿の聡明な見解や優れた行動力はわたしも存じ上げているが、娘がそのご活躍を聞き及び、ぜひお話などを伺いたいと言っておりましてな。今度の晩餐会あたりにでも、招待させていただけませんかな?」
「大変ありがたきお申し出、光栄にございます。わたしもご令嬢にはご挨拶に伺わなければと思っておりました。が、どうにも仕事の効率が悪いようで、しばらくは時間が取れそうにございません」
「そう急くこともあるまい。来月になれば……」
「ここで不用意にお約束などいたしましても、万が一候のご期待を裏切ることになっては、それこそ申し訳がたちません。候のお申し出を最優先に調整いたしますので、今しばらくお待ちください」
「ふむ……そこまでおっしゃるならば致し方ない。では、こちらも“そのつもり”で進めさせていただこう」
「そのつもり……とは、どのようなおつもりで?」
「いや、ここでは野暮なことは申すまい。それでは陛下、クラウス殿、お時間をいただき、ありがとうございました」
ラウフェイ候は含み笑いを残して、さっそうと行ってしまった。いつもながら言いたいことだけを言って、どうあっても結論を変えるつもりはなかったのだろう。また厄介な者に目をつけられたな。
「よいのか、リーフ? 彼は見合い話を進めるつもりだぞ。彼のことだ、下手をしたら婚約まで言いかねんな」
「こればかりは、両者が合意しなければ進みません。放っておきます」
「一度くらい会ってみてもよいではないか。ミラヴィ嬢は絶世の美女と評判も高いし、侯爵ならばクラウス家の後ろ盾としては心強い」
「陛下のお心遣い、心より感謝いたします。誠に申し訳ございませんが、まったくそのつもりはないので……」
「やれやれ。有能で容姿端麗なクラウス伯は女嫌いではないかと、最近ではもっぱらのうわさだぞ?」
「そう思われても反論のしようがありません。当主としては失格です」
王族は当然のように政略結婚だが、陛下と王妃様はまわりがうらやむほど、とても仲むつまじくあらせられる。俺も伯爵家の当主として結婚することは義務でもあるのに、まだ結婚像を想像することもできない。俺が人を愛することなどできるのだろうか。自分でもどうしようもないくらい感情が欠落していることは自覚している。これまで形だけ付き合った女性に、それらしい思いを感じたこともない。一生そばにいたい、特別な存在とは……。
『リーフさんの特別コーヒーを作っておきますね』
なぜか唐突にあの笑顔が浮かび、彼女のコーヒーが飲みたくなって、いても立ってもいられなくなった。
「それでは陛下、今日はこれで失礼します」
「これから省の打ち合わせではなかったのかな?」
「……急用を思い出しました。どうかご内密に」
省内会議などあるはずもなく、夢境省のある棟と反対側に向かう俺を、陛下は肩をすくめて見送られた。
この時間なら、まだ店は開いているはずだ。このまま帰ったらカリーナが怒るだろうな……後で詫びの電話を入れておこう。もっとしっかりしてくれないと困るだの、こんなことでは予算がおりないだのという訴えは、来月たっぷり聞くことにして。
「あ、リーフさん、いらっしゃい!」
「おかえり、リーフ!」
「おう、早かったなぁ」
「……」
急いで『エーミル』に行ってみると、出迎えたのはエリィだけではなかった。せっかく二人で……いや、なぜアパートで留守番をさせていたはずのシアと、面倒を頼んだクランまでここにいるのだ。
「あのね、きょうはエリィおねえちゃんのおてつだいをしたんだよ」
「手伝い?」
「あー、これはだなぁ。シアがどうしてもエリィちゃんに会ってみたいって言うからさ。オレもデートがあったし……」
クランが任せておけと言うから屋敷へ戻さなかったのに……どうやら二人とも共謀していたようだな。
「こんなことでは、次からはアパートに残していくわけにはいかないな」
「えー! あたし、いいコにしてたよ!」
「リーフさんも親戚の子を引き取ったのなら、放っておいて出かけるなんて駄目じゃないですか」
「そうだぜ〜。そもそもオレに任せたお前が悪い」
純粋に抗議するシアと、逆に説教するエリィと、開き直ったクランに、俺はもう何も言えなかった。こんなことなら、城に残って仕事を片付けてくればよかった……。
「俺の仕事や屋敷のことなど、何も言わなかっただろうな?」
なぜか疲れ果てた帰り道、シアに確認したら、クランが俺の親戚だと説明した以上のことは何も言わなかったらしい。エリィの様子がいつもと変わらなかったから大丈夫だろうとは思ったが、念のためにいつも秘密にしておくようにと厳しく口止めしておいて正解だった。
「いいんじゃねぇの? エリィちゃんにも本当のことを言ってもよ」
クランはのんきに言うが、事の重大さをまるでわかっていない。
「俺のことを知ったら、刺客に狙われる可能性ができる。そんな危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「おーい、オレはどうなってもいいのかぁ?」
「当然だろう」
「んなっ……!」
「冗談だ」この程度、さっきの仕返しにもならん。「お前は多少のことなら自衛できるだろう。それに『夢殿』に所属しているから、そう簡単には手を出せない」
「なんだ、それ? もしかして首領にビビってるからなんて言うんじゃねぇだろうな」
「お前はあまり実感がないだろうが、ウィルドの影響力は引退した今でも強大だ。表立って役人が動くだけでも、周辺国から駆けつけるその道の者たちでリシュトの人口が急増するのに、裏で何かあったらそれこそ彼らのホームグラウンドだ。政府もそれを黙認しているからこそ、わざわざ刺激するようなことはしない」
毒をもって毒を制す。妻を亡くして復讐に燃えていたウィルドを代表に据えたのは、そう考えた俺の父の推選だ。彼がそこにいるだけで裏の治安を担っているということを、本人さえ自覚しているかどうか。
「それよりリーフ、お前、なんでオレ達があそこにいることがわかったんだ?」
「……少し、立ち寄ってみただけだ」
「あぁ、あー、そっか、悪い悪い。邪魔しちまったなぁ」
「俺は何も言っていないぞ」
勝手ににやにやしているクランをにらみつけても効果はなく、反対側からシアに腕を引っ張られた。
「ねぇねぇリーフ、またおねえちゃんのところへあそびにいってもいいでしょ?」
「店があるから迷惑だろう」
「おねえちゃん、いつでもきていいって言ってたよ? こんどね、おかしのつくりかたとコーヒーのいれかたをおしえてもらうの。とってもおいしいんだよ! それにやさしいし、きれいだし、おりょうりうまいし。うん、ごーかくだね」
「何が合格なのだ?」
シアはクランと、意味ありげに笑い合うばかりだった。また結託して何か企んでいるようだが……純真で子供で、ある意味兄妹のような彼らの世界は、俺には理解できない。
「オレも応援してやるから、がんばれよ、相棒」
「クラン、おうちまでしょうぶー!」
「あっ! お前、フライングだろ! 待て!」
深夜に叫んで坂道を駆け登っていく二人を見ながら、ふと気付いたら、朝からずっと張り詰めていた肩の力がいつの間にかなくなっていた。ここにエリィもいればと思う自分の気持ちの正体もわからないまま、もうしばらくはこの不可思議な日常を楽しむことにした。